10.その闇、妖艶につき
10.その闇、妖艶につき
不気味な模様が施された彫刻、影により、闇から吊るされているかのような刺々しい装飾のシャンデリア、壁や床、ありとあらゆる場所に付着している黒い染み。そしてとりわけ異質な大広間。高い窓から差し込む青白い光に同調するように穢れの無い肌。絹のように艶やかな黄金色の長髪。見る者全てを魅了するかの如く艶美な身体を、微塵の羞恥も感じない様子でそれは其処に居た。
「随分と無粋なのですのね、リリン様」
その少女は開け放たれた入口の扉の奥、塗りつぶされたような闇の中へと語りかける。暫くしその闇から音が刻まれ始める。それは刻一刻と大広間へ近づく。
「まるで何事も無かったような態度ですね、イザベラ」
月光によって徐々に映し出されるシルエットが放つ。
「あら、怒っていらっしゃいますか?」
「着任早々、理性を抑えられぬ愚か者を私は配下に加えた記憶はありません」
イザベラの背後に立つのは、貴婦人如く飾った姿であった。しかしその女の纏うそれは、決して華やかなものではなく、血ように赤黒いドレスで、不気味な程に色みの無い肌と、深緑の双眸の奥には底知れない闇が覗いていた。
「私の邪魔をしたから」
イザベラは一旦口をつむぐと、髪を靡かせながら振り向き、再び呟く。
「それがあの卑しい人間の雄共を消した理由では不満ですか」
そう言うとイザベラは笑みを浮かべた。咎められている事など気にもとめない様子で。
「下等な存在とは言え、敵の懐でやすやすと正体を晒すような無謀な真似に、どうして苦言を漏らさずにいられますか、イザベラ」
静かに、だが確かに節々に力が込められた口調でリリンは言う。
「お前が塊に変えた人間達の処理、残留した魔力因子の隠蔽、おまけにお前の性癖によって連れ去られた人間の情報操作…お前の行いによってこれだけの面倒を他の潜入している同胞に負わせたのです。それがどれだけの労力と時間を無駄にしたのか、お前は分かっているのですか」
「むぅー…」
未だ追求の手を緩めないリリンに対し、不貞腐れて頬を膨らますイザベラは不平の声を漏らす。
「だって実際邪魔だったのに…アイツら勝手に私の周りで騒ぎ立ててさ…ちょっと静かにしてもらうと――」
一気に子供のようになって言い訳を繰り返すイザベラに対して、リリンは大きく溜息をついた。
「これ以上は時間の無駄ですね…イザベラ」
「…はい」
「お前の優秀さを認めてない訳ではありません。しかし今日のお前の行いには目に余ります。世話の焼ける部下にはほとほと困りますよ…次はありませんよ」
その言葉を聞いて、しおらしく下を向いていたイザベラはすっとリリンを見上げると、ぱっと明るくなると彼女に飛び付いた。
「ありがとうございます!リリン様!はぁぁぁぁ!大好きですっ!」
「ちょっと…イザベラ!?は、放しなさいっ…く、苦しいですよ…」
イザベラはリリンをぎゅっと抱きしめ、顔を膨らみへ埋める。そしてもぞもぞと顔を擦りつける。
「イザベラ…相変わらずお前の性癖は…」
自分の身体にへばりつくようにしている部下に、言葉をどうかけてよいものか、リリンは困惑していた。そんな悩みを他所にイザベラの欲求はエスカレートしていった。間隔の短い呼吸音が次第に大きくなっていく。
「はぁ…はぁ…リリン様の…匂い…うぅぅ…」
「…イザベラ、…何故そのような格好を…」
それを聞いて思い出したようにイザベラは埋めていた顔(上気し、その紺碧の目は完全に蕩け、唇からはだらしなく涎が漏れ出ていた。)を上げて、名残惜しげにリリンの身体を離した。
「はっ…はぁ…今夜はご馳走をたっぷりと味わう…いえ、舞踏会で踊り明かす…とにかく素晴らしい夜になりそうですよ…!リリン様もご一緒します?」
そう言うとイザベラは指を弾いた。すると何処からともなく、侍女と思わしき女性が現れた。
「彼女を此処へ」
侍女は無言で再び何処かへ消えると、制服をきた少女を連れて戻ってきた。
「連れ去って来た人間ですか」
少女を見てリリンが言った。
「名前は東雲あげはというようですよ。蝶のように可愛らしい彼女にはぴったりの名前ですわ…さぁ、こちらへいらっしゃい…」
あげはと呼ばれた少女は、引き寄せられるようにイザベラの元へと歩き始めた。まるで光に誘われる虫のように。自分の意思とは関係無く進行する状況に、彼女の目には恐怖だけが宿っていた。
