↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生贄の英雄 セト・ウォルカの物語  作者: 下山四郎
Disc01:少年期─他国出征─
63/138

第63話 振るわぬ戦況



三カ国連合とリニオ帝国の戦争。

それは勃発して既に一年を経過した。

季節に関係なく、リニオ帝国は侵攻を緩めることはなかった。


「想定とはまるで違う」


それがオブリオン王国の軍司令部を焦らせた。


そもそもリニオ帝国は、北の大地を領土としているが、その気候故に農耕地に使える面積はかなり限られる。

そのため食糧を求めて東進、あるいは南進して領土を広げた経緯がある。


「冬になれば兵站の不足から落ち着くと思っていたが……」


だが、リニオの猛攻は冬でも止まらなかった。

確かにリニオ帝国は大国である。

地図上で見ても、その面積は現在参戦している三カ国より広い。


「だが、兵も食糧も尽きない。なぜだ?」


リニオの継戦能力はそこまで高くない。

それが当初の見積もりだった。

食料自給率は面積ほど高いわけではない。

そう思っていた。


「東から運ぶにしても、時間がかかるだろう?予定されていた侵攻か?」


だが、リニオ帝国にその兆候は見られなかった。

一部に内戦と見られる戦いがあったという情報はある。

それだけだった。


「おかしい。なにか変だ」


三カ国は消耗戦を強いられていた。



──リニオ帝国にはまた別の事情があった。


リニオ帝国は現在戦争などしている暇はない。

それでも戦争をするしかない。


リニオ帝国の領土は広い。

しかし、その領土のうち、使える港がない。

港はあるにはある。

その全てが北極圏だ。

つまり、使える期間が限られる。

海に出ることができないのだ。


「なんとしても港を取る。それがなければ国が維持できん」


港による交易。

そして海の恵み。

それは内陸輸送が主な輸送手段になる国にとって、喉から手が出るほど欲しいものだった。


「凍らない港を得る」


リニオ帝国は食糧を求めて侵攻を繰り返したが、結果として北極圏付近や砂漠地帯、湿地高原などのリスクも多く抱えた。

東にさらに東進はできない。

山岳地帯が、その東への進出を邪魔している。

東側を南進すれば平地はある。

だが、そこには別の強国があるし、さらにはそこに至るまでに広い砂漠地帯を抱えることになる。

中央部からの南進はもうできない。

既にそこは高原の湿地を抱えており、南の山を抜けた先は魔族と呼ばれる人種の国がある。


「国を、民を食わせなければ、国が分裂する……」


それがリニオ帝国が常に抱えるリスクだ。


さらに不運があった。

リニオ帝国の北西側、北極圏よりほんの少し外れた位置にある港の街べルック。

このべルックの先にある小島に四英雄の一人、ピアネが堕ちた。


その小島は祭壇の小島とされ、神聖視されてきた。

そこに大穴が開き、ピアネは封印から脱出した。


「どこ……どこ……バージ……どこ」


異形の化け物は祭壇を破壊し、べルックも破壊した。


特に教会は集中的に破壊され、べルック周辺の村なども巻き込まれた。

これによりリニオ帝国は、使える唯一の凍らない港を失った。


「化け物?なんだそれは?」


ピアネのその姿は間違いなく化け物だった。

巨大な女性の上半身が、ムカデ状の身体の上に連なっている。

乳房は36対。

腕も36対。

背中には虫の羽が36対。

巨大な顔の口から女性の身体が生えている。

下半身はなく、腰から下は巨大な蛇の尾。

女性、ムカデ、昆虫、蛇など複数の生物的特徴が融合した異形。

動物や魔物など、彼らの知る生態系の中で、このような形状の生物は存在しない。


当初、リニオ帝国はピアネを討伐対象としていた。

しかし、その異形の姿や「バージ」という人名を繰り返すことから、天を支えた英雄ピアネであると断定するに至る。


バージとは、ラメント教における英雄の去り際に現れた四人の予言者の一人だ。

彼らが英雄の帰還を予言した。


「あれは、四英雄のピアネである」


つまり神は我らの地に帰還した。

四神派の彼らはそれを後ろ盾に国内をまとめようとした。


「だが、港はどうにもならん」


ピアネを化け物として討伐対象にしていた時の戦費。

これはもはや国庫一年分程度では収まらない。

内戦にも似た大きな規模での討伐作戦だった。


結局彼らはピアネを刺激せず、神として讃えることにする。

そして、港と海への道は、他国の領地を切り取って作る。

これが彼らの方針になる。


「今、やめるわけにはいかん」


リニオ帝国にも、引けない事情があった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。