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SIREN-裏社会の警告者-  作者: ルゥナ
第一案件 青少年暴力支配組織

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2/25

『災害』の到来

「送迎、ありがとうございます。事が済んだら、また連絡しますので」


 運転してきた黒塗りの車から、月乃は降りた。執事服を着ている運転手に礼を言い、頭を下げた。

 車の外から顔は見えないが、運転手も軽く会釈をすると、そのまま車を走らせ、どこかへと走り去っていった。


「…さて」


 改めて、組織本部に向き直る。青少年達を暴力で服従させ、彼らに犯罪を強要する組織。

 そんな行為で得られた金を使い、建てられた本部。外見こそそれなりに立派な屋敷だ。だが、月乃にはそれが、中身のない空虚なものに見えて仕方がなかった。


 月乃はゆっくりと歩みを進めた。


 少し歩くと、立派な門が見えてきた。その門も、実用性や守りやすさよりも、見栄と虚飾を意識しているらしく、派手な装飾が悪目立ちしている。屋敷そのものが比較的落ち着いた雰囲気なのに、噛み合っていない。


「待て。テメェ何者だ」


 すると、門の側面に立っていた男二人から止められる。

 ここの守衛か。月乃は男達を冷たい目で見つめながら、ポケットから封筒を取り出す。


 漆黒の封筒。しかし、その紙面には、赤い警告灯の中に開眼した一つ目を組み合わせた、SIRENのエンブレムが刻まれている。

 彼らが二度に渡って受け取ったはずの手紙だった。


「この手紙、見覚えがありますよね?」


 だからこそ、言い逃れなど許すつもりはない。たとえ組織の末端であったとしても、無関係だ。


 だが、守衛はその手紙を見ると、盛大に吹き出し、腹を抱えて笑い始めた。


「は!?オイオイ、あれ子供のおままごとじゃなかったのか!?」

「警告とか言って、俺らがガキ使ってることに文句つけてきたやつだろ!あんな楽して金稼げる手段を、やめるわけがないってのによ!あー、バッカみてぇ!!」


 守衛の男達は、明確に手紙を認識した上で笑っている。月乃はため息をつきながら、手紙をポケットに戻した。


 だが、最後の確認をしなければならない。月乃はゆっくりと口を開いた。


「…それは、あなた方だけの考えですか?」


 笑い続けている守衛達へ、静かに問いかけた。だが、守衛はなおも笑いながら、しかも月乃を煽るように口を尖らせてきた。


「いいですかぁ?俺らはガキの正義ごっこに付き合ってる暇はないんですぅ。分かりますかぁ?」

「怒られたくなきゃ、とっとと帰ってミルクでも飲んでな、チビガキ」


 心底、こちらをバカにしてることだけは伝わった。そして、少なくとも彼らは本心から思っていることも分かった。


 彼らの考え方次第では、事情を話し、普通に入ろうかとも思ったが、気が変わった。


「…知っていますか?災害の時に鳴らされる警鐘は、『危険だ』と通達するだけで、こちらに行動を強制するものではないんですよ」

「は?何だよいきなり」


 突拍子もないことを言い出したからか、守衛は戸惑っている。しかし、月乃の言葉は止まらない。


「私達が鳴らした警鐘を聞くかどうかは、あなた方の自由意志であるということです」

「ぷはっ!じゃあ問題ねぇな!やっぱりおままごとだったんだな!!ガキらしくママのミルクでも飲んでな!!」


 守衛の男の片割れが、月乃の頭に手を置こうとしてきた。

 ーーーだが、その手が月乃の頭に触れることはなかった。


「…え…?」

「警鐘を聞かなかったら、命に関わる災害に巻き込まれる。たったそれだけのことが分からないようですね」


 月乃の打ち上げた拳が、守衛の腕を打ち抜いている。守衛の腕の骨が折れ、あらぬ方向へと曲がっていた。


 ーーーあまりに、刹那的。何が起きたかすらも、理解できないほどに一瞬だった。守衛の男は、その瞬間だけは呆然としていた。


「ぎっ…がぁぁぁぁっ!?」


 だが、痛みが遅れてやってきたようだ。完全に腕が折れてしまったのだから、痛いに決まっている。

 男は折れた腕を押さえながら、その場でしゃがんで悶えている。だが、それで許してやるつもりもない。


「うるさいです」

「ごっ…!?」


 月乃は屈んだ守衛の鼻を、膝蹴りで蹴り砕く。男の体が、打ち上げられたように仰け反った。


 鼻血が撒き散らされ、守衛の片割れがその場で仰向けに倒れてしまう。顔を見ると、鼻が折れただけでは済まず、明らかに顔面の中心部が陥没している。


「な、なっ…!?」


 もう一人の守衛は、怯えてしまっていた。


 相手は普通の成人女性よりも明らかに小柄な女、しかもメイド服姿の女だ。にも関わらず、自身の仲間の腕を折り、鼻を折るに留まらず顔面を陥没させた。


 しかし、月乃は行動をやめる気はないらしい。ゆっくりと、もう一人の守衛へと近付いてくる。


 ーーー次は、自分の番だ。

 守衛は直感的にそう感じ取り、逃げようとする。しかし、足がすくんで動かなかった。


「あなたの体で、扉をこじ開けさせてもらいます」

「え…?」


 月乃は至近距離にまで近づいた。静かに、しかし艷やかに守衛の耳元で囁く。そしてーーー


 凄まじい衝撃とともに、守衛は屋敷の内部にまで殴り飛ばされてしまった。

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