第十四話 選抜試験
後日、夕方頃に翔英はギルドに呼ばれた。
自称翔英の世話役であるエーカもくっついてきているが、ギルドの一階には受付の巨乳少女、換金所のローブ男の他に三人いた。
二人は男で、一人は女。
男二人のうち一人は弓矢を持つ狩人のような出立ちで、身長も高く、耳が普通なのでエルフと言う訳ではないが、いかにもスポーツマンと言うタイプ。
もう一人の男は赤に緑の文様が描かれた不気味なローブを身にまとう魔術師風の男で、今はフードをかぶっていないので人相も分かる。異常に色が白く、極端にやせ型。病気でもしているのではないかと心配になる。
スキンヘッドで顔にもローブと同様に不気味な文様が描かれているので、見るからに悪役だが、ギルドにいるという事はメンバーの一人なのだろう。
女は初日に見かけた、大柄な女だ。
「なんだ、噂の召喚人はこんなヤツなのか?」
その大女が翔英に気付いて、ニッと白い歯を見せて笑いながら言う。
見た目通り豪快な人なのだろうと思い、翔英は会釈する。
「気をつけろ、そいつはティガーを二度も一人で倒した化物だからな」
「もっと凄いヤツだと思ってたのよ」
狩人の男の言葉に対し、大女は笑いながら言うと翔英の肩を抱く。
身長は翔英より少し高い程度ではあるが、体重は明らかに翔英より上だろう。雰囲気ほど大きくはないとはいえ筋肉質な腕はゴツイが、近くで見ると意外と女らしい体型でもある。
獅子のタテガミみたいな髪が彼女を大きく見せているみたいだ。
向こうは初日に会っている事を覚えていないみたいだ。
「まるで女の子みたいだけど、エーカのお気に入りみたいだし、相当なモノなんだろうね」
「しょうとうなモノれす」
と、何故か後ろからくっついてきていたエーカが余計な太鼓判を押す。
「いや、とんでもないです。ところでこの集まりは?」
「選抜試験だよ。聞いてないのかい?」
大女が驚いて尋ねる。
おおよその察しはついていたが、そう言う事で呼ばれたと言う事は、この三人も選抜に選ばれるくらいの戦績を上げた人物のようだ。
今密着している大女はいかにも戦士である。狩人も魔術師も雰囲気のある人物達だ。
しかし、密着されているとはいえ、この大女に密着されているのと初日に巨乳少女に密着されるので、どうしてこんなに違うモノなんだろう。
直接口に出す事は出来ないが、大女に密着されていてもドキドキする事もないどころか、ちょっと暑苦しくも感じられる。
魔術師風の痩せ男は、口を挟んでくる事はしないが、コチラを気にかけているのは分かる。
「おー、もう集まってくれてますか。ご苦労、ご苦労」
階段から白ローブの男、ギルドマスターが片手を上げながら降りてくる。
「マスター、選抜ってこの四人からかい? 私ら四人とも十分な戦果は上げたと思えるんだけどねぇ」
大女は翔英の肩を抱いたまま、ギルドマスターに言う。
体格と同じく声も大きな女である。
「私としてはそれでも良いかなーと思ってるんですが、隊長と笹さんから凄く怒られました。貴方達はこの街で貴重な戦力です。不必要に夜の敵に挑んで命を落とされては、この街にとって大き過ぎる損害になると言う事です」
ギルドマスターは笑いながら言っているが、一理あるのかも知れない。
また、選抜員が増え過ぎた場合、夜に戦力がどんどん外に出ていってしまうのは、街の治安的にも防衛的にも良くない。
ギルドマスターは言わなかったが、そう言う意図もあるだろう。
「さて、それじゃさっそくですけれど、今回の選抜試験の内容を説明しましょう。と言っても、さほど内容を覚えるのが難しいとか複雑なモノではありません。裏山とは反対方向に行くと、大きな沼があるでしょう? そこにまた沼の一族が集まりつつあります。それを無力化して下さい」
「沼の一族、か。私は厳しいわ」
大女が見た目と違って、かなり早い段階で弱音を吐いている。
その言葉を聞いて、ギルドマスターは肩をすくめる。
「まあ、戦闘スタイルの問題はありますからね。沼の一族を無力化してもらえれば、それで構わないんですが、一つはっきりさせておきましょう」
ギルドマスターは眼鏡を右手中指で押し上げて言う。
「貴方達四人は、今この時点ではチームではありません。沼の一族を無力化出来れば、それの報告をお願いします。その上で、選抜隊に加えるかどうか吟味します。また、今回は降りると言うのも構いません。欠員が出たら、また選抜試験を行います。それでは、私からは以上です。エーカちゃんはここで私とお留守番ですからね」
「え? わたちも沼のいちじょくをやっちゅけるれしゅ」
「ダメ。エーカちゃんはお留守番。そうですよね?」
ギルドマスターは翔英に向かって言う。
沼の一族と言うのがどういうものかは知らないが、エーカを連れて戦闘行為は難しいだろう。
赤い眼の剣は、すでに翔英と言うお荷物を抱えている。
それに赤い眼の剣の性格を考えると、エーカを守りながら戦うと言う事はやらなさそうである。
なのでエーカには留守番してもらわないといけないのだが、エーカはぷくっと頬を膨らませて不満顔になっている。
これはこれで可愛い表情だ。
「エーカさん、わがまま言っちゃダメですよ?」
受付から巨乳少女が、笑顔で言っている。
「と言うよりエーカ、戦えるのか?」
これは狩人の男である。
「戦えましゅ。めちゃちゅよいれしゅ。沼のいちじょくなんか目じゃないれしゅ」
「そいつは頼もしい。そんな人が残って留守を守ってくれているなら、隊長と同じくらい心強い。そうだろう?」
狩人がそう言って、翔英に同意を求めてくる。
「そうですよ。それに、僕の部屋の掃除もしてもらわないといけませんからね」
「……わかったれしゅ。さささんと待ってましゅ」
そう言うとエーカは受付に入っていき、巨乳少女の隣に並ぶ。
「さささんが来るまれ、ウェーちゃんといましゅ」
「私と一緒に待ってましょう」
「嫌れしゅ」
ギルドマスターがひたすらラブコールを送っているが、エーカには取り付く島もないみたいだ。
エーカの留守番が決まったところで翔英が周りを見ると、魔術師風の男がいなくなっていた。
「あれ、一人いないみたいですけど」
「ああ、アイツならもう行っちまったよ。一人でやる気みたいだ。悪いけど、俺も一人でやらせてもらう」
翔英の質問に、狩人はそう答える。
彼は遠距離攻撃が主体みたいなので、翔英や大女のような近接戦力が一緒の方が何かと都合が良いと思うのだが、そうでもないみたいで彼もさっさと出て行ってしまった。




