ふざけた態度
吹き飛ばされた扉が、音をたてて部屋の床を転がる。部屋の中を見ると、十数人の組員達が走り回っていたようだ。
だが、扉を破壊された音で、一斉に停止し、こちらを見た。そして、少し遅れて状況を理解したようで、顔色が一気に変わった。
「うぇ!?い、伊東さん!?」
「な、何で本部の伊東さんがここに!?」
組員達はどよめいている。抜き打ち検査ゆえ、この組織の首領にも事前に知らせていなかったので、当然のことであろう。
伊東は動揺する組員達を特に気にすることなく、前に出る。
「…とある筋からタレコミがあった。貴様らの活動報告に関して、疑義がかかっておる。記録を確認させろ」
「え…!?」
伊東は腹の底に響く声で、組員達を脅す。その様子を見て、浅平は安心したように微笑んだ。
年老いてこそいるし、手紙では組員達を止めることができていない。だが、いざ対面させてみたら、きちんとした統治者である。
「…随分と、成長なされましたな。私の認識も、改めなければなりません」
昔の認識のままだったのは、撤回しなければなるまい。浅平は伊東に聞こえぬよう、静かに呟いた。
「か、活動報告って…!」
「ヤクをばら撒いたことを問題視するつもりはない。しかし、依存のさせ方に問題がある。本部に出した活動報告の記録原本を見せろ」
伊東が周りの組員を睨む。すでに還暦を越した伊東の圧に怯み、組員の一人がおずおずと、一台のパソコンを差し出してきた。
「こ、こここ、こちら、です…」
「ふむ」
パソコンを受け取ると、伊東は慣れた手つきで操作していく。遠目には見えないし、覗く気もないが、様々な資料やデータが表示されているのは分かる。
そして、それを見ていくにつれて、伊東の顔が目に見えて険しくなった。
「…ボスを呼べ」
「は?」
「桂を呼んでこいと言っている!!」
「は、はいぃぃっ!!」
伊東は激昂した。その気迫に押され、周囲にいた組員達は脱兎のごとく、部屋を飛び出していった。
桂。この二次団体のボスの名前だ。自分や月乃が調査した範囲では、かなりの野心家だと聞いている。噂程度の情報ではあったが、親組織の立場をも狙っている、というものすらあった。
ーーーさて。鬼が出るか蛇が出るか。親組織の首領である伊東と、二次団体の首領である桂。
二人の男が対峙する様子を想像し、浅平は静かに笑っていた。
しばらく待っていると、部屋の方に複数の人の気配を感じる。振り向くと、そこには組員達十数人を率いる、気怠そうな様子の男がいた。
「何スか、伊東さん…。俺も忙しいんスけど」
「桂、貴様!!これはどういうことだ!!」
「はい?」
伊東が憤慨しながら、パソコンの画面を桂に突きつける。普通ならば、親組織に知られてまずいことを知られてしまった、という状況であるため、桂が許しを乞う、という展開になるであろう。
しかし、桂は面倒くさそうにため息を付いた。
「…儲かってるんですから、よくないっスか?こんなとこまでわざわざ来てまで止めに来るとか、ご苦労なこって…」
そんなふざけたセリフを、あっけらかんと言い放ったのだった。




