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SIREN-裏社会の警告者-  作者: ルゥナ
第一案件 青少年暴力支配組織

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渾身のフルスイング

 組員達はすっかりパニックだ。元々連携等というものはなかったが、月乃が近づくにつれて、その焦り様も増大している。


「お、おい!!どうするんだ!!」

「お前行けよ!!」

「無理!!あんな化物相手してられるか!!」

「じゃどうすんだよ!!」


 何とか対抗策を模索しているようだが、もはや無意味だ。呆れたように、月乃は静かにため息をついた。


「散々機会は与えたというのに、今更そんな議論をするとは…」


 そう言いながら、あえて組員達に音が聞こえるように、折れた大剣で地面を軽く小突いた。


 鈍い音が、室内にビリビリと響く。その音で、組員達の声と動きが止まった。


「…もう、遅いんですよ。鳴らされたサイレンを聞かなかったから、災害に巻き込まれる。それだけです」


 月乃はそう言うと、大剣をまるでバットのように大きくスイングした。その軌道上にいた三人の組員達が巻き込まれ、骨の砕ける独特な音が、悲鳴と共に響き渡った。


 ーーー読みの通りだ。この剣は、斬れない。鈍器や鉄棒の類として扱うのがよさげだ。


 そんなことを考えながら、月乃は思い切り大剣を振り抜いた。巻き込まれた組員達は、ホームランボールのごとく盛大に吹き飛ばされ、壁や天井に強く叩きつけられてしまった。


「…やはり、強度が足りませんね」


 持っていた大剣を見ると、ものの見事に柄ごとへし折れていた。どうやら、月乃のフルスイングには耐えられなかったらしい。


 剣を放し、地面に落とす。刃のなくなった剣は、もはやただの棒だ。落ちた時の音も、軽いものだった。


「か、勝てるわけがねぇ…!!」

「ぼ、ボスに報告を…!!」


 組員達は何とかして、震える手足を動かしている。


 あまりに、圧倒的。

 あまりに、絶対的。

 あまりに、絶望的。


 ーーー目の前の女が、まさに『災害』。そう思わされるだけの実力差だった。


「では、そのボスをここに呼んでください。そうすれば、少しは加減します」

「じゃ、じゃあ…!!」

「…まぁ、もっとも…」


 月乃の一言で、組員達が希望を持ったような笑顔を向けてくる。


 だが、これは譲歩ではない。この組員達は、末端組員まで含めて、青少年への暴力に加担している。それを知るからこそ、月乃は見逃すつもりなど毛頭なかった。


 月乃はそのまま、側にいた一人の男の胸部に、自身の脇の下を潜らせるように拳を叩き込んだ。


「げぼっ…!?」


 男は数メートルほど吹き飛ばされ、仰向けに倒れてしまった。

 その一発は男の肋骨を完全に粉砕したらしく、男の呼吸が乱れて、非常に浅くなってしまった。


「…殺さない、なんて甘いことを言うつもりはありませんがね」


 月乃は冷静な目を、組員達へと向けていた。


 組員達は戦慄した。この女は、本気だ。冷静なままで、無感情に、人を素手で殺せてしまう。自分達とは、まるで裏社会の人間としての格が違う。


 背格好は、中学生と見間違えるほどに幼い。にも関わらず、大の男をこれほど容易く壊してしまえる。

 その事実が、その恐怖が、組員達の動きを完全に鈍らせていた。


「何の騒ぎだ!!」

「ぼ、ボス!!」


 そんな空気を切り裂くように、奥の階段から一人の男が現れる。ボスという呼ばれ方からして、この組織の首領だろうか。


 ーーーなるほど。いかにも半端なチンピラといった風貌で、ピアスを多数装着した男。恐らく本人は心底格好いいと思ってるかもしれないが、明らかにダサいファッションの男だ。


「む?テメェは何だ!?」

「ボス!SIREN…SIRENです!!」

「なに…?」


 その言葉を組員から聞いた首領は、顔色を変えて辺りを見回す。


 殴り倒された組員達が複数人。さらに、骨を砕かれた組員達までもが視界に入る。

 そして、それを行ったであろう、明らかに組員ではない、一人のメイド服を着た、小柄な女。


「…あのチビが!?」


 その状況を理解した首領が、困惑と怒りを込めた声をあげた。

 

 一方、様子を見ていた月乃は、静かに首領を見据え、歩き出していた。

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