瞬時の跳躍
それから、俺は黒衣の魔女…エラに「魔術」を教えて貰うことになった。
「体内のパスウェイを使って魔力を燃料にするんだ。そうすれば一時的に筋力を増強できる」
「この前の身体強化か」
「まあ、加減を間違えると筋肉痛で苦労するだろうがな…筋肉量自体を増やすことも大事だ」
「身体が力に耐えられない…ってことか?」
「そう、意外と聞き分けがいいんだな」
「この間身で体験したからな…」
「まあ、最初は魔力を少しだけ運用するんだ」
パスウェイ…通路を使って魔力を身体の中で燃やす。
加減して…少しだけ…
「とりあえず足だ。ジャンプが一番分かりやすい」
「わかった」
足に力が集まるのを感じて、俺は跳ねた。
「はあっ!」
俺は少し宙に浮かんではすぐに地に戻った。
…ショボっ!!!はあっ!とか言ったのに恥ずかしい!!!
「…肉眼ではわからないな」
ですよね~~
「魔力が体内を移動する感覚はわかったか?」
「まあ…足に力が集まるような…」
「そう、それだ。運用する魔力量を増やせばもっと増強できるだろう」
「使った魔力はちょっとだけだったもんな…」
「赤属性魔法の身体強化は持続性に長けているのに対して、純黒魔術は瞬発力に長けている」
「へえ…」
「…あのさ、ずっと気になってたんだけど」
「なんでそんなに純黒魔力に詳しいんだ?」
「…ずっとサンプルを見てきたからな」
「サンプル…?って、俺以外にも純黒魔力持ちがいるってことか?!誰だ、それは!!」
「私だ」
「お前だったんかい!!」
「なんでそんな大事なこと先に言わないんだよ!!」
「言う必要あるか?」
「じゃあ、今まで自分の身体で研究してきたのか…?」
「ああ、やっと2体目のサンプルが現れて助かったよ…単純にサンプルが増えたということもあるが…私は身体を使うことはどうも苦手でな」
「2体言うな!!人間だろ?!」
「そんなことはどうだっていいだろう。私が理論を立て、お前が身体で再現する。それでいいだろう?」
「まあ…わかったよ。実戦でも使えるように訓練しないと…」
「ああ、まずはジャンプで練習を続ける」
そうして俺は、ジャンプの練習を続けた。
***
「よし、なんかコツが掴めた気がする…!」
「いつでもいい。行け」
「はあああっ」
よし、飛んだ…!強化とジャンプのタイミングを合わせるんだ!
…で、着地はどうする…?
「あああああっ」
俺はバランスを失い、足でちゃんと着地できず尻餅をついてしまった。
「いってぇ…」
「ほぉ…ざっと1.5mといったところか」
「見てないで助けてよ…」
***
俺とエラは訓練を終え、町に足を運んだ。
「身体強化が安定的に使えるようになれば、実戦データも取ってきてほしい」
「ああ…わかった」
「ハイン…お前は鈍器戦士だったな?ちょうどいい。身体強化魔術と鈍器の相性は抜群だ」
「よし、頑張るぞ…!」
「あ、それと」
「この部屋は私が借りたんだが…お前も時々ここに泊まっていいぞ」
「少々ボロいが…寝るには問題ないし何よりただだ。お前も宿代が省けるし私も研究しやすい」
「…いいのか?お前もここに住むんだろ…?」
「ああ、それが狙いだ」
「…は?」
「全く、お前が異性で助かる。交配実験が行えるからな…」
「……は?!」
「魔力色と血統の相関関係を調べるに当たって私たちはいい標本に…」
「倫理観とかないのか?!」
「…私だって、誰でもいい訳じゃない…」
「お前は、私じゃ嫌なのか…?」
エラは顔を近づけて上目遣いをしてきた。
…なんで可愛いんだよ…!!
「…騙されねぇぞ」
「ちぇっ」
「ちぇっじゃねぇよ!!」
こいつ…考え方がヤバすぎないか…?研究のことしか考えてないんじゃないか?
でも…俺に魔術を教えられるのはエラくらいしかいない…!
自分の身は自分で守るしか…




