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Nuclear contamination the girl(フェザー)は汚染された世界で銃を撃つ 作者:ぱんだ祭り

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羽が折れた鳥は苦しみ続ける

 真っ暗だった。光がないとかそういうもんじゃない。絶望的に…ここから絶対に脱出できない、地獄のような無音の世界。何もないんだ…だけど妙なリアリティを感じるな。元々世界はこうだったのかもな。うまい具合に地球が世界を彩ってくれたけど、人間が全部台無しにしたんだ。

 私はどうなった?死んだのか?
 私はその絶望的な世界で自分が寝転んだ状態だと気がついた。 
 苦しい…頭がおかしくなりそうだぜ…

 人間が世界を壊したなんていうのはおこがましいか。
 人間が自らの意志で人間を消しただけで世界は回り続けている。
 人間が全部いなくなったって、地球は自然に浄化され新しい生命に彩られていく。

 息苦しいな…なあ、もう許してくれよ…
 もう十分反省したからさ…ここから出してくれよ…
 悪いことしかして来なかったかもしれないけどさ、本当に悪い奴らと一緒にして欲しくないんだよな…

 人間は途方に暮れたら歩き出すっていうのは本当らしい。
 私は立ち上がり歩き始めた。
 だがどこに行っても何もない。
 無限に何もない世界が広がる。
 何もないってこんなにも恐ろしいんだな。

 死んだ後のことなんて考えたこともなかったが、ひょっとするとこういう感じなのかも知れねえな。
 地獄も天国もないんだ。 
 悪いことしようと良いことをしようと、同じように何もない世界へ行く。

 東京は人の死を早める街になったと思ってたけどさあ、そうじゃなかったんだよ…
 東京は生きていたんだ。
 人々が苦しみうごめいているのは駄目なことじゃねえ。
 それが生きる力そのものだったんだ…
 渋谷も生きていた。渋谷ベースも生きていた。隊長も生きていた。

 そしてこの私も…
 フェザーと呼ばれた私も…
 死んでなんかいなかった…
 生きていたんだ…

 あれ…そういえば隊長はどこに行ったんだろうな…
 私だけがこの暗い無の世界にいるのか?
 それとも隊長もこの暗い無の世界のどこかにいるのか?

 しばらく歩いていると、遠くに小さな光が見えてきた。
 それは何だか優しくって、引き寄せられるように歩いて行ったら、1人の女の子が立っていた。
 その女の子から光は発せられていて、キレイな白いワンピースを着ていた。
 天使とか神様みたいに輝いてる。 

 へえ…どこでこんな良い服を手に入れたんだ…
 でもどっかでこの女の子を見たな…
 この大人びた、全てを悟ったような目つき。
 そうだよ、チカちゃんの手紙を持ってきた奴だ…
 やっぱりこいつ人間じゃなかったんだな。
 わかるよ…今ならわかる…
 この暗い無の世界は人間がいる場所じゃないんだ…

「フェザー、一緒に行きましょう。チカちゃんも待っています。次の世界へ行くことを恐れてはいけない」

 その女の子はとても子供とは思えない声で喋り始めた。
 真っ直ぐな目で私を見つめている。

 何言ってるんだよ…神様みたいな声でさ…
 ずいぶん自信ありげに言うけど、何だかそれっておかしくないか?
 お前について行くと良いことがありそうだけど、私の勘がお前にはついていかない方を選んでるんだよ。

「悪いな。まだ良いよ。行きたくなったら自分で歩いて行くよ」

 私はそう言うとその女の子に軽く手を上げて、またあてもなく歩き始めた。
 その女の子は私をじっと見ていたんだけど、特に何も言うことなく私を見送っていた。

 そうだ…誰にも頼らなくていい…
 自分の力で自分の好きな方に歩くんだ…
 今までだってそうしてきただろ?

 その時、ふと私は目覚めた。
 目の前にはリアルな現実が広がる。
 ここはあれか…渋谷の医者だ…わけわからない夢でも見てたのかな…
 怪我しようが病気になろうが、ここにしか医者がいないからとにかくここにみんな来る。
 その殆どが、ここに運び込まれてすぐ死ぬんだけどな。
 そういや、私はジェットブースターで戦っている時に空中で撃たれたんだよ。
 相変わらず運が強いのかなんなのか、なかなか死ねないもんだな。
 あれからどれくらい経ったんだ?

 私は仰向けでベッドで寝ていたんだけど、ジェットブースターを背負ったまま寝ていたようだった。
 ベッドに腰掛けようと体を起こそうとしたんだけど、懐かしい感覚が蘇っていた。
 私のなくなった左手が元通りになっていたのだ。
 わけが分からない病気のせいで切り落とされた左手。
 でも切り落とされる前の元通りの状態に蘇っていた。

「あれ…?」

 私は目の前で左手を動かしたけど、当たり前のように左手は動いていた。
 そして足を撃たれたのを思い出したが、足も全く撃たれた痕がなく、むしろ体は久しぶりに調子が良かった。

 おかしいな…立ち上がって体を動かしても健康そのものだよ…
 体が悪くなりすぎて麻痺しちまったのかなあ…
 吐き気1つしやしない…

 私が健康になった体でそんな風に考えていると、部屋のドアが開き隊長が入ってきた。
 隊長はいつも通りの眼差しだった。

「よお、隊長。なんだか健康になっちまったぜ」

 私がそう言うと隊長はあんまり興味なさそうに見下ろした。

「ああ、そうだな。フェザー、目が覚めたなら帰るぞ」

「なあ隊長」

「どうしたフェザー?」

「私がぶっ倒れている間、私に何があったんだ?」

 私がそう聞くと、隊長はチャラい笑みを浮かべて、手に持っていたM16-A4の銃口で私を軽く叩いた。

「大したことねえよ。健康そうで何よりだ。帰るぞ」

 隊長はそう言うと部屋を出て行ったので、私も隊長に続いて部屋を出た。

 まあ生きてるんだからよしとするか。
 細けえことは考えなくていい。
 生きてるんだ。
 それ以上もそれ以下もない。
 私は蘇った左手の見つめそう考えた。
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