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SIREN-裏社会の警告者-  作者: ルゥナ
第一案件 青少年暴力支配組織

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圧倒的制圧

 月乃は冷静に敵の動きを分析する。

 刃物を持って襲いかかる者がほとんどで、銃を持っている者は見当たらない。


 ゆえに、今回は接近戦がメインとなる。それは、瞬時に理解することができた。

 だが、その動きは真っ直ぐで、連携などあったものではなく、各々が好き勝手に動いているようにしか見えない。


「…やれやれ。人数の利点を、全く生かせていませんね」


 冷静に分析しながらも、月乃はその場から一瞬で姿を消した。

 その直後、月乃がいた場所に向けてフルスイングした組員達の拳が、空気を切る音がした。


「なっ!?消えた!?」

「どこに行った!!」


 組員達は慌てて周りを見回す。あの女を見失えば、誰がやられるか分からない。その恐怖は、確かにあった。


 だが、それもほんの一瞬。組員達のすぐ横を、何か大きいものがものすごい勢いで飛んでいった。


「いっ!?」


 何があったか分からない。だが、その物体が何なのかを認識する前に、その物体は轟音と共に壁をぶち抜いて、ようやく止まった。


 壁が壊れ、瓦礫同士がぶつかるガラガラという音がする。組員達は震えながら、その音のする方向を見た。


「が…ふ…」


 組員の中でも、大柄で頑強な男。その男の胸元には、一撃で肋骨諸共破壊されたと分かる、深い殴打痕が刻まれていた。


「ば…かな…!?」


 どう見ても、小さい物体ではない。大の男、しかも屈強な男だ。それを、野球ボールを投げるよりも早く、勢い良く吹き飛ばしたとでも言うのか。組員達の恐怖は、一気に増大してしまった。


「怖いですか?」


 月乃はそんな状況を見ながらも、あえて声を張り上げない。だが、今の組員達には、それでも十分効果的だった。


 組員達が、弱者を虐げ、意志を奪い続けていた者達が、圧倒的強者を前にして、恐怖で動けなくなる。今までも何度も見てきた、愚か者の光景だ。


「テメェ…どんなイカサマを…!?」

「イカサマではありませんよ。そんなに気になるなら、あなたも味わいますか?」


 月乃はそう言いながら、ゆっくりと一歩前へ踏み出す。月乃の足音が響く度に、組員達は後退りしていく。


 一部を除いては、だが。


「アマの風情で…!!」


 一人の組員が、自身の身体ほどもある大きな剣を持って、斬りかかってくる。だが、やはり相応に重いらしく、動きは鈍重だった。


「…武器の選定を、間違えていますよ」


 振り下ろされてくる剣。だが、月乃は避ける素振りを見せない。否、そんな必要すらない。


 自身の拳を握り締め、剣に向けて振り上げた。


 ーーー空間に、金属音が鳴り響き、その音と共に、剣の刀身が宙へと舞っていた。


「え…!?」

「私が相手ですから、もう少し軽めの武器を持ってくるべきでしたね」


 絶望する暇も、与えるつもりはない。月乃はそれだけ言うと、反対の手を使い、相手の顎をめがけて掌底を放った。


「ごぐっ…!?」


 顎を打ち上げられ、体が思い切り反れる。打ち上げた力が強すぎて、相手の体も宙へと舞っていく。


 相手の手から、折れた大剣が離れる。

 ーーーせっかくなら、有効活用させてもらおう。落ちてきた大剣のみを、月乃はキャッチした。


 刀身や殴り飛ばした男が地面に落ちた音もしたが、そんなものはどうでもよかった。


「…なるほど」


 折ってしまったとはいえ、やはり重い剣だ。だが、手入れはされておらず、刃こぼれしているもいいところだった。包丁だったら、即研がなければならないレベルである。


 剣ではあるが、どちらかというとハンマーのような鈍器として使った方が、まだ活用できそうだ。


「…さて、まだかかってくる勇敢な者はいないのですか?」


 待てど暮らせど、組員達は距離を取って後ずさるだけで、先程までの威勢がない。月乃はゆっくり距離を詰めながら、相手に質問した。


 しかし、組員達は逃げることこそしないが、月乃という外敵を倒すこともしようとしていない。もはや、木偶の坊と化してしまっていた。


「…仕方ありませんね。では、こちらから参りましょうか」


 だが、逃がすつもりも毛頭ない。月乃は歩くペースを加速させ、組員達との距離を急速に縮めていった。

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