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Feather,in the sky2

 特にこれといった用事もなく、昼前に大佐と一緒にパトロールへ出かけた。

 こうして大佐と私が街を歩き回るのも全く無意味なわけじゃない。

 まあ、周りを威嚇するってわけじゃないけど、こうして顔を見せて歩いているとおかしな真似をする奴は減るし、仕事の依頼も来たりする。


 大佐がいなかったら、昼間からこうして出歩くことなんてなかっただろう。

 前は何となく昼過ぎとか夕方から動き始め、行くところもなくさまよっていた。

 何でもいいからやることがあって、誰かと一緒にいるというのは悪くはない。 


 しばらくして、人気のないビルの谷間に差し掛かった時だった。

 私は嫌な気配を感じ取っていた。

 のんびりもしていられない雰囲気になってきたみたいだな。


「大佐、何人か周りにいるぞ」


 またかよ、やってらんないぜ。

 大佐と楽しく散歩してたのにさ。


 私はジェットブースターをステルスモードで起動させながら、大佐にそう言った。

 大佐は私を見下ろすとサブマシンガンの銃口で私を軽く叩いた。

 私達は一気に走りだすと近くのビルの中に逃げ込んだ。


 その途端、どこか上の方から何発か発砲する音が聞こえた。

 多分、3人だ。

 私はジェットブースターを通常モードに切り替え、一気に最上階まで飛び移動した。

 そして、窓を開けて上空に飛び上がった。

 私に向かって、近くのビルの窓から発砲する音が聞こえる。 

 でも、上空を飛びまわる私に当たるはずがなかった。


 その瞬間、私が囮となって誘き出した敵を、大佐が次々とサブマシンガンで撃ち抜いていった。

 凶悪な銃声音が街に鳴り響く。

 そして、街は静かになった。

 あっという間だ。さすが大佐。全部やったか?

今日はいつもより疲れるな。

 私は大佐のところに行こうと思い、ゆっくりと下まで降りてきた。


 ちょうど、この辺のビルの屋上よりも、低い位置まで降りてきた時だった。

 銃声が3発鳴り響き、私の体に嫌な衝撃が走る。

 音がした方を見ると血だらけの男が小銃を持って、ビルの窓にもたれかかっていた。


「フェザー!!!!!」

 大佐の声がしたと同時に、サブマシンガンの音が聞こえた。

 私を撃った血まみれの男は、さらに撃ち抜かれてビルの下へと落ちていった。   


 やられたか…

 右足が熱い…

 目の前の全てがゆっくりと動いていた。

 ジェットブースターの出力が急激に落ちる。

 私はそのままビルの外壁に激突し、そのまま地面に落下した。

 何故か鳥の羽根のように揺れながらふわふわと落ちていく。

 私の知らないジェットブースターの機能が働いているようだ。

 地面に激突で即死はないな。


 そういや、私、ジェットブースターをどうやってコントロールしてたんだっけ?

 何となく飛びたい方向に今まで自由に飛んでたけどさ…

 地面にゆっくりと仰向けで降り立った。

 何だか、体が動かねえ。

 結構血も出てるな…


「フェザー…フェザー…」 


 薄れゆく意識の中で私を呼ぶかわいらしい声が聞こえてきた。 

 空には光に包まれた小さな人影と、もっと大きな人間のようなものが立っていた。

 あ、チカちゃんか…後ろにいるのは誰だ?


「フェザー、行こうよ。何も怖くない。次の世界でも一緒に遊ぼう」


 昔と同じでチカちゃんはかわいらしく笑っていた。

 なんてことだ…私は死ぬのか? 

 そっちは何だか温かそうだな…


「フェザー!大丈夫か!!!」


 大佐が走ってきて撃たれた私の足を見ると、その上部を縛って止血した。


「大佐、目の前にチカちゃんが見えるんだよ…」


 私がそう言うと大佐は私を抱きかかえて走り始めた。


「おい!フェザー、くだらねえこと言ってないでじっとしてろ!」


 大佐はまっすぐ前を見たまま、周りのことなんかお構いなしに全力で走り続けた。 


 何怒ってるんだよ、大佐。見えちまってるものは仕方ねえだろうよ…


「これが冗談じゃねえんだな…チカちゃんに羽が生えていて、その後ろに神様みたいのが立ってる…」


 聞いて欲しいんだよ大佐に。

 私の見ているもの感じてるもの全てをさ…

 だから怒らないでくれよ…


「俺がお前を死なせねえ!待ってろ!」 


 大佐は私を鋭い目つきで見ながらそう叫んだ。


 なんだよ、大佐も優しいところがあるんだな。

 いや、ずっと私に優しかったか。

 ずっと、私のこと見ていてくれて、今もこうしてすぐにかけつけてくれた。


「大佐、ありがとう。このまま死んでも悔いはないぜ」


 私がそう言って笑いかけると、大佐は私を見て叫んだ。


「馬鹿なこと言うな!フェザー!あきらめたら全部終わりだろ!生き抜いて生き抜いて生き抜くんだ!」

 

 大佐は私を心配して強くそう言うんだけど、私は幸せに包まれていた。


 大佐に抱かれると温かくて気持ちいいんだな。

 もう充分だよ。これ以上はキリがねえ。

 私には贅沢すぎる。


 何でこう、もう終わりだっていう時に幸せを感じてしまうのか。


 チカちゃん、ちょっと待ていてくれ。

 めずらしく良い気分でさ。

 もう少し、こうして大佐に抱かれていたいんだ。

フェザーをお読み頂きまして誠にありがとうございます。

これで数年前に書いた分は全てアップしました。

東日本大震災の直後、相馬南相馬でボランティアをしていたのですが、その時の思いがフェザーに詰まっています。

memento mori,人間は必ず死にますが、植物や微生物のように長く生きる選択肢を捨て、全てを理解した上で死ぬことを選んだのには何か意味があるのだと私は考えています。

フェザーを通して人間がどうしてそんな残酷な選択をしたのか考えられたら良いなと思います。


この続きはゆっくりですが6月18日以降から書いていけたらと考えています。

短編としてなろうにアップしていたもののブックマークが0だったフェザーが、ブックマークが7つもついて僕は嬉しかったです。

良かったら続きも読んで下さい。

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