Birds die without having to think about anything.2
その夜、インテリが逃げ出さないか、夜襲が来ないかを見張るために、私は渋谷ベースに泊りこんでいた。
昔は不夜城だった渋谷も、今となっては静かなものだ。
何の音もしない。
インテリが視界に入るように、いつもは大佐が座っているソファーに寝転がっていた。
ソファーのすぐ横にある大きな窓からは、キレイな星空が広がっているのが見える。
こればっかりは、昔も今もそんなに変んねえな。
「君たちは何故こんな所に住み続けているんだ?まだ遅くない、様々な国が受け入れを表明してくれているから、早く避難しないと」
寝ているだろうと思っていたインテリが急に小さい声でそう話しだした。
「ああっ?何で、避難しなきゃいけねえんだよ?」
また、インテリがつまんねえこと言いだしたな。
説教じみたことは明日生きていたらにしてくれよ。
「それはここに住んでいたら死亡率が高まるからだ。場合によっては即死だってありえる。日に日に東京の放射能は強くなっている。私はここにいるだけでもかなり怖い。君は生きたくないのか?」
インテリはどうもかなりの臆病のようで、切羽詰まったような声でそう言った。
おいおい、頭の良い奴は訳分かんねえこと言いだすのが好きだよな。
「おい、そもそも生きるってなんだ?インテリ、言ってみろ」
私はイライラしてきたので遊んでやることにした。
「それは、健康な体で家族と共に仲良く生活することだ。寿命までしっかり生きるように努力すべきだ」
インテリは私の問いに対して、すぐにそう切り返してきた。
何の疑いも持ってないんだろうな、生きることに。
本当にインテリはくだらないことをぺらぺらと思いつくな。
「馬鹿だな。それだから頭の良い奴は駄目なんだよ。何にもわかっちゃいない」
くだらねえ。
絵本のような話しをしてやがるぜ。
「では、何だというんだ?」
怒ったのかインテリは少し声を大きくして聞いてきた。
私はソファーから立ち上がり、インテリの顔の前でナイフをチラつかせた。
「いいか、良く聞いておけ。お前達、頭の良い奴は何もかも手に入れてきた。だけどよ、死ぬということからは絶対に逃げられねえんだ。いくら地位が高くても金があってもいずれ全員必ず死ぬ。お前達は死ぬということに対して絶望してるんだけど、それに気がつかない振りをしている。死に向き合わず逃げてるんだ。だけどよ、それは根本的に間違ってるんだよ。運が良けりゃ、たまたま生きてるってだけだろ?それが尽きたら死ぬだけだ。死ぬことに絶望すんな、馬鹿が。死ぬのも案外楽しいことかもしれないぜ」
インテリは私の言ったことに理解できな様な顔をしながらうなだれ、また黙り込んだ。
頭が良い奴は本当に面倒くせえな。
私の運が尽きて死ぬかどうか。
勝負の時間は近づいていた。




