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生贄の英雄 セト・ウォルカの物語  作者: 下山四郎
Disc01:少年期─へネス教国─
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第82話 再会



セトたちが捕らえられて10日。

マグナは現れた。


この10日の間に、セトたちの栄養状態はかなり改善された。

目の下の隈は消え、現れたのはソルダとハーレイの気の抜けるようなイビキだった。


そんな彼らの前に現れたマグナは、セトの姿に驚いた。


「坊っちゃん、大きくなりましたね」


マグナが知っているのは七歳の頃のセトだ。

四年も経てば背の高さもかなり変わる。


「顔つきも立派になりましたが、なぜこんなところに?」


マグナは国境の詰め所から送られてきた報告を読み、駆けつけた。

しかしあまりにも簡易な報告だったため、詳細はわかっていない。


「街道の山を通るより、森を抜けたほうが早そうだったので」


セトは少しだけ自信なさ気に答えた。


「山とは言え、街道ですから休憩のための小屋もありますし、人も詰めてます。三日あれば越えられたでしょうに……」


マグナのその言葉にセトは唖然とした。

そしてハーレイを見ると、ハーレイは目を反らした。

その様子にマグナの表情が強張る。


「ハーレイ!貴様!坊っちゃんを唆したのか!?」

「いや!違う!ソルダも!あいつも!」


ハーレイがソルダを指さす。


「言い訳するな!貴様!坊っちゃんに何かあったらどうするつもりだ!」


マグナによるハーレイへの説教が始まった。

セトには、ハーレイの姿がみるみる小さくなるように見えた。


「それで、その男がソルダ・ストークス?脱走兵だったか?」


説教を終えたマグナがソルダに顔を向ける。


「いいや。脱走兵じゃない。辞めたんだ。俺は坊っちゃんの従者だ」


ソルダは胸を張って答えた。


「なるほど」


マグナは一言だけ呟いて、顎に手を当てて考える。

そして、セトに向かって言う。


「坊っちゃんは、この男を従者として連れて行くのですか?」


その問いへの答えは決まっていた。


「連れて行く」


セトは迷わず言い切った。


「わかりました。では、一旦ソルダ・ストークスの身柄は私が預かる。それでよろしいですね?」


マグナの言葉にセトは頷いた。

そのやり取りをしているところに、兵士が近づいてくる。

マグナと小声でやり取りをしているが、その声は断片的にしか聞こえない。


聞き取れたのは、関係悪化、懸念、脱走、これらの語句のみ。

おそらくは四柱派三カ国の国際問題の件だろうと思われた。


「気にするな。それより牢を開けろ」


マグナの指示により、三人の牢が開けられ、彼らは釈放された。


「今時点をもって、坊っちゃんとソルダの身元引受人は私になります。ハーレイ、お前は教会所属なんだ。しっかりしろ」


マグナは三人を見渡して言う。


「それでは、聖都へ向かいます」


詰め所を出たマグナは、セトたちに言う。

聖都?

セトは隣国の首都としか認識していない。

なぜいきなりそこに向かうのか、目的がわからない。


「聖都には、何かあるんですか?」


セトの質問にマグナが表情を崩して答えた。


「聖都にて坊っちゃんの身分をはっきりさせます。あなたは祭壇の巫女だったマール様のご親類。そして、当代の巫女アメリア様の弟。それであれば、聖都での洗礼こそ相応しい」


洗礼とは?

よくわからないまま、セトたちは聖都に向かって出発した。


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