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生贄の英雄 セト・ウォルカの物語  作者: 下山四郎
Disc02:少年期─魔族領─
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第101話 久しぶりの故郷



セトに与えられた期限は45日。

それを一日たりとも無駄にはできない。


「船は嫌なんだけど………」


教会が用意したのは、西の島に向かった船より一回り大きい船。

近海ではなく、へネス教国からマクレラン王国まで行くのだ。

船は大きくなる。


「そうは言ってもねぇ」


ハーレイはセトの横に立って船を眺めていた。

ソルダは船員に混ざって荷物を運び込んでいる。


「馬車も乗せるのか?」

「そうでしょうね。そうじゃないと向こうに着いてからの移動手段に困りますから」

「船酔いに効く魔法はないのか?」

「聞いたことないんですけど?」

「こう、耳の奥にある三半規管なんだが……」

「やるだけやってみましょうか?」


こうして彼らの船旅は始まった。


船は悪天候に遭うこともなく、八日間でマクレラン王国の南部の港町オルパドに到着した。


「待って……休憩したい……」


セトは今回も船酔いした。

三半規管を魔法によって強化できないかと思案したが、その強化の方向性がわからない。

平衡感覚を司る器官だとしても、どのように強化すべきかイメージできなかった。


「坊っちゃん!時間がないんですよ!」


そう言うハーレイをセトは恨めしげに見た。

そんな船上のセトは、船旅一日目にはハーレイから諦められ、ハーレイは馬車を引く馬のケアをしていた。

港に着いてからすぐに出発するためだ。


「我慢です!このまま馬車に乗る」


ソルダは座り込むセトを担いで馬車に乗り、セトは船酔いのまま馬車に揺られる。

かつてストラス山からマクレラン王都に向かうとき改造された馬車は、その後も改良を重ねてさらに揺れないものになっていた。


「ダメだ……停めて……」

「停めない!時間がないんですって!」


それでも道が悪ければそれなりに揺れる。

セトは馬車の窓から顔を出して、気分悪そうにしている。


「あと、どれくらいで着くの?」

「普通に進めば15日ですけどね、この馬車ならもっと早く着くと思いますよ」


(……食べても消化する前に吐いてしまう。どうにか栄養補給しないと)


セトの馬車は九日でストラス山に到着した。

かつて村があった場所には草が伸び、墓の周りにも緑が茂っている。


(やっと帰ってきた)


セトは馬車から降りたが、体力は限界に近い。

移動でかなりの体力を消耗した。


「山に登るのは無理そうだな」


ソルダはセトの様子を見て、村の広場があった場所で野営の準備を始めた。


「明日には山に登りますからね。しっかり食べて、ちゃんと寝てくださいよ」


ハーレイが食事の準備をしながら、セトに向かって言った。


(やれるもんなら、そうしたいさ……)


セトはそう思ったが、口には出さず、明日のために早めに眠りについた。


『どこだ………』


またあの夢だ。

久しぶりに見た。

何度も夢で聞いた。


『どこにいる………』


誰かを探している声。

久しぶりに聞く声は、何人かがそれぞれ言っているように聞こえた。


『見つける………』

『必ず………殺す……』

『見ぃつけたぁ……出口……』

『ここを……抜ける……あぁ……幾千の渡り歩いた世界を……』


なんだ?


『バージ……我が夫よ……この恨み……必ず晴らしてくれよう……』


「坊っちゃん!」


そのソルダの大音量でセトは飛び起きた。


「もう朝ですよ。飯食って山に登ります」


体調はまだ万全ではないが、一週間ほどしかいられないのだ。

早く登ったほうがいい。


(バージってことは、予言者か。何となく、わかってきた)


夢のことは、おそらく今考えてもわからない。


「山に登る前に墓参りをしたい」


セトは朝飯を無理矢理口に詰め込んだ。


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