第45話 カジノへ
カジノへ行くことは決まった。
だが、問題がある。
「坊っちゃんは入れません」
年齢制限だ。
カジノとは言っても、その全館が賭場ではない。
社交場でもあり、娯楽施設でもある。
それがマクレランのカジノだった。
「社交場にいたらいいんですよね?」
「そうではなく、まだ早いという意味です」
社交場に入るにしても、幼すぎる。
貴族や大商人が跡継ぎを連れて行くにしても、大抵の場合は成人を控えた若者だ。
七歳という年齢は、それだけで目立つというのは予測できた。
「まあまあ、坊っちゃん。カジノってのは広いんですよ。賭場だけじゃない。賭場は俺が引き受けますから、二人で社交場の方をお願いできますか?」
そんなハーレイの様子に、サファンが睨みつけるようしてに言う。
「遊びじゃないんだぞ」
「もちろん。情報収集であります」
ハーレイはサファンに向かって、ビシッと敬礼の態度をとる。
「お前が賭場に行きたいだけだろう」
「情報収集ですって」
「何の情報を集めるつもりだ」
「刺青だろう?わかってるって」
はぁ、というサファンのため息など気にすることなく、ハーレイはスキップでカジノに向かった。
その途中、サファンはセトに尋ねた。
「寮の方には連絡は?」
「してない」
「無断、ということですか?」
「うん」
脱寮………
明確な規則違反だ。
「罰がありますよ」
「忘れていました」
もう夕暮れというには遅すぎる時間。
歩く道は暗くなり始め、明かりには羽虫がいるように見えた。
サファンが頭を抱えていると、
「おーい!早く!こっち!」
遠くで手を振るハーレイが大声で呼んでいた。
カジノの入り口に到着すると、外に男が立っている。
門番?警備員?なんとも厳つい顔をしている。
「お前か……この前も叩き出したのに、また来たのか?」
その男はハーレイの顔を見て、嫌そうな顔をした。
「今日はですね、坊っちゃんのデビューなんです。俺は護衛。ご・え・い」
ニッコリとした笑顔で男に言う。
「そちらのお坊ちゃん?若すぎるだろ。年齢は?」
「七歳」
「ダメだ。子どもじゃないか」
「社交場も?」
「それにしても、まだ早いだろう」
「賭場には行かないよ?こっちの石頭もいるし」
ハーレイはサファンを指さす。
「あなたも、こちらの方の護衛?」
男がサファンに話しかける。
「はい。私はこいつとは違って賭場には行きません。坊っちゃんと社交場だけです」
ふぅん、と男は鼻を鳴らす。
「あんたと話すほうがいいだろうな。なぁ、子どもだぞ?わかってるのか?」
男はハーレイではなく、サファンと話をする。
「はい。しかし、お仕えする主より、本日一日だけ、社会見学として見せるように、との言伝がありました。私が目を離しませんので、ご容赦ください」
サファンは男に頭を下げてお願いする。
腕を組んで顎をしゃくり、男は面倒そうにサファンを見た。
「あんた、目を離すなよ?身分証明できるものは?主って誰だ?」
「身分証はこちらに。主は、宗教的な権威になります」
「宗教的な権威?誰だそれ?」
個人名や祭壇のことについては、教会関係者は話すことができない。
「そっちの坊っちゃんは訓練生か。まぁ身分証は全員確認できた。いいか?絶対に賭場には入るな。社交場だけだ」
男は三人を順番に見た。
「わかったな?賭場には絶対に入るなよ。」
「はい」
「はい」
「はーい」
三人はこうしてカジノに足を踏み入れた。




