第124話 魔王の魔法
ガラッシュから三日。
首都コペグダの宿に、セトたちはいた。
コペグダはガラッシュよりも広く、そして大きな街だった。
首都という言葉が、そのまま形になったような街。
あらゆる「最先端」が集められ、街そのものが一つの巨大な技術の結晶になっている。
それが、セトのコペグダに対する第一印象だった。
そのコペグダの宿。
というか、ホテル。
外から見て10階まで窓があるのがわかる。
この世界では十分な高層建築だ。
「なんじゃこりゃ」
ハーレイはホテルを見上げて度肝を抜かれていた。
「これは、宿か?」
ソルダも同じようだ。
「この街は王宮より高い建物は建てられねぇ。というか、この国だな。だからこれが限界なんだ」
カダルだけは何でもないように、宿の入り口に向かって歩いていく。
(いや、宗教施設以外でこの高さになるのは、普通じゃないな)
セトも同じように驚いていた。
この世界でこの高さの建物に出会えるとは思っていなかったのだ。
「おい、何してる?」
カダルが入り口で三人を呼ぶ。
「一人一部屋だ。今までみたいな大部屋じゃねぇ。だからってハメ外すなよ?」
カダルが受付から鍵を四本持って、ロビーで浮かれ回っている三人に歩み寄ってくる。
ロビーには調度品が置かれ、どれほどの値がつくのか、お上りさん三人にはその価値がわからない。
天井のシャンデリアはキラキラと輝き、その技術力の高さが伺えた。
「おい!田舎モンども!そんなチンケなモン見てねぇで早く行くぞ!」
カダルは物凄く面倒臭そうにセトたちを呼ぶ。
そこにはエレベーターがあった。
籠に乗り、部屋のある九階を目指す。
「な、なんだ、これ」
ハーレイもソルダもエレベーターは初体験だ。
「これは魔素で動いてるのか?」
セトは動力が気になる。
「電力だ。モーターがあるんだ。発電機もあるだろ」
カダルは何でもないように言う。
確かにエレベーターにはモーターが必要だ。
それなら発電機があってもおかしくはない。
「まず俺の部屋に来てくれ」
九階に着いたとき、カダルは全員を部屋に集めた。
「明日、王宮で魔王に謁見を申し込みに行く。そんなに早く謁見ができるとは思わんが、ここが通らねぇと研究所には入れねぇ」
「研究所?」
「そうだ。お前たちの探してる奴は、まず間違いなく研究所にいる。しかもとんでもなく警備が面倒なところだ」
確かに、九従者という研究対象だ。
そういうところに保管されていても不思議ではない。
「その謁見のとき、魔王の目は見るな」
「普通は見ないだろ」
ソルダが突っ込む。
この世界では目上の者の顔をマジマジと見るなど無礼な行いだ。
セトもハーレイも頷く。
「いや、恐らく魔王の方から見ようとする」
「……どういうことだ?」
セトはその魔王の行為が、なにか引っかかる。
「魔王は転写魔法を使う」
カダルが言った一言は、セトにとって衝撃的な一言だった。
転写魔法はかつてセトがマールによって山崎の知識を得たもの。
そして、本来の使い方は、
「人格の転写か」
つまり、魔王は他人の体を乗っ取って生き永らえてきた存在。
「マジかよ」
ハーレイもソルダも言葉を失った。
「いいか?目は見るなよ」
カダルはもう一度、強く念押しした。




