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SIREN-裏社会の警告者-  作者: ルゥナ
第二案件 人身売買組織

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朴本帰投

「…お疲れ様でした、朴本さん」

「おう」


 SIRENの本部に戻ってきた朴本は、執務室でSIREN首領の波多野に結果を報告していた。ただ、長い付き合いである波多野が相手であるがゆえ、朴本の態度に、波多野への気遣いなどというものは感じられなかった。


 そんな朴本を、波多野の隣に立っていた月乃は少し複雑そうな表情で眺めていた。


「ったく、胸糞悪ぃ光景だったぜ」

「随分と、ご機嫌斜めですね」


 朴本は帰り道で寄ったコンビニで買ってきたおにぎりを、ソファに座ったままで食べていた。波多野は朴本を見ながら、特にその態度を咎めるでもなく、ただ苦笑していた。


「私と同い年くらいの女性でも売られてたんですか?」

「何でそうなるんだよ。思い上がるなよクソガキ」

「だって、朴本さんがそこまで不機嫌になる時って、いつもそうなんですもん」


 波多野にそう言われ、朴本は顔をしかめた。


 言われてみると、確かにそうだ。制圧時に朴本が不機嫌になったり、合理性を無視して暴れてくる時は、大体波多野と年の近い女性被害者と直接会った時だった。


「…言われてみると、確かに」

「テメェまで調子に乗るなよ月乃。そんな理由はねぇよ」


 月乃が顎に手を当てて振り返ってると、朴本が不機嫌そうに言い放った。だが、波多野は楽しげに笑っていた。


「月乃はともかくとして、私はあなた以上に、あなたのことを分かってるという自負がありますよ?」

「やめろ気持ち悪い。テメェもいい年だろうが。いい加減俺にガキの頃みてぇな態度を取るんじゃねぇよ」

「ふふっ、はいはい」


 SIRENの首領である波多野相手に、ここまで無遠慮に接することができるのは、朴本だけだ。下手をすると、どちらが上の立場に経ってる側なのかも分からなくなるほどだ。

 それも、子供の頃からの付き合いがあるが故なのだろう。月乃は二人の下らないじゃれ合いのようなやりとりを見て、そんなことを考えていた。


「まぁ…今日はゆっくりお休みくださいね、朴本さん」

「言われなくともそうするつもりだ。テメェもあまり根を詰めすぎるんじゃねぇぞクソガキ」


 朴本はおにぎりのゴミを握り潰すと、それを掴んだまま部屋を出ていった。その表情は、ずっと不機嫌なままだった。


 ーーーだが、その声色からは、波多野への気遣いが見える。月乃は立ち去っていく朴本の背中を見て、そう感じた。


「…やれやれ。相変わらず素直ではないわね、朴本さんは」


 書類を処理しながら、波多野はため息をつく。朴本のあの態度には、慣れたもののようで、その口からは特に不満も文句も出てこなかった。


「えぇ。確かに、素直ではありませんね」

「でしょう?」

「でも、やっぱりあなたには甘いですよ」


 月乃が改めて感じたことを、ストレートに突きつけた。だが、波多野はやはり心当たりがないらしく、首を傾げていた。


「私には昔からああなんだけど…やっぱり、月乃を相手にしてる時とは、違ってるの?」

「私にはもっと荒っぽい接し方してきますよ」

「…朴本さんが荒っぽいのはデフォルトじゃないの?」

「いやそうではなく…」

「何なの…?」

「…まぁいいです」


 ーーー無理だ。伝えようかとも思ったが、波多野の顔を見てあっさりと諦めた。


 年の差だけ見ると、兄妹かもしれない。だが、この二人の間にあるのは、もっと強くて深い「何か」だ。今は、それを探るべきではない。


「さ、本日の事務処理を済ませましょう。私もお手伝いしますよ」

「あぁ、ありがとう。助かるわ」


 月乃はさっさと、仕事に戻ることにした。


 ーーー今宵も、SIRENの警鐘が鳴らされる準備が、整っていくのだった。

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