第103話 祭壇の解析
「姉さん、ちょっと祭壇のこと調べたいんだ。いいかな?」
「さぁ?アンタ助祭でしょ?しかも武官ってことは、教会の内部の人間じゃないの。いいか悪いか知らないの?」
「わからない。というか、祭壇の仕組みが知りたいんだ」
「知って何になるのよ?」
「わからないけど、ダメかな?」
「あたしが大司教様に怒られなければ何でもいいわよ」
まぁいいか……
そんな簡単な気持ちでセトは洞窟を抜けて祭壇の前に立つ。
「まだボロボロのままだな」
かつてここでマールと共にアシュレイと戦った。
その時に壊れた場所はそのまま残されていた。
「まぁでも、姉さんが役目に就いてるってことは、機能してるってことだろうな」
セトは祭壇の中心に立つ。
「ここって中心だけど、中心だから何か意味があるのか?」
気になって周りを見渡すが、操作盤のようなわかりやすい装置は一つもない。
「ふぅん。一見すると石が六方向に置かれただけ。真ん中に石畳がある。それだけなんだよね」
切り立った崖の上に設置された祭壇は、景色を眺めるには絶好の場所だ。
「知らない人が見たら、ただの絶景ポイントなんだよなぁ」
巫女か……
封印を監視する……
まぁ当然魔法だろうな……
「じゃ、魔素の流れとかあるのかな?」
祭壇の中心で、魔法を使う。
「水を少しだけ、石畳に流す」
その水に魔素が混ざるように……
調整して……
魔素がどう反応するか……
水は流れる。
不規則に高いところから、低いところ。
同心円的に広がる。
普通ならそうだ。
だが、祭壇は違った。
石畳の隙間を、高さやその距離に関係なく流れる。
まるで回路を形作るかのように流れた。
「ほぉん。ということは、これそのものが回路なんだ。すげぇ複雑。作った人天才だな」
石畳が破損していても関係ない。
水は外に漏れることなく、回路として流れた。
「つまり石畳は魔素を使うときのガイド用のラインだ。じゃ姉さんが直せよな。面倒なのか?」
水は六方向に置かれた石にそれぞれ到達して、その流れを止めた。
「あそこが終着?でも何にも起きない。起動してない?ん?」
電気系統の場合とは違うのか……
そうなると……
回路を通って、起動させるんじゃない?
「いや、回路は起動キー?ということは、識別のキーがいるってことか?」
起動はできても、識別キーがないと作動しない。
識別キーか……
「ああ、それで祭壇の巫女か」
セトは応接間に駆けた。
「姉さん!!」
そこにはハーレイといちゃつくアメリアがいた。
驚いたアメリアとハーレイは目を見開くが、セトにはそんなこと関係なかった。
「ちょっと来て!」
「なによ!!」
「いいから早く!!」
セトはアメリアの手を引っ張り、祭壇に連れて行く。
「祭壇使ってみて」
「はぁ?」
「いいから使って!!」
アメリアは渋々という表情で祭壇を起動させた。
大きな音が鳴るわけでもない。
何かが光るわけでもない。
だが、魔素の流れは、祭壇の周囲だけ明らかに変わったように感じた。
「これで何がわかるのよ」
アメリアは不満そうに言う。
「いろいろ。やっぱりそうなんだね。何となくわかってきた」
祭壇の識別キーは巫女そのもの。
その可能性が高い。
継承の魔法は、その識別キーの継承も含むのか。
「ありがとう。あ、ごめんね。もういいよ。戻って続きしてきてもらって」
セトはアメリアに向かって言った。
「クソガキが……殺すぞ」
ゴン!
アメリアのゲンコツがセトの頭を捉えた。
セトは涙目になりながら頭を押さえる。
「なんでだよ。教会には黙っておくからよろしくやればいいじゃん」
「死ね!マセガキ!」
しゃがみ込むセトの顔面にアメリアの膝蹴りが入り、セトはしばらくその場から動けなかった。




