被害者の脱出
朴本はステージの裏側へと向かう。恐らく、今日のオークションに出品される予定であった人間達は、ステージ裏に控えさせられてるはずだ。
この騒ぎに気づいていないはずもないだろうが、仮にあの女と同じ手枷をつけられてたとするならば、逃げることなど到底できないはずだ。
「…裏口は、ここか」
ステージの奥。ステージ裏へ向かう扉があった。
脱走をさせないためなのだろう、非常に分厚い、金属製の扉だ。取っ手を見ると、南京錠がかかっている。
「面倒くせぇ…」
いかに朴本でも、ここまでの扉を蹴破るのは容易ではない。だが、南京錠によるロックを壊すだけなら、容易いことだった。
朴本は手刀で南京錠を破壊し、扉を開けた。音を立てて、南京錠が地面に落ちる。
ーーーその中には、まるで凶悪犯罪者のように牢屋に入れられ、手枷や首輪をつけられ、縛り付けられている男女がいた。しかも、大人だけならまだしも、明らかに未成年である少年少女達までいた。
まさにここが商品棚、といったところだろうか。
そんなことを考えながら、朴本はサングラスを少し下へずらし、その様子を一通り眺めた。
「…やっぱりな」
この手の組織は、腐るほど見てきた。そのなかで、誘拐してきた人間達を丁重に扱う組織は皆無だった。どうやら、この組織も例外ではないらしい。
「え…?何だ、あんた…!?」
「外の騒ぎは、あなたなの…!?」
「おじさん、助けてください!!」
牢屋の中に入れられている老若男女が、いきなり入ってきた朴本に、食い付かんばかりに声をかけてくる。
それはそうだろう。誘拐されてきたと思ったら、無関係な男がいきなり部屋に入ってきたのだから。
「…ここから出たいやつは、鉄格子から離れろ。その行動が、俺への意思表示とみなす」
朴本が冷静に、しかし部屋中に響くような大声でそう宣言する。あまりの音に、近くにある部屋の柱がビリビリと震えていた。
その声量に、子供が一瞬怯んだような気もする。だが、狭くないこの空間に、拡声器もなしで届かせるには、声を張るしかなかったのだ。そこは、勘弁してもらうとしよう。
「…さて…」
先程まで鉄格子にしがみついていた人間達が、続々と離れていく。それを確認した朴本は、一つの鉄格子へと近付く。
刑務所で使われるものと言われても信じてしまうほど、頑強な鉄格子だ。だがそのようなものは、自分の前では全くの無意味だ。
朴本はゆっくりと、鉄格子を両の手で一本ずつ、しっかりと掴んだ。そして、その腕に力を込める。
「フンッ…!!」
「え…!?」
力をかけていくと、鉄格子が音をたてて次第に曲がっていく。その様子を、中にいる男が驚愕の表情で見てきた。
「うおおおおおっ!!」
朴本が雄叫びをあげるとともに、鉄格子が曲がり切り、人一人が通れる程度のスペースができた。
ーーー十分だ。多少の出にくさは、我慢してもらうしかない。朴本はそう判断し、次の牢屋に向かうことにした。
「…何者なんだ、あの人は…?」
「分からない…」
中で一部始終を見ていた男達は、戸惑いながらも鉄格子の中から出てくるのだった。




