第2話「Kとの出会い」
俺は中学1年までは、いわゆる『いい子』だった。
やれと言われたことはちゃんとやったし、
やるなと言われたことはやらなかった。
授業だって真面目に受けていたし、成績だってまぁ良いほうだった。
元々人と話すのがあまり得意なほうじゃなかったから、
周りから見れば、言われたことには口を出さずに素直に従う
『いい子』なんて言葉がよく似合う奴だったのだろう。
だがそれも中学1年の秋をきっかけに変わった。
『 K 』と出会ったからだった。
Kはいつも自由な奴だった。
話を聞くところによると、どうやら小学校でも随分とハチャメチャやってきたようだった。
クラスは同じだったから、入学してから仲良くなる1年の秋まで
顔を合わせるような機会は何度もあった。
でも秋のそのときまで仲良くはならなかったのは、
さっきも言った通り、俺が人と話すのが苦手だったからだ。
基本自分から口を開こうとしないから、新しい出会いなんて滅多に来ることもなかったのだ。
だからKと仲良くなれたのは、ただの偶然だったとも言えるのかもしれない。
もしくは俺には元々、『不真面目』に振る舞う素質・・・・というと大げさな気もするが、
そういう生き方に憧れを抱くような内面があったのだろう。
Kと仲良くなるきっかけとなったのは、1年の秋に行われた文化祭だった。
「文化祭で仲良くなった」なんて、まるでどこぞのカップルの話をしているようでもあるが、
内容はちょっとそういうのとは違うものである。言っていなかったが、そもそもK、男だし。
確か最初にした会話の内容は、「最高にユニークな紙飛行機を作る方法」だったと思う。
文化祭の飾りつけのために用意された厚紙を勝手に拝借した俺たちは、
それを使って紙飛行機作成大会を開いたのだ。
結果優勝となったのは、俺が試行錯誤の末に作り出した最高傑作
『マグロ漁船3号』であった。
「飛ばすっていうかぶん投げればいいじゃん」などと言われて宙を舞ったマグロ漁船3号は、壁にぶつかって儚いその命を終わらせたりもした。
・・・まぁ、内容はどうでもいい。
厚紙を拝借するとき、もちろん俺は嫌だった。
今まで「別の目的のために用意された物を勝手に使う」なんて、周りに反する行為はしたことがなかった。
でも反論はしなかった。・・・というかできなかった。
なんたって人と話すの自体が苦手な俺が、『いい子』として生きている俺とはまるで反対な奴に、
「それはいけない」と注意ができるだろうか。
まぁ周りに目を向ければ、そういうのを注意できるやつくらい腐るほどいるだろう。
自分の中で、やっていい事とやってはいけない事の区別がつけられている
『真面目』な奴なら簡単に。
でも俺は違った。
俺は周りからすれば『真面目』に見えていたのかもしれない。
でも俺からすればそれは、
なんの音沙汰も起こさないように、周りの流れに逆らわず、ただ流されるがままに行動する。
ただそれだけのことをしていただけなのであった。
俺の中にはっきりとした意思なんてなかった。
あるのは、ただ周りに合わせておこうというぼんやりとした意識だけ。
だから俺には、周りのことなど目もくれず『不真面目』に生きるKの姿が、
どこか輝いて見えていたのかもしれない。
俺はこの日、
生まれて初めて教室ではしゃいだ。
生まれて初めて先生に叱られた。




