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生贄の英雄 セト・ウォルカの物語  作者: 下山四郎
Disc01:少年期─へネス教国─
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第85話 教会の都合



宿に入ったセトとハーレイ、ソルダの三人。

マグナは宿の入り口で、教会に戻ると言って行ってしまった。


用意された部屋は広く、一目にして高級というのがわかる造りだ。


「これ、ヤバくないか?」


セトの中の山崎の知識が警鐘を鳴らす。


「何がですか?」


ハーレイはフカフカのベッドに飛び込み、セトの言葉によくわからない様子で言った。

ソルダもベッドに腰掛けながら考えている。


「いや、なんていうか、過剰だ」


それがセトの警戒する理由だった。


「そうですね。優遇、と言えばいいのか?何か、ここまでする理由がわからないですね」


ソルダも疑問に思っているようだ。

そんな二人に対してハーレイは呑気に言う。


「優遇してくれるなら、素直に受け取ればいいんです。こんな待遇普通はあり得ないんですからぁ。今はそれでいいんです」


そのハーレイの様子にセトもソルダも納得できない。

イビキをかいて寝るハーレイを横目に、セトとソルダの話し合いは続いた。


「俺はそこまで優遇されるほどのことをしたか?」


セトの問いにソルダが首を横にする。


「いえ、確かに従軍はしましたが、それはマクレラン王国の指示によるもの。教会絡みでないはず」


戦争……

その言葉に、セトの表情が一瞬強張る。


「そうだな。教会という意味では、あとは、禁呪を習得したが、それが原因か?」

「禁呪ですか?それであれば、監視対象でしょう?優遇する意味がありません」


答えが出ないまま、夜は更けていく。


一方、教会に戻ったマグナは、再びファーゴ大司教のもとを訪ねていた。


「マグナ・カーン、罷り越しました」


跪いて挨拶をするマグナ。


「楽にせよ。今後の話がある」


それに応じるように、ファーゴ大司教が話し出した。


「彼ら、特にセトについてだが、今後はお前の庇護の外に出る」

「と、いいますと?」

「明日は洗礼の後、枢機卿がお出でになる」

「まさか……」

「当然のことだ。祭壇の巫女に関することだ。私よりも枢機卿の実務だ」

「そうなると………なるほど」


マグナは一瞬だけ考え、納得した表情になる。


「理解できたか?」

「はい」

「彼らを抱き込む。そして、使う」

「そういうことですね」


マグナは少し寂しそうな表情になる。


「武官と言えど、表情に気をつけろと言っているだろう?お前とマールの関係は知っている。ともに同じ故郷、同じ司祭に学んだこともある姉弟弟子の関係だったな」

「はい」

「その姉弟子から託された子だ。気になるのもわかる。だが、この決定は覆らん」

「存じております」

「それならばいい。庇護下を離れると言っても関わるなというものではない。頼ってきたら、助けてやれ」

「ありがとうございます」


マールから託された子、セト。

それはマグナにとって、甥などと同じ。


(どうか、多難のうちの一つでも私が……)


それがマグナの願いだ。

セトは教会に所属する。

マグナは教会所属の武官の身だが、大司教からの指示を受ける立場のため、教会としての位は司教だ。

その立場上教義から婚姻などは認められない。


(アメリア様とともに、坊っちゃんは私の身内だ)


それがマグナの本心だ。


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