9.用意された日々
皆さん、あけましておめでとうございます!え?遅いって?いやいやまだ1月ですよ、新年の挨拶通用しますよ!…嘘ですごめんなさい1月とか言ってもう2月になるとかホント許してください!えー…更新遅れて申し訳ないです…m(_ _)m本当は三賀日に投稿するはずだったんですがねぇ…汗
私のこんな駄文を読んでくれている皆様には本当に感謝しております!またいつ更新出来るか分かりませんが、その時にはどうぞ宜しくお願いします(*´∀`)ノシ
9.用意された日々
百合組に戻った希達は、新たに入ってきたイザベラに沸く教室でそれぞれの日常を送っていた。
「咲さん、次の授業何だっけ?」
廊下の窓から外をぼんやりと眺めていた咲に声をかける。咲が振り向く。
「世界史よ。授業の初めに小テストがあるわ」
微笑みながら彼女は答える。だが希はそんな彼女の笑みに何処か複雑なものが見え隠れしているのに気づいた。最近、咲の様子が明らかに以前とは違うのに、希は困惑していた。通常の咲であれば休み時間は自分の席で静かに読書をしているか、希との会話に花を咲かせているかで、トイレや移動教室でもない限り、廊下に出ている事はなかった。ましてやあの耽美で聡明な咲が、只ぼんやりと外を眺めている光景程、不可思議なものは無い。本当は咲に声をかけて良かったものか、希は躊躇していた。それほど深刻な問題を抱えているのかと彼此憶測をしていたが、結局適当な話題探しをし、咲と話す口実を作っていた。
「ええっ!?しょ、小テスト!?」
ある意味彼女に話しかけて正解だったかもしれないと希は1人で納得していた。
「もしかして陽元さん、知らなかった?」
「うん…どうしよう…全然勉強してないよ…範囲が何処かも…」
その言葉を聞くや否や、咲は真剣な表情になった。
「陽元さん、大丈夫よ。私ノートまとめてあるから。字が汚いかもしれないけれど、陽元さんに悪い点数なんて取らせないわ」
その気迫に押されて、希は思考を中断した。否、せざるを得なかった。咲が希の右手を半ば強引に引いていたからだ。
「さ、咲さん…ちょ、ちょっと…い、痛い…」
「確か範囲は…旧文明の崩壊と魔族について…ページは―――」
その様子を教室の扉から美琴と姫子が見ていた。
「本当にあいつら仲いいな…」
「美琴は私にべったりじゃない?」
「只の腐れ縁さ」
「意地っ張りだねー、美琴は」
「ほっとけ」
「ふふっ」
始業を告げる鐘が刻々と近づく中、一方イザベラは彼女らの様子をじっと見つめていた。彼女の周りには野次馬やいつの間にか出来上がっていたファンクラブが群がっていたが、気にもとめない様子であった。
「真実を知るのはあの2人…何も知らないのはもう片方。でも全員…嘘をついている…か…」
ぽつりと呟く。
「もう少しね…」
静かに目を閉じ、深呼吸をした。肺いっぱいに空気を取り込む様に。
(…いい香り…本当に…けれどだめよ、お楽しみは最後まで取っておくのよ、イザベラ…)
周りのクラスメイト達はイザベラの不可解な行動を見ていたが、やがて鐘が鳴ると散り散りに自分の席へ戻っていった。
―――――
なんとか咲の助力の甲斐もあって小テストを乗り越えた希は、淡々と無機質な音を立てて、黒板に増えていく白や赤や黄色に変わるの字をノートに書いていた。世界史の担当は礼子で、別段つまらない訳では無いが、歴史という題材について希はあまり興味を持てなかった。自分達が今生きている時代よりもかなり古い時代まで遡ると、実感が湧かないからだ。現にこうして旧文明の滅亡、その起因である魔族の恐ろしさを説明されても他人事の様に感じている自分がいた。1つだけ共感出来る事があるならば、旧文明の人々も自分と同様に魔族なんていう存在は信じていなかっただろう。その時までは。
「今から数百年前、突然の魔族の出現は以前も言ったね?彼らは想像も出来ない強さと早さで世界を瞬く間に壊していったんだ。」
