Feather kill and fly high1
目の前に汚染された土がある。水も空気も全部駄目だ。
もう、東京が元に戻ることはないだろう。
そして、私のなくなった左腕も戻ることはない。
左手だけじゃない。私はそう長くは生きられない。
実際そうも言われてるし、そして感じるんだ。
東京よりも私の方が先に消える。
そこに待っている死に向かって全力で私は走り込む。
殺して、殺して、殺して、イラつく奴らや邪魔する奴らを殺しまくって、地獄とこの世の間を行き来して、運が尽きた時には地獄側に落ちるんだ。
どこかに避難して何になる?
数年死が先延ばしになるだけだ。
そして、甘ったるいくだらねえ毎日を送らなければならない。
せっかく放射能塗れの東京で自由になったのに、どうして服を着せられた子犬みたいによちよち飼われなきゃなんねえんだ。
色んな生き方があるが、死は全員に同じように与えられる。
全く死という奴はぶれちゃいねえ。
それに考えてみろよ。
アメーバーみたいなのは半永久的に死なねえ、でも人間は頑張っても100年程度だ。
多分それには理由がある。私にはうまく説明できないけど分かるよ。
次々に人は消え、次々と生まれてくる必要があるんだ。
空が暗闇から灰色に染まり、そして太陽がまた昇ってきた。
今日も静かな朝日だな。
間もなく見張りは大佐と交代する。
しかし、大佐が良く座っているソファーから眺める朝日は最高だ。
何とか1日生き延びたなと思うと同時に、今日あたり死ぬかもなって考える。
でも、今日は楽しいパーティーがこの後に控えている。
「元フランス外国人部隊1名と元不良女子中学生1名」対「元自衛隊30名」
死ぬことを受け入れられなかったら、このパーティーは楽しめないぜ。
約束の時間10時がやってきた。
昨日あの男が出て行ってから、奴らは渋谷ベースをずっと見張っていたんだろう。
ずっと、嫌な気配を感じていた。
日が高くなるに連れ、渋谷ベースは囲まれていった。
私達を地獄に落とすための、緻密な作戦に基づいた効率的な配置。
昨日の男は10時になっても店には入ってこなかった。
離れた場所から物陰に隠れ、拡声器で渋谷ベースに向かって叫んだ。
「約束の時間だ。医者を外に出してここまで歩かせろ。お前たちはもう包囲されている。医者を渡せば我々はお前たちに危害を加えない!」
男は横にいる部下に何か耳打ちすると、その部下は近くの部下に指示を伝えた。