↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生贄の英雄 セト・ウォルカの物語  作者: 下山四郎
Disc01:幼少期─ストラス山の少年─
12/140

第12話 ストラス岩窟院



──1年後。

7歳になったセトは、ゼラムとエーコとともにストラス岩窟院を目指していた。

ピクニックではない。


「父さんは乗らないの?」

「乗らん。乗ったら魔素を使えんからな」


セトとエーコを乗せたエスカレーターが、山肌に沿ってガラガラと登っていく。

その横を、身体強化の魔法を使ったゼラムが飛ぶように駆け上がっていた。


セトはエスカレーターの手すりに手を置きながら、その様子を眺める。

下を見ると、木々の間から村が小さく見えていた。

いつも見ている景色なのに、高いところから見ると少しだけ違って見える。


「父さん、疲れないの?」

「疲れるぞ」

「じゃあ、乗ればいいのに」

「だから魔素が使えんだろうが」

「でも歩くほうが疲れるよ?」

「……そういう問題じゃない」


隣でエーコが小さく笑った。


「セト。お父さんは魔法を使いたいのよ」

「なんで?」

「好きだから」

「ふーん」


セトはもう一度、ゼラムを見る。

走るたびに筋肉が大きく動き、身体から漏れた魔素が空気を揺らしている。

一年間、魔法について学んできた。


けれど。

セトには、まだ分からないことがたくさんあった。

その一つが、これから向かう場所にある。


「ねぇ、なんで今日じゃないとダメなの?」

「7歳になったらお祈りをするのよ」


セトの疑問にエーコが答えたが、セトにはそんな心当たりはなかった。

ラキストは1つ年上だが、わざわざお祈りに行ったという話は聞いていない。


(よくわからないな)


疑問で頭がいっぱいになるが、そうしているうちにも、岩窟院は目の前に迫っていた。


ストラス岩窟院。

山の中腹にある古い宗教施設。

曰く、古代文明の時代からある。

曰く、ここの巫女は全てを見通す。

曰く、4000年の歴史を全て見てきた。


近くで見ると、想像していたよりずっと大きかった。

岩肌と一体になった建物は、建物というより山そのものに穴を開けて造ったように見える。


他にも噂は多々あるが、どれもセトには俄に信じられないものばかりだった。


「よし、着いたな」

「礼拝堂でいいのかしら?」


岩窟院を目の前にして、ゼラムとエーコが話している。

何やら懐かしむような、それでいて少し寂しそうでもあった。


「あら、あなたたちは……」


奥からこちらに話しかけてくる女性の声がした。


「そうですか。今日でしたか。それで?そちらの子が、あの時の?」

「はい。そうです」

「名前は、セト、でしたね?」


名前を呼ばれたセトは女性に顔を向けた。

その声を聞いた瞬間、ほんの少しだけ足が止まった。

どこか聞き覚えがある声だが、全く思い出すことはできない。


「大きくなりましたね。私はマール。どうぞ、礼拝堂のほうへ」


促されるまま、岩窟院の奥へと歩みを進める。

ひんやりとした洞窟を進み、開けた場所に着いた。

そこは採光のためにくり抜かれたいくつもの窓から光が差し、幻想的な空間のように思えた。

天井は高く、声を出せば遠くまで響きそうだった。

外の山とは違い、そこだけ時間が止まっているようにも見えた。


「7歳に、あなたはなりました。これはそのお祈りです。神に感謝を」


跪いたマールは両手を組み、祈りを捧げているようだ。


(神なんているのか?)


セトは疑問に思ったが、魔法があるなら神もいるのかも、と妙な納得をした。

横を見るとゼラムもエーコも同じように祈っている。


(しないとダメかな?)


そう思ったセトは、両手を合わせて合掌した。


しばらくすると、祈りの言葉が終わり、マールが話しかけた。


「私は少しお父様とお母様と話があります。いろいろ見て回ってもいいですが、あの奥には入らないで下さい」


マールが指さすのは、礼拝堂の更に奥にある壁をくり抜いたであろう廊下だ。


「何があるんですか?」

「私の部屋です」


部屋を覗くのは良くない。

怒られるのは目に見えてる。

ケメルさんの家で、アメリアの部屋に勝手に入って酷い目に遭ったのを思い出した。

セトは身震いをすると、そこだけは入るまいと心に決めた。


しばらく色々と見ていると炊事場や墓などがあり、生活空間と宗教が混在しているように思えた。

一通り見て回って岩窟院の外へ出ると、別の入り口があることに気がついた。


(……なんだろう。ここ、妙に気になる)


そこは洞窟で、その先には光が見えていた。

洞窟を抜けると、風が吹き抜けた。

目の前には空が広がっている。

その先には切り立った崖があり、遥か下には山の木々が続いていた。

その崖の先端に、ひとつだけ祭壇が組まれている。


「ここは祭壇ですよ。気になりますか?」


後ろから声をかけられ、振り向くとそこにはマールがいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。