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羽の折れた鳥は羽ばたく日を待つ

 ああ…これは…ジェットブースターが…

 ジェットブースターから光の束みたいのが伸びてきて、蝶が蛹になるみたいに私を包んでいるんだ。

 ただ空を飛ぶだけの機械じゃなかったのか…

 こんな訳のわからない代物、まだ他にも機能が隠されてそうだな。

 間違いなくこの光は私を癒やしている。

 体がすごく楽だ…

 いや、それだけじゃない、私の体の機能が高まっていく。

 今までより格段により高く、鋭く、空を羽ばたける気がする。


 私を包んでいる光の向こうに見慣れた人影が上から私を覗き込んでいた。

 隊長だ…心配そうにこっちを見てやがる…

 そりゃ、こんな気味の悪いことになってたらそうなるよな。


「隊長…」


 私が自然に起き上がろうとすると光は立ち消えた。

 

 初めてジェットブースターを見た時、自然とそれを背負うことで飛べると感じた。

 それと似てる感じだ。

 私が起きようとしたら光が消える。

 なんだかジャットブースターと私の距離が近くなった気がする。

 私の意志とジェットブースターの意志が繋がってきている。


「フェザー…お前がさっき寝ている間もそうだった。金色の良く分からねえのに包まれていた。一体これは何なんだ…」


 隊長がまっすぐ私を見ていた。

 隊長…私にもわけがわからないんだよ…

 そんな顔されてもさ、答えようがないだろ?


「隊長、こっちが聞きたいくらいだ。体調が良いんだ。気持ち悪いくらい健康になったよ」


「まさかこんな世界に成り果てても驚くことが起きるとはな…まあ良い、それだけ健康になったんだ。少しは不健康なことをした方が良い。酒でも飲もう」


 それからいつも通り隊長と酒を飲んだりした。

 なんでか昔の話とかさ、最近あった事件とか、色々話したよ。

 こんなにそばにいたのにまだ話していないことがたくさんあったんだな。

 私も隊長も分かっていたんだ。

 終わりがやってくるって。

 直感で分かっていたんだ。

 そんなに馬鹿騒ぎする感じじゃないんだけどさ、まあまあ楽しい感じだった。

 楽しい時間も一段落した時だ。

 少し真面目な話をすることにした。


「隊長、私は人間は死ななくなったら人間じゃなくなると思う。死ぬから人間なんだ。生まれて死ぬのが繰り返されるから人間なんだ。私はどうするか決めている」


 私がそう言うと隊長は表情を変えず頷いた。


「フェザー、人間は好きに生きた方が良い。お前がそう思うなら好きにしろ」


「ああ、そうするよ」


「でもなフェザー…」


 隊長は立ち上がると私の体を強く抱きしめた。

 

 なんだよ隊長…こんな時に…

 もうちょっと早くそうなってたらな…

 考えが変わっちまいそうだよ…

 永遠にこのままでいたいなんて考えてしまうだろ…

 隊長は温かいな…


「フェザー、お前のことは何があろうと見守っていく。これからもずっとだ。それが俺がお前にできることだ…」


 何言ってるんだよ、隊長…ありがとう…

 でもそれは私にはもったいない。

 そしてもう全てが終わるんだ。

 そういう時が間もなくやってくるんだ…

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