二つの唯一
「院長!この本に出てる『さんげんしょく』って何ですか?」
「ああ…三原色はね、全ての色の元になる三つの色のことだよ」
「例えば…リンダ、あなたの髪飾り」
「その黄色は赤と緑を混ぜたものなんだよ」
「「へえー」」
「赤、緑、青…この三つの色は他の色を混ぜて出来上がらない。だから三原色って呼ばれてるんだよ」
「皆の魔力の色もこの三つの色が混ざって出来上がってるんだよ」
「へえー」
「魔法使いたい!!」
「皆ももう使ってるよ?」
「ええ?!」
「使った覚えないよ!!」
「例えば…冬、寒くなると何故か体の中がポカポカしたことがあるでしょう?それは赤属性魔法」
「転んで膝に傷ができたとき、傷が埋る。これは緑属性魔法だよ」
「へえー」
「つまんない!!もっと派手な魔法使いたい!!」
「まあ…学べば使えるとは思うけどね…魔導書が高くて…ごめんなさいね」
「まあ…とにかく、赤色が濃いと赤属性魔法が強くなる。緑色が濃いと緑属性が、青色が濃いと青属性がね」
「院長!色が混ざってるのにどの色が濃いかどうしてわかるの?」
「それはね…予め色を混ぜて確かめてるからだよ」
「へえー」
「そして、混ぜたそれぞれの色の濃さを『ヘックスコード』で纏めてるんだ」
「ヘックスコード?」
「ヘックスコードというのは…16進数で表した色の濃さを三つ並べたものだよ」
院長は、説明を続けながら黒板に文字を書き出した。
「0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、A、B、C、D、E、F」
「この16個で0から15までの数字を表してるんだ」
「それぞれの色の濃さはこの16進数の2行で表していてね…00からFFまで、つまり0から255までの数字で表しているんだ」
「6行のうち、最初の2行は赤、その次に緑、最後に青の順番だよ」
「へえー」
「じゃ、院長の色は何?」
「…私は灰色だよ」
「つまんない!!」
「暗い!!」
「ハハ…そうかもね。でも、必ずしも悪いことじゃないんだよ。三つの色が程よく混ざると灰色になる。健康の証なんだ」
「逆に一つの色が濃すぎると…他の二つは薄くなることが多いんだ。神様は平等ということかもね」
「「へえー」」
「俺は赤だけあればいい!他の二つは要らない!!FF0000がいいな~」
「ハハ、それはかっこいいね」
「でも、それじゃ魔力の吐き口が赤属性しかなくなるでしょう?身体に魔力が貯まりすぎると…パーンって弾けるかもだよ?」
「?!や、やっぱり、俺、灰色がいいかも…」
「「ハハハハハ」」
「院長!!じゃあ、全部の色がFFだったら何色?」
「…」
「FFFFFFは…白色だよ」
「へえー」
「白なんだ」
「不思議」
「まあ…異世界から来た勇者様も薄いピンク色だったって話だから…そういう人は滅多にいないだろうけどね」
「でも知らないよ~?この中に白色がいるかも」
「ふ、ふーん?」
「ハイン、何期待してんだ?」
「き、期待してねえよ!子供じゃないし…」
「院長!!勇者様のお話聞きたい!!」
「ハハ、わかったよ。昔々…」
***
「お手紙でーす」
「ああ…ありがとう」
「魔力色診断費用支援政策に関する公告」
「…これは!」
「ええ!!私たちも魔力色がわかるってことですか?」
「俺、赤がいい!」
「私は緑…」
「でもやっぱ灰色が健康っていうだろ?」
「へ、へえ~?」
「ハイン、お前そわそわしてるだろ」
「し、してねえし!お前こそ期待してるんじゃないのか?!ベック!!」
「いや、別に。今まで特に身体に問題あったことないし、正常だろ」
「くう…お前いつもそうやって大人ぶって…」
「お前がそれ言う?」
「なにー!!」
「それでそれで、いつなんですか?!」
「8日後、隣町の病院でやってもらえるんだってね。寝坊したら置いていっちゃうよ?」
「「はーい!」」
「おい、どっちの適正が高いか賭けようぜ」
「いいぞ、負けた方がおやつ二週間譲りな?」
***
「それじゃ、一列に並んで!」
「はーい!」
「ハイン、よかったのか?順番譲って。早く検査してもらいたかったんじゃないのか?」
「そういうお前だって、後ろに来てるだろ!まあ…俺は兄ちゃんだからな~」
「80くらいで正常だって!」
「へえー緊張する!!」
***
「ねえ、何色だった?」
「私、灰色…」
「え、私もー!」
「やった!!俺の勝ち!!」
「ちげえよ!ほら、緑のとこ俺の方が濃いだろ?!」
「でも皆灰色じゃん」
「ええーつまんない」
「ハハ、まあ…灰色は健康の証だからね。皆健康でよかった…」
「あとは、ベックとハインだけか…」
「次の方」
「はい」
「…うん?」
「…おかしいですね。すみません。魔道具の故障みたいですので少々お待ちを…」
「…はい」
「はい、もう一度お願いします」
「…」
魔道具には、明るい白色だけが浮かんでいた。
「す、すみません!もう一度だけ…!」
「ベックの奴、長いな…」
ベックの入っている診療室には、看護師や他の医者たちが慌てて出たり入ったりしていた。
「…そんなバカな」
「魔力色、FFFFFF…!」
「…はい?」
「直ぐに連絡を…!」
「す、すみません!もう検査は終わりましたので退室していただいて構いません!」
「…はい」
「おい、ベック、やけに長かったけど何色だったんだ?」
「…」
「いいから見せてみろって!」
ハインは、ベックから結果通知書を取り上げた。
「…!何だこれ!」
「ハイン兄ちゃん!どうしたの?」
「私にも見せて!」
「?!ベック兄ちゃん、白色だって!!」
「本当?」
「ベック兄ちゃん、勇者様なの?!」
「み、皆、騒いじゃ駄目だよ~」
「よ、よかったじゃんか、ベック」
「…まだ実感がわかない」
「すみませんでした!次の方どうぞ…」
「はい!」
「もしかしたら俺も…!」
「…?!」
「…あり得ない」
「えっ、本当に?」
「来たか…?」
「も、もう一度お願いします!」
「は、はい!」
「もう一度…!」
「はい…!」
「まさか俺もFFFFFFか?!」
ハインは、期待を抱きそわそわしていた。
「…ハインくん、魔力排出の魔道具はつけていますか?」
「…いいえ、そんなことは…」
「…あり得ない」
「はい?」
「だって、あなたの魔力色…000000ですよ?!魔力を魔法に変換することが出来ない!!どうして生きているというんですか!!」
「…えっ?」




