第3話「武道館にて2」
「あ゛ぁ~ やっと終わったぁ」
剣道着を身に着けている姿からは想像もできないほどに気怠そうな声を上げたのは、Kだった。
その周囲には当然他の部員もいたが、Kはそんなこと気にするような奴でもなかった。
稽古中もKは常にぐだぐだしたような感じだったし、
竹刀を振ってこそいるが、そこにはなんの力も込められておらず、
例えKに『面』を打たれたとしても、打たれたことに気付かないほどであった。
そしてKがその様子を見せるたびに、俺やYから笑い声が上がるのだ。
稽古中でも構わずに、他の部員の相手をしているときでも構わずに。
なんと迷惑な奴らだろう。今になってこそしみじみ思う。
部長が漏らした「なら辞めろよ」という言葉は、的確にそのときの俺たちのことを捉えていたのだろう。
大抵の部活なら、やる気のない部員は幽霊部員を化して現れなくなるか、
もしくは辞めて帰宅部にでも腰を落ち着かせることになるのだろう。
それはある意味、本人たちだけではなく、結果的にその周りの人間にも良い結果をもたらすのだと思う。
いや、そうすることが良い結果になるというよりかは、
そうしないことが非常に悪い結果をもたらすのだと言ったほうが適切だろう。
その理由付けは、俺たち3人の実例だけで十分だと思う。
やる気はないのに居座り続け、毎日のように騒ぎ、言うことは聞かない。
部活への貢献度は、マイナスもいいところだろう。
そんな俺たちのボランティア迷惑活動は今日もいつも通り行われ、
部員たちが俺たちを見る目も、いつも通り実に鬱陶しそうなものになっていた。
しかし当然俺たちがそんなものに気を遣うわけもなく、
稽古の始まりのときとはまるで正反対に、3人共飛ぶように更衣室へと駆け込んで行く。
「さあ! これからが俺たちの1日の始まりだ!!」
毎日のように言われていた言葉である。
先ほどまであんなに気怠そうにしていたK。
そんな彼でさえ飛ぶように元気になっている理由も、この言葉が意味するところにあった。
ささっと着替えをすませたら、今度は全速力で出口へと走っていく。
途中すれ違った後輩が言った、嫌味に対する返しも欠かさない。
「あいつらなんで部活やってんだよ・・・・」
「うっせぇ!! お前嫌われてんだよ!!!!」
「あっはっはっはwwwwww」
その間僅か4秒ほど。
後輩が果たしてどんな反応をしたのか、その確認をすることもなく俺たちは走り去っていく。
返しで言った言葉も、大して考えて言ったものではなかった。
ただ言われたから言い返した。それだけの単純な行為であった。
それにこのときの俺たちは、とにかく急いでいたのだ。
目指すは我が家。愛しのPCの前へ。
「それじゃあ! "あっち"でまた会おう!!」
武道館を出て少し進んだところ、下校ルートの関係で俺は、KとYとは別れることになっていた。
だから分かれ道の片方に俺、もう片方にKとYが対する形で、こんな言葉を掛け合うのも、もはややり慣れたものになったいた。
『あっちでまた会おう。』
そう、俺たちはネトゲーマーだった。




