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生贄の英雄 セト・ウォルカの物語  作者: 下山四郎
Disc02:少年期─魔族領─
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第132話 密談



バチバチバチバチと音を立ててケーブルは暴れ回る。

その先から伸びる雷撃はカダルの体から、カーチェスにも伝わった。


二人の筋肉は痙攣して強張る。

肉の焼けるような匂いが充満し、セトとハーレイは雷撃を止めた。


ドサッ──


カーチェスの腕から、カダルの体が抜け落ちる。


「へへへ、こいつぁ参った」


カーチェスは生きていた。

カダルの身体を介して電流を浴びたことで重傷は負ったはずだ。

だが、そのために電流は分散して致命傷には至らなかった。


「あーあ、ニトラも泡吹いてら。こりゃ死ぬな」


カーチェスはニトラの方を見て言う。


「こうなりゃ、もうしゃーねぇな」


カーチェスは満身創痍のセトたちには目もくれず、自身で空けた穴の方に歩いていく。


「へへへ、ここは逃げるが勝ちだぜぃ!」


その言葉を残してカーチェスは消えた。


セトも意識は朦朧としている。

ソルダも立てそうにない。

動けるのはハーレイだけだ。


「坊っちゃん!」


ハーレイは引き続きセトの治療を行おうとした。


「ハーレイ、カダルを先に診ろ」


セトのその言葉にハーレイは首を振る。


「申し訳ありませんがね、生命活動はもう終わる。手遅れだ。それなら坊っちゃんが優先だ」


ハーレイは涙でいっぱいの目でセトを見た。


「坊っちゃん。次にソルダ。それが優先順位だ」


静かになった部屋で、ハーレイによる処置が行われた。


しばらくして、バタバタと研究員たちが警備を連れて戻ってきた。


「父さん!!」


どうやらフェネルもいるらしい。

セトの意識はそこで途切れた。


次に目を覚ましたのは、ホテルの部屋だった。

どれくらい寝ていたのかは不明だ。


「お、坊っちゃん!」


横についていたソルダが、セトが目を開けたことに気がついた。


「ソルダ、お前、もう大丈夫なのか?」

「もちろん!頑丈なもんで!」


ソルダはまだところどころ腫れた体で、アピールのポーズを取っている。


「どれくらい寝ていた?」

「三日ほどです。一日目は熱が下がらなくて大変だったんですよ」


三日か。

そう思ったとき、セトはふとカダルを思い出した。


「カダルは、どうなった?」


そのセトの問いに、ソルダは言いにくそうに、言葉を詰まらせながら話した。


「爺さんは、死にました。手遅れ、とハーレイが言ってました」


セトは一言、「そうか」とだけ答えた。


バタン!

その時、ハーレイが部屋に入ってきた。


「お!おお!坊っちゃん!お目覚めですか!?」


ハーレイはセトのベッドに駆け寄ると、すぐに診察を始めた。


「いやいやいやいや。よかったよかった。熱も下がってますからね!感染症とかは大丈夫だと思いますけど、もう少し安静にして様子見てくださいな」


セトは左腕に激しい痛みを覚えた。

うずくまるように体を丸め、左腕を押さえようとする。


──ない。


左腕は既にない。


「左腕、ないんだな」


その言葉に、ハーレイが少し悲しそうに眉を下げた。


「はい。すみませんが、切り落としたあと、再生を試みましたが救えませんでした」

「じゃあ、なぜこんなに痛い?」

「幻肢痛でしょう」


左腕がない。


「そうか。なくなったか……」


セトはしばらくなくなった左腕を眺めていた。


「ニトラとカーチェスは?」


セトは話題を変えるために、九従者のその後を確認する。


「ニトラは死亡しました。遺骸は研究所内に。俺が死亡を確認してます」


ハーレイが答える。


「カーチェスは逃げました。足取りは掴めていません」


次はソルダが答えた。


「それと今回の件について、魔王陛下が直接お話をお聞きになりたいとのことで、目が覚め次第ということで召喚状が届いてます」


ソルダがセトに、その召喚状を渡した。


「目を覚まし次第か。他にバレてないなら、気が済むまで目覚めてないことにしてくれないか?」


そうセトが言った瞬間に、ドアの向こうで声がした。


「それは無理ですよ。僕が見ちゃいましたからね」


そこにいたのは、フェネルだった。


「実はちょっとお話したいことがありましてね」


フェネルはそう言うと、部屋に入るなりセトのベッドに腰掛けた。


「父のことは、残念でした。本当に。それと皆さんに良くしてもらったみたいで、感謝してます」


フェネルは頭を下げる。

カダルは洗脳されている、と言っていたが、本当にそうなのか疑問に思うほどだ。


「実はですね、僕はサフラを外に出したいんですよ」


カダルはセトに、孫を外に連れ出してくれと頼んだ。

今度はフェネルが同じことを言う。


「どういうことだ?」


セトはフェネルに問う。


「陛下が兄の身体を使っているのは知ってます。でもね、いろんな感情を隠して、僕も今の主席技術員の立場を得た。サフラを連れ出す目眩ましとしてね」

「それで?」

「サフラは研究所の助手です。これから研究所であなたの義手を造る。まぁ、陛下の許可は必要になりますが、私の立場を使います。その整備技士として、サフラをあなたにつけて外に出す。いかがですか?」


フェネルの目は、しっかりとセトを見ていた。


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