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生贄の英雄 セト・ウォルカの物語  作者: 下山四郎
Disc02:少年期─魔族領─
116/140

第116話 異端の技術



アラディーダに着いたセトたちは、まずは教会に向かった。

やはり、魔族領ということもあって、アラディーダの教会もかなり小規模だ。


「珍しいことがあるもんだ」


教会に入ってきたセトたちを見た神父の第一声はそれだった。


「はじめまして。助祭のセト・ウォルカです」


セトは名乗って頭を下げる。


「ああ、君が。話は聞いてるよ。随分早かったね」


神父はそう言って話し始めた。


「少し前にヘネス本国からの使者が来てね。君が来ることを教えてくれた。砂漠は大変だっただろう?」


礼拝堂の椅子に腰掛けるように促され、セトたちはそこに腰掛けた。


「実はもう少し時間がかかると思っていたんだ。砂漠を突っ切るのは現実的じゃないしね。迂回するとしたらかなりの時間がかかる。あと二週間ほどはかかると思っていたんだ」


神父はひたすら話している。


「いや、すまないね。ここはホクウ教原理派の街。ラメント教は極少数で、教会に来て話をしてくれる人が少なくて」


話し相手に困っているようだ。


「かなり早かったけど、どうやってこんなに早く?」

「魔動車で」

「魔動車?」

「はい。馬車の客車を改造したもので、魔力で自走します」


それを聞いた神父は黙り込んだ。

何かを考えているようだ。


「それは、この地域だから使えるものだ。へネス教国に帰るときは、それは解体したほうがいい」


神妙な顔つきで神父が言う。


「技術革新はラメント教の教義に反する。あまり西側でそれを使うと、君は神敵と見なされるかもしれない」


セトは考えた。

魔動車の作成はとても楽しかった。

だが、技術革新が教義に反する。

それなら──


「じゃ、棄教します」


セトの判断はそれだった。


(多分きっと持って帰っても大丈夫だ。問題は起きるが、内々で処理される。教会内部としても、俺みたいな存在は使い勝手が良い)


「棄教か。それをして、どうする?」

「何もしません。ただのセト・ウォルカに戻るだけです」

「なるほど。あまりお勧めはしないね」


セトはその神父の様子に対して、不満があった。

自分が楽しいと思ったことを取り上げられる。

そんな気分だった。


「すみませんが、本題は?」

「ああ、そうだったね。使者から君たちに言付けがある。東のドラドを目指せ」

「ドラド、ですか?」

「そう東の街だよ。じゃ、伝えたからね」


神父はそう言うと席を立って、セトに出て行くように身振りで示した。


教会をあとにしたセトたちは、魔動車を宿に移動させる。


「改良する」


セトは宿の部屋に入るなり、もう一度外に出て魔動車の元に向かった。

それに付き合うのはカダルだ。


「もうすぐ日が暮れるぞ?」


カダルはセトに声をかけたが、セトは聞く耳を持たない。


「なぁ、小僧」


それでもカダルはセトの背中に向かって声をかけた。


「機械いじりは楽しいか?」


その言葉に、小さく頷いたようにカダルには見えた。


「そうか。じゃあ、やるか」


カダルはセトの横に立ち、魔動車の改良を始めた。


二人を追いかけて来たハーレイとソルダにやることはあまりない。

材料の調達だけしてしまえば、手伝えることはないと言っていい。


「なぁ?このまま部屋に戻るか?」

「男二人で?」

「そりゃあり得ないだろう?」

「そうだよな?」


そう言って二人は歓楽街に出かけていった。


全員が気が向くままに夜を過ごし、明け方になって示し合わせたように全員が部屋に同時に入った。


なんとなく全員笑っていた。


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