「イザベラ、私は帰りますよ。…それとこういう事はほとほどになさい…」
「あら、もうお帰りですか?この娘、とっても愛らしい声で鳴くんですよ」
言うが早いか、イザベラはあげはの背後から覆い被さるように抱きついて、右肩から顔を覗かせる。
「いやっ!」
小さく悲鳴を上げる彼女を、リリンは呆れながら言った。
「蝶は鳴かないと思いますがね…」
「ふふ、どうでしょう?」
不敵な笑みを浮かべると、腰に回していた左腕を解き、あげはの左頬に手を添え、ゆっくりと撫でる。
「あっ…」
僅かに震えたあげはを見て満足そうに微笑むと、今度は右の手で身体の輪郭をなぞるように、陶器のような五指それぞれを異なる動きで這わせ始めた。
「…っ!やあっ…!」
「ほら、リリン様。切なげな吐息でしょう?」
「…」
目の前で繰り広げられる、リリンの理解を超える行為。いくら旧文明を滅ぼした魔族とはいえ、これ以上の羞恥をリリンは耐えられそうに無かった。
「…イザベラ、それでは…」
「あっ、待って下さいリリン様!」
「…まだ何か?」
振り返りさえしなくなったリリンの前に、突如丸められた羊皮紙が現れた。宙に浮くそれを指しながらイザベラは言った。
「今日の成果です。これでもやるべき事はちゃんとやってるんですから」
後ろからの声には答えず、リリンはそれを手に取って闇へと消えた。
「…いけずなリリン様も素敵だけれど、今は…」
「貴女を愛でるのが先よ」
より身体を密着させ、動かす手を少しずつ早めていく。それに比例するように、あげはの息遣いが荒くなっていく。
「貴女は私のモノよ、あげは…」
そう言うとイザベラは、彼女の首筋に唇を添える。徐々に深く、長く、刻みつけるように。
「あっ…っっ!ああっ…」
「忘れてしまいなさい…今までの事を…くだらない人間達に囲まれて過ごした、至極無駄な日々を…」
「はあああぁぁっっ!いっ…いやっ!」
うわ言のように拒絶の意思を口にするが、既にイザベラの思惑通りに身体を震わせ、嬌声を広間に響かせている。
「快楽だけを味わいなさい…教えてあげる…愉しいこと…気持ち良いこと…」
彼女の拒絶を上書き、塗りつぶすように繰り返す。
「くっ…ふっ…ああああっ…んんっ…!」
だらしなく声と唾液を漏らす口を、イザベラは己の艶やかな唇で塞ぐ。閉じている隙間に薄い舌を滑り込ませ、口内を蹂躙する。
「んっ…はっ…んんんっ…ずちゅ…ずりゅっ…ずずっ!」
「ん!ぷちゅ…ぴちゃっ…じゅるっ…ずぷっ…ぷはっ!」
互いの唇から伸びる銀糸は、長く引き、撓み、やがて落ちる。
「私は花。けれどただの花ではないわ」
「あっ…!」
ゆっくりと床へ押し倒すように体重をかける。あげはの背後の床には禍々しい光を放つ魔法陣が浮かび上がっていた。
完全にあげはを押さえ込んだイザベラは、再び彼女の胸元にキスを落とす。
「ひゃうっ…ああっ!」
湿り気を十二分に含んだ熱い舌を、撫で上げるように胸元から首筋、耳へ這わせる。
「私はね…あげは…可愛らしくて、愚かな虫を惑わし、食べる…恐ろしくも美しい、幻惑の花…」
「いっ、いやぁぁっ…だめっ!やぁぁっっ!」
「堕ちて楽になりなさい…私の蜜はもう効き始めている筈。もどかしいでしょう…?切ないでしょう…?さぁ…」
あげはの耳元で繰り返し囁くイザベラは、同時に胸や太もも、彼女のありとあらゆるところを愛でる。
「堕ちなさい…私だけのあげは…私の…所有物さん」
脳髄を溶かすかのような吐息混じりの囁き声を、追い打ちの如く彼女の耳元で言い放つ。
「っっっっっ!!はぁぁぁぁ!!」
あげはの身体が一際大きく震えた瞬間、彼女の下にあった魔法陣が妖しく輝くと、黒い煙のようなものが吹き出て彼女を覆った。
「まだまだ夜は続くわ…もっと味わってあげる…もっと踊らせてあげる…もっと…もっと…気持ちよく…してあげる」
イザベラはゆっくりと離れると、その様子を見て心底嬉しい事のように、蕩けた笑みを浮かべた。
タイトルからして察した方もいると思いますが、今回際どいです。いや、際どく出来ているのか自信なんてこれっぽっちもありませんが…汗
というか際どく無いですよ!だって女の子が年上のお姉様に抱きついてスリスリしたりハスハスしたり、女の子がJKをペロペロしたりチュッチュしたりしてるだけですから!何もやましいことなんてありません!至って健全なお話ですよ!
…とりあえず暫くしたらまた続き書きます。ではではノシ




