↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生贄の英雄 セト・ウォルカの物語  作者: 下山四郎
Disc01:幼少期─王立魔法士官養成院─
46/138

第46話 それぞれの成果



「じゃ、俺は賭場担当なんで、行ってきます!」


カジノの中に入るなり、ハーレイは中央の階段を駆け下りていった。


「おい!待て!」


サファンの制止など聞く気もない。


「坊っちゃん、俺は仕事がありますんで!」


そう言い残し、ハーレイの姿は階段の向こうへ消えていった。


「……あいつ、本当に遊びに来ただけではないだろうな」


サファンが呆れたように呟く。


「本人は情報収集と言っていたが」


セトは平然と答えた。


「そういう問題ではないんです」


カジノの中はかなり広い。


中央にある大階段は地下へ向かって伸びており、その先には賭場が広がっている。


一方、一階と二階は大きな吹き抜けになっていた。

吹き抜けを囲むように各階の回廊が設けられており、上階から地下の賭場を覗き見ることもできる。


一階には酒や料理を扱う店。

二階には談話室や応接室。


賭場だけではない。

貴族や商人が集まり、金と情報が行き交う場所。

それがマクレラン王国のカジノだった。


「坊っちゃん、まずは上を見て回りましょう」


サファンがそう言った。


「はい」


セトは頷いた。

二階に上がるが、そこはどうやら本当に格式の高いVIPルームのようだ。

階段の中ほど、踊り場で警備員に止められ、二階に上がることはできなかった。


「とりあえずこの辺りの人に聞いて回るか」


セトとサファンは、手当たり次第に聞き込みをする。

と言ってもあのトライバル風の刺青の話題は出さない。


まずは見える場所にあの刺青があるかを見て、刺青のない者にだけ世間知らずの坊っちゃんという紹介から入る。


そして世間話を始める。


「王都ってどんなところなんですか?」

「このカジノって王族が経営しているんですか?」

「王族の方って、ここには来るんですか?」


最初は子どもがいることに戸惑う客たちだったが、酒が入れば口が軽くなる者も出てくる。

セトとサファンは、教えてもらったお礼にと酒を奢って回った。


「あんたら、酒奢ってくれんのかい?」


そうしているうちに、数名の客が話しかけてくるようになった。


「最近商売がうまくいかねぇ」

「景気が悪くなった」

「俺もあの組合に入れないかな?」


ポロポロとそういう話が漏れてくる。


「あの組合とは?」


サファンがそれらしい話題について、話を広げようとする。


「なんでもな、失業者を拾って仕事をくれるんだと。まぁ別に失業者じゃなくても、能力のある人は雇うみたいなんだがな」

「どんな組合なんでしょうね?」

「わからんなぁ。でも、こういう景気の悪いときには助かる。羨ましいよなぁ。組合に入ると、なんか変な形の印をもらうんだと。あれ見るとさぁ、くぅ〜、羨ましい」


その後ろにハーレイがいた。

先ほどまでの陽気な姿はどこにもない。

肩を落とし、目から光を失い、ただ立っていた。

生気のないその姿に気がついたのは、セトだけだった。


「どうしました?」

「金が……なくなりました」

「いくら使いました?」

「…………」

「いくら?」

「……全部」

「調査の方は?」

「………それどころじゃないんです!」


その様子にサファンも気がつく。


「……お前、いくら持ってきたんだ」

「聞かないでくれ」

「坊っちゃん」

「はい」

「こいつを一人にしてはいけません」

「最初からそう言っていたと思うけど」


涙目のハーレイを見て、セトが声をかける。


「どんなゲームをした?」

「………ルーレット」

「前に、勝てるゲームをするよう言ったはず」

「さっきの運試しで、流れがキテると思ったんです」


セトは眉間を揉んだ。


「まだ終わってない」

「何が?」

「取り返す」


ハーレイはセトを見る。


「もう一度だ。取り返す」


サファンは頭を抱えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。