The end of the world.
2035年。一時は中国からインドまで盛り上がりを見せたアジア経済。
しかし、そのバブルも永遠には続かなかった。
バブル崩壊後、魅せ掛けの幸せはどろどろと崩れ去り、人々の心は恐怖と怒りに支配される。
そして、日本も含めたアジア全体が戦場と化した。
混乱を極める中、日本に最大の試練が訪れた。
某国工作員が日本の原子力施設を、一斉に多数占拠し破壊したのだ。
何か所も同時に原子力施設から放射能が溢れ返ったが、それらを全てをすぐに安全な状態に戻す術などあるわけがない。
日本は放射能で汚染され、人間が住める場所ではなくなってしまった。
多くの人々が日本を脱出し、無法地帯となった日本は国として崩壊する。
しかし、それでも汚染された日本で生きる人々も存在した。
2036年5月。
目に見えない放射能のことさえ気にしなければ、空が突き抜けるような快晴だった。
汚染された人間の死を早める街「東京」。
その空を駆け抜ける1つの人影があった。
誰もいないビルの屋上から、また違うビルの屋上へ。
その人影は風を切り裂くように飛んでいた。
華奢な背中には、高機能型のソーラーパネルが埋め込まれたジェットブースター。
これで空中を自由自在に移動することができるのだ。
飛び立つ度に出力が上がり、ジェットブースターが唸る。
ジェットブースターを背負う華奢な人影は、まだ若い少女だった。
様々な修羅場をくぐってきたのだろうか。
その少女の目は、自信に満ちたものであった。
非常に落ち着いた様子で、鳥の羽根のように舞う。
そして、どういう理由かは分からないが、彼女の左腕は肩から切断されなくなっていた。