礼子が一旦書くのを止めて、魔族の説明を教科書通りに語る。
魔法が使えるとか、その源が魔力で更にそれの魔力因子…。裕福な訳ではない希だが、たまたま読んだ数少ない旧文明の小説にはこういった表現が幾つかあり、必ず最後にフィクションであると書かれていた。それが現実にいた。
「世界は荒廃し、人々は絶望に包まれていた。だが、奇跡は起きた」
奇跡という言葉に希は図らずも惹き付けられた。
「後に聖女と語られる救世主が現れた。彼女はたった1人で全ての魔族は倒し、それらを封印した」
教科書には聖女の魔族を封印する様子が描かれた壁画が載っていた。
「そして彼女は生き残った人々のいる所へ行き、知恵を授けた」
「そしてその知恵を授かった人々の子孫こそがこの王都を作ったの」
そこで終業の鐘が鳴った。やはりスケールが巨大過ぎて惚けていたが、この王都の由来が少し分かって希は少し満足していた。
咲がこちらにやって来るのが見えた。
「咲さん、さっきはありがとう。咲さんのお陰で分からなかったところ答えられたよ」
「私は只貴女にノートを見せただけだわ。お礼なんてしなくていいのよ」
彼女はそう言って微笑んだ。
―――――
希と咲は放課後を迎えていた。姫子と美琴は用事があるそうなので先に帰り、イザベラはまだ校内の事が分からないという事でファンクラブのメンバーに案内を頼んで見学しに行った。
「咲さんはこの後何か予定とかあるの?」
「特には無いわ。陽元さんは?」
「私も無いよ。で、そのー…もし、咲さんが良かったらだけど、一緒に買い物とかどうかな…?」
「いい考えね、是非お願いするわ」
「やった!」
心の中で小躍りしながら、校門を後にする。
見つめられているとは夢にも思わずに
―――――
黄昏に染まる二人を窓から眺めていた。本当に幸せそうな彼女達を眺めているのが愉悦に感じる、イザベラはそんな風に思いながらも、周囲に漂う微かな魔力因子と耳障りな声が彼女を現実に引き戻す。
「緋月さん、僕と帰りにお茶とかどうかな?」
「こんなギザな野郎より、オレの方がイザベラちゃんを楽しめられるぜ?」
「イ、イザベラちゃ、ちゃん…ぼ、僕…そ、そのぉ…」
付きまとって来た彼らが退屈で仕方が無い。ここの生徒だと思って走らせてた自分が愚かに思え、イザベラは息を吐く。
「私には大事な使命があるの。邪魔しないでくれるかしら…?」
「使命?それはこの僕と付き合うことかな?」
「ギザ野郎!てめぇは引っ込んでろって言ってんだろ!イザベラちゃんはオレにエスコートされてぇんだよ!」
「イ、イイイイザベラちゃちゃちゃん…!」
早くこのノイズを消し去りたかった。そもそも使命の邪魔立てをしてくる時点で十分だった。リリン様も許してくれる筈だ。
イザベラはそう確信した。そして言った。
「血よ(ヴィー)」
「なっ!?」「あがっ…!」「うあああああっ!?」
悲鳴を上げて倒れていく彼らを彼女は冷たい目で見下していた。
「私には穢れた血であるお前達など必要ないのよ」
「ぎゅぶ」
苦しみもがいていたかと思うと、まずは気取った態度の男子生徒がはじけ飛んだ。廊下が一瞬にして赤くなる。
「血!?!あ…おでば」
次に粗暴な言動を取っていた男子が、恐怖に顔を歪ませた後、真顔になったかと思えば崩れていた。
「何何何っ!何がっ!死に!死にだで…ごぶ…」
最後に太ったメガネをかけた生徒が、叫び声を上げて引きちぎられる。彼らのいた場所には血溜りと肉片が転がっていた。死に様ですら美しくない。惨状が彼女に不快感をもたらしたい訳ではなく、あくまで彼女の彼らに対するものがそうさせた。
「ひっ!?」
小さな悲鳴。引きつった声に振り向くと怯える女子生徒がいた。
「そう…貴女よ。私が求めるのは。私が欲するのは。美味しいものだけ。清らなものだけよ…」
「い…いや…っ!こない…で」
「怖がらなくても大丈夫よ…いらっしゃい、私が奏でてあげる…ふふっ…」




