囚われた商品の救済
朴本は捕らわれていた被害者達を全員牢獄から連れ出し、ステージに戻ってきた。その陰には、朴本が暴れるまでステージ上でまさにオークションにかけられていた女性もいた。
「…何だ、あんたまだいたのか」
「あの…鍵の束が、落ちてました」
女性がオドオドしながら、鍵の束を差し出した。それに対し、朴本は無言で見下ろした。
どこで見つけたのだろうか。恐らく、司会者を殴り倒した時に、勢いで吹き飛んだとか、その辺りだろうが。
そんなことを考えながら、朴本は鍵の束を見つめていた。
静寂。女性が、気まずそうな顔をする。
「よく見つけてくれたな。助かる」
「…はい」
朴本は表情を崩さないまま、差し出された鍵の束を受け取る。これが手枷や首輪の鍵だと言うなら、手間が非常に省ける。
「…首輪、私のはこの鍵で、解除できたので」
「そうか。なら、これで解除できるかもしれねぇな」
そう言いながら、朴本は一人の青年の首につけられた首輪の鍵穴に、鍵を差し込んだ。
カチャリ。
その静かな音が、朴本の耳には、やけに大きく聞こえた。その音ともに、装着されていた首輪が、地面へと落ちた。
「…とれた…首輪が、とれた…」
「じっとしてろ。次は手枷だ」
朴本は複数本ある鍵を、次々に鍵穴へと差し込む。すると、その中にある一本で手枷を外すことができた。
ーーーよかった。朴本は安堵のため息を吐いた。いざとなったら、解錠を力尽くで行おうかと思っていたが、その必要はなさそうだ。
「解錠を任せても問題ねぇか?」
「あの…あなたは何を?」
「…サツに連絡するんだよ」
「警察?」
青年達は、不思議そうに見つめてくる。まさか、自分が全部引き受けるとでも思っていたのだろうか。
朴本は少し呆れたような表情を浮かべた。
「俺がやんのは、あくまでもテメェらの自由意志を確保することだけだ。サツに保護されたくねぇ奴は、名乗り出ろ。未成年者は保護してもらうが」
朴本が懐から携帯電話を取り出しながら、確認を取る。だが、その場で名乗り出る者は、一人としていなかった。
ーーーまぁ、予想通りだった。朴本は小さく息を吐きながら、警察へと電話をした。
電話をしているその間も、様子は伺っていた。順調に、皆の首輪と手枷が外れていく。これで、本人達の自由が確保された。
ーーーSIRENとしての役目は、ここで終わりだ。
「…さて、と…」
長居する理由もない。警察への匿名通報を終えた朴本は、捕らわれていた被害者達に悟られぬよう、その場を静かに離れる。
これ以上は、SIRENとして関わるつもりもない。この先を生きるのは、他の誰でもない、彼ら自身だ。
何より、警察と鉢合って事情を説明するのも、SIRENの組員として自分の存在を嗅ぎ付けられるのも面倒だった。
「…あとはテメェら次第だ。せいぜい足掻くんだな」
朴本はそれだけ呟くと、オークション会場を後にした。




