第44話 割り切れない数
セトは魔法実践から数日して、寮に戻る前に、ハーレイとサファンを呼び出した。
「相談がある」
セトから相談など初めてのことだ。
「坊っちゃんから相談ですか?珍しい。どっか好いた人でも見つけましたか?」
ハーレイが茶化すが、セトの表情は変わらない。
「おい。真剣な相談だろう。真面目に聞け」
サファンがハーレイを小突く。
セトはそんな二人の様子を気にすることなく話をする。
「カリム教官の腕に、あの刺青があった」
「あの刺青?」
「ウォルカからの峠。あそこの野盗にあったものだ」
ハーレイとサファンは、それを聞いて考える。
「まずは、整理しましょう」
サファンが一度知っていることを並べていく。
「まず、あの刺青について、タリカス峠の野盗五人全員にありました。あの野盗五人は既に我々が殺しています」
「そうだな」
セトはサファンの言葉に相槌を打つ。
「次にバレンタ。ここでハーレイ、あなたが助けた妊婦が言っていたこと。夫が帰らない、夫は刺青を組合の印だと言っていた。これは間違いないですね?」
「確かにそう聞いた」
サファンに尋ねられたハーレイが答える。
「そして今回、カリム教官の腕に同じものがあった?ということでいいですね?」
サファンの言葉にセトが頷く。
それを見てハーレイが頭を掻く。
「妙ですねぇ。つながらないんだよなぁ」
ハーレイは難しい顔をしながら言う。
「野盗や街の人間だけなら、食い詰めた結果の裏仕事ってこともあり得る。でぇ?なんで養成院の教官やら王妃がそこに出てくる?」
サファンもこれには同意する。
「そこですね。身分も役職も何もかもがつながらない。社会的な地位もです。組合とは基本的に横のつながりの組織。縦の場合もありますが、ここまで多くのつながりの薄い人が関わるのは稀です」
「稀っていうか、こうなったら組合かどうか怪しいもんだ」
ハーレイとサファンが話をしている。
その間もセトは情報の整理を続ける。
(確かに、いろいろなものがつながらない。何かがおかしい……)
「サファン、ハーレイ」
セトは尚も喧々諤々と意見を交わす二人を止める。
「何かがおかしい。モヤモヤというか、これは……陰謀?とすると言い過ぎかもしれないが、おかしい。それは確定だろう」
サファンとハーレイが頷く。
「プランの提示をする。プランは二つ。二人の意見を聞きたい」
セトは右手の人差し指を立てた。
「まずプラン1、これは情報収集だ。その組合が何なのか。王都やバレンタで聞き込みをし、実態を把握する」
サファンは頷くが、ハーレイは納得していない様子だ。
「次にプラン2」
セトは右手の中指も立てた。
「王妃殿下に直接お会いする。方法はわからないが、俺たちが持ってる情報の中で、最上位の身分の方だ。なにか知ってる可能性は高いように思う」
今度はサファンが納得いかない表情になる。
「王妃殿下と直接会うことは、今の身分では不可能です。いかに坊っちゃんが好待遇で養成院にいたとしても、それは王族方には関係のない話です」
確かにその通りではある。
現実的に、身分の違いで気軽に会える方ではない。
「いいや、坊っちゃん。流石ですよ。うん。名案だぁ」
だが、ハーレイの反応は違った。
「やりようはある」
それだけ言うとハーレイはニヤニヤとして、なぜか嬉しそうにしている。
その様子にサファンは呆れていた。
「お前、また碌でも無いことを考えてるな?」
「坊っちゃん、カジノにいきましょう」
カジノ………
「マクレラン王国は賭博禁止です。しかしぃ、唯一許されるのが、王族直営のカジノ!ここは王族たちの現金収入源でもある」
「お前!坊っちゃんをカジノに連れて行くのか!?」
「なぁんか、情報あるかもしれませんよ?」
ハーレイのニヤニヤは止まらない。
そしてサファンは怒りだす。
「お前は遊びたいだけだろう!?」
「情報収集だって」
「王族直営でも、王族が来るとは限らん!」
「それはそう」
「知り合いでもいるのか?」
「そんな都合よくいると思う?」
そんな二人の言い合いに、セトが口を挟む。
「でも、王族の金を扱う場所なんだろ?」
その一言に形勢逆転とばかりにハーレイが食いついた。
「そうそう!それそれ!それが大事なんですよ!坊っちゃん!」
味方を得たと言わんばかりのハーレイを見て、サファンはため息をついた。
そんな二人にセトは提案をする。
「じゃあ、こうしようか。運試しだ」
セトは建屋の壁に手を当てる。
ほんの少量……
サイコロを三個だけ作る……
材質はこの木材でいい……
そうして一部を使って作られたサイコロが三つ。
「割り切れる数と割り切れない数、どちらがいい?」
なんのことがわからないサファンとハーレイは首を傾げたが、まずはサファンが答えた
「では、私は割り切れる数のほうがいいですね」
それに続いてハーレイも答える。
「割り切れない方が面白い」
その二人の回答を聞いて、セトは両手でサイコロを優しく包み、カラカラと手の中で回す。
「じゃあ、いいか?」
セトは床にサイコロを落とした。
サイコロの出目は、二、二、三。
「合計は七。割り切れない数だ。カジノに行く」
ハーレイは全身から喜びを爆発させ、ガッツポーズをした。




