第109話 馬車の再改造
「客ってのはこいつらか?」
「そうだ。セト・ウォルカ助祭とその従者二名だ」
セトたちはそれぞれ名乗ったが、カダルと呼ばれた老人は、その様子を腕を組んで斜に構えて見ていた。
「カダル!助祭が挨拶したのにお前は!」
テルンがカダルを指さして注意しているが、カダルは全く聞いていない。
「その小僧が主人かい?へぇ〜?あぁ、そう」
カダルはセトを覗き込む。
「とりあえず、お前は服を着ろ。話はそれからだ」
セトは下着一枚の姿で仁王立ちするカダルに対して、まずはそれを指摘した。
「着る前に呼びつけたクセに何を偉そうに……」
「お前はまた!こら!カダル!失礼だろう!」
服を着ていないことで、どこから失礼なのかの線引きがわからない。
セトにはもはや文化の違いとは、こういうことかという諦めがあった。
「まぁいい。話は聞いてる。もう出るのか?」
カダルは何も気にせずセトに話しかけた。
「すぐ出れるならすぐ出たい」
「おお、わかった。じゃ、行くか」
「いや、まず服を着ろ」
セトは眉間を揉みながら、もう一度指摘した。
「魔族は服を着ないのか?」
「いや、着ますよ。街で下着姿の魔族を見かけました?」
「見てないな」
「そうでしょう?カダルが特殊なんです」
カダルを待つ間、セトはテルンと話していた。
「あの爺さん、使えるのか?」
「もちろん。原理派に混ざって技師をしていましたから」
「技師?」
「はい。原理派は魔素を神からの恵みだからという理由で最大限に使おうとします。その技術的な部分での技師。腕は一級品ですよ」
なるほど。
それは助かるな。
「おい!出るぞ!小僧!」
カダルは服を着て家から出てくるなり、ズカズカと歩き出した。
「じじい!お前を待ってたんだろうが!」
ハーレイがカダルに食って掛かるが、お構いなしに進んでいく。
「何で行くんだ?歩きか?」
カダルは歩きながらセトに話しかけた。
「馬車だ」
「馬車か……前時代的だな。だからラメント教は……」
「他に何かあるのか?」
「まぁいいさ。ここじゃ部品が手に入らん」
馬車のもとにやってきたカダルは、その馬車を一回りし、構造や機構を確認していく。
「こりゃイジってるな。誰だ?やったの?」
「俺だ」
セトが名乗り出た。
「ふぅん。まぁいいさ。この街で手に入るもんでちょっとイジる。待っとけ」
カダルは何やら買い出しにいき、戻ってくると馬車の改造を始めた。
「魔法も使ってるのか?」
セトはその様子に興味が湧いた。
「当然使うだろ。俺らはな、お前たちより魔素への適性が高いんだ。お前たちよりうまく使えるんだ」
ガチャガチャと音を立てながら部品を加工していく。
(ベアリング……だと?精密加工だろうに)
「よくもまぁ、そんな簡単に……」
セトの思わず出た言葉に、カダルは鼻を鳴らす。
「昔とった杵柄だ。これでいいだろうな」
馬車の改造が終わる。
ベアリングにデフギア、サスペンション。
座面のクッション性などは格段に改善した。
「じゃあ、行こうか」
誰よりも早くカダルが馬車に乗り込んだ。
「なんでテメェが一番に乗るんだよ!じじい!」
ハーレイが騒ぎ立てるがカダルは気にもとめていない。
「早く動かせ」
「案内人のくせに御者もしねぇのか!」
今度はソルダも文句を言い出した。
「いつもあんな感じか?」
セトはカダルを指差して、テルンに聞く。
そのテルンはペコペコと頭を下げて謝るばかりだ。
「もういい。早く出るぞ。ソルダ、御者頼んだ」
諦めたセトは馬車に乗り込んだ。




