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生贄の英雄 セト・ウォルカの物語  作者: 下山四郎
Disc02:少年期─魔族領─
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第117話 魔動車の改造

第117話 魔動車の改造



翌日、本格的に魔動車の改造にセトとカダルは着手した。

まずは砂がエンジンに入り込む問題。

ここをどうにかしないと連続運行に支障が出る。


「遠心力を使う」


セトの考えでは、外部吸気をそのままエンジンへ送り込むのではなく、吸い込んだ空気に回転を与える。

空気よりも重い砂や小さなゴミは外側へ飛ばされる。 そのまま落下させ、下部に設けた容器へ集める。


「これなら、外部吸気の量をある程度増やせる。起動時の魔力は必要だが、一度エンジンが動けば外部吸気を増やせる。運転者の負担も減らせる」


カダルは図面を覗き込んだ。


「吸い込んだ砂を、エンジンに入れる前に落とすわけか」

「そう。砂を入れないんじゃない。入ってきた砂を、途中で捨てる」

「……なるほどな」


セトは紙にさらに線を書き加える。


「問題は、どれくらいの回転を与えればいいかだ。強すぎれば空気まで損失する。弱ければ砂が落ちない」

「また試すのか?」

「当然だろ」


セトは少し笑った。


「作ってみないと分からない」


試行錯誤の末に出来たものは、かなり立派というか、大きなものだった。


「デカすぎないか?」


カダルはそれを見て取り付ける場所がないように思えた。


「…………確かにやりすぎた。これなら小型のものを左右両側にいくつか付けるほうがいいな」


一つの機構で賄おうとするのをやめる。

分散して送り込む形に作り直していく。


「これでどうだ?」


セトが魔動車を動かす。

吸気口から空気が吸い込まれる。

しばらくして、下部の容器を確認する。


「……入ってる」

「砂か?」

「ああ」


容器の中には、細かな砂が溜まっていた。

カダルがエンジンを見る。


「機関部は?」

「ほとんど入ってない」


セトは魔動車を見た。


「成功だ」


だが、カダルは首を横に振った。


「まだだ」

「何が?」

「いちいち容器の砂を捨ててたら面倒だ。勝手に排出させる」


セトは少し考えた。


「わかった。ついでだ。窓も含めてガラス張りにして、運転席覆う」

「全面ガラス張りにするのか?」

「必要なところだけだ。吸気量を上げて、不要な吸気は運転席や客車の内部の換気に回す。過剰な吸気の逃げ場にもできる」


セトは図面を書き換えていく。


「それに、砂を防げる」

「砂よけか」

「そう。運転中に砂を浴び続けるのは効率が悪い」

「お前、砂漠に来てから砂のことばかり考えてねぇか?」

「砂が機械を壊すからな」

「そりゃそうだ」


カダルも図面を覗き込む。


「しかし、ガラスなんてあるのか?」


セトはカダルに聞く。


「ある。アラディーダなら手に入るだろ」


カダルは腕を組んでセトを見た。


「高いぞ」

「……」


セトの手が止まった。


「ガラスは作らない。透明度の問題がある。恐らく作っても無駄になる」

「買うしかないな」


手痛い出費だが、趣味に没頭するセトには関係ない。


「明日、買いに行く」


もう一日、アラディーダに滞在することが決まった。


「ハーレイ、ソルダ。今日は歓楽街に行かないでくれ。その金でガラスを買う」


そして、従者二人の楽しみは奪われた。


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