第138話 リサイクル工場
アーケローンの甲羅の上に建つ建物。
その中には溢れんばかりの鉄屑のような物が積み上がっていた。
「ちょっと!これ!見て!」
サフラは興奮気味に見て回っている。
「魔石が!高純度の魔石が!」
どうやら珍しいものがたくさんあるらしい。
「ちょっと!こっち来てください!」
セトはハーレイに呼ばれて、書物が並ぶ棚の前に向かった。
「この亀!アーケローンって名前の兵器です!」
ハーレイは書物を読みながら叫んだ。
「この砂漠から動かずに、来たもの全てを飲み込む定点式の罠ですよ!」
セトはなるほどな、と思った。
その書物によれば、アーケローンは動かず、活動量を極限まで下げた上で巨大にすることで長寿を実現したとある。
暴食なる砂亀、アーケローン。
そう記述されている。
「そして、ここは消化後の不用品回収所……」
生き物は栄養として取り込まれ、不用品はこの建物に流れてくる。
「リサイクルセンターか」
セトは建物の中を見回した。
鉄、魔石、魔結晶、その他にも見たことのない鉱物。
それらが種類ごとに分けられている。
「これ、誰が分けてるんですか?」
サフラが尋ねる。
「アーケローンだろ」
「どうやって?」
「さあ?」
セトが答えた直後、床の一部が動いた。
「うわっ!」
大量の鉄屑が、まるでベルトコンベアに乗せられたように移動していく。
その先には巨大な筒状の装置があった。
鉄屑がそこから出てくる。
ガコン。
ガコン。
内部から大きな音が響く。
しばらくすると、反対側から形の整った金属板が吐き出された。
「……加工してる?」
サフラが目を丸くする。
「いや」
セトは金属板を拾い上げた。
「加工じゃないな」
表面を指で撫でる。
「元々、こういう形だったものを取り出してるんだ」
「どういうことです?」
「溶かして作り直してるんじゃない。混ざったものを分離してる」
セトは装置を覗き込んだ。
「比重……磁力……いや、魔素か?」
装置の内部には、複数の魔石が規則正しく配置されている。
「これ、魔法で選別してるんじゃないか?」
「そんなことができるんですか?」
「俺に聞くな」
セトは即答した。
どんな生体構造なのか理解が及ばない。
「俺だって初めて見た」
機械と生物が融合したような身体だろうか?
どうしてこんな構造で生きているのか、理屈がわからない。
サフラは目を輝かせながら装置に近づいていく。
「すごい……」
「何がそんなに凄いんだ?」
「これだけ純度の高い魔石を、こんな大量に選別できるんですよ?」
サフラは魔石を一つ手に取った。
「魔動車に使えば、かなり効率を上げられます」
「ほう」
セトも魔石を見る。
「これ、今の魔動車に使えるか?」
「もちろん。セトさんの義手にも使えます」
その言葉に、セトは建物の入り口に頭を置いているアーケローンを見た。
(ここにあるもの、くれないか?)
『いいぞ。オイラには必要ない』
「いいって」
「なにがですか?」
「持ってっていいって」
サフラが固まる。
「いらないんだって」
セトは周囲を見渡した。
大量の鉄、大量の魔石、大量の魔結晶。
それらが、何百年、何千年分なのか分からないほど積み上がっている。
「……宝の山だな」
セトの目が輝いた。
「坊っちゃん」
ハーレイが釘を刺す。
「顔が悪いですよ」
「人聞きの悪いこと言うな」
「完全に悪い顔してますよ」
「してない」
セトは魔石を一つ手に取った。
「今の義手は動かすだけで精一杯だ」
「もっと小型の魔石にして、出力を細かく制御できれば……」
サフラが呟く。
「力加減も変えられるかもしれません」
「触覚は?」
「それは別問題ですね」
まぁ、それは仕方ない。
「それでも、十分だな」
「ですね」
こうしてアーケローンの甲羅の上で、魔動車と義手の改良が始まった。




