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黄金の約束  作者: ハイエント
第一章 黄金の屋敷

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第32話 高志の復活


 一階の客室が並ぶ廊下へ入る。


 高志の部屋へ向かいながら、何となく左右に並ぶ扉を見た。


 そういえば、朝に松田先輩とここを歩いたときは、あまり気にしていなかった。


 一本の廊下の左右に五部屋ずつ。


 全部で十部屋ある。


 右側は手前から一号室、二号室、三号室、四号室、五号室。


 反対側は、手前から十号室、九号室、八号室、七号室、六号室と並んでいる。


 高志は一号室。


 神谷先輩は二号室。


 松田先輩は七号室。


 大野先輩は、一番奥にある六号室だった。


「十部屋もあるんだな……」


 俺たちが使っているのは、そのうち四部屋だけだ。


 空いている部屋の方がずっと多い。


 これだけ大きな屋敷なんだから、別に不思議なことでもないか。


 俺はそれ以上気にせず、高志の部屋まで行って扉を叩いた。


「高志」


「おう」


 すぐに返事があった。


「入っていい?」


「いいぞ」


 扉を開ける。


「……あれ?」


 思わず声が出た。


 ベッドの上に座っていた高志は、朝とは比べものにならないくらい普通の顔をしていた。


「何だよ」


 高志が俺を見る。


「いや、お前……元気じゃん」


「だいぶな」


「……つまんないな」


「は?」


 高志が不満そうな顔をした。


「どういうことだよ」


「お前が苦しんでる顔を見て、ちょっと笑ってやろうと思ったんだけど」


「相変わらず性格悪いな、弘は」


「だって散々、若様若様ってからかってきただろ。このくらい仕返ししてもいいじゃん」


「若様なのは本当だろ」


 高志が笑う。


「本当かもしれないけど、お前それで笑ってただろ」


「笑ってないって」


「笑ってたよ。ちょっと馬鹿にしてたし」


「してないしてない」


「だから、その借りを返せるのは今しかないと思っただけ」


 俺がそう言うと、高志が少し笑った。


「お前、若様って呼ばれるの結構効いてたんだな」


「全然効いてない」


「いや、もうバレてるって」


「うるさいな」


 高志がにやっとする。


「若様」


「やめろ」


「ほら、効いてる」


「……何で俺、こんなとこ来ちまったんだろ」


 俺がぼやくと、高志がすぐに返した。


「お前が勝手に来たんだろ」


「そうだった」


 二人で少し笑う。


「冗談だよ。本当は心配して来たんだ。感謝しろ」


「今さら言われてもな」


 高志が苦笑する。


「それで、真面目な話。どうした?」


「薬」


「薬?」


 高志がベッド脇のテーブルを指さす。


 そこには水の入ったグラスと、小さな薬の袋が置かれていた。


「お前らがいなくなったあと、メイドさんが持ってきてくれたんだよ。二日酔いに効く薬だって」


「そんなのまで用意してあるのか」


「飲んでもう一回ちょっと寝たら、かなり楽になった」


「へえ……」


 俺が薬の袋を見る。


「今はもう全然大丈夫」


 そう言った直後、高志が腹をさすった。


「それより腹減った」


「お前、さっきお粥食って気持ち悪くなってただろ」


「あのときはな」


「回復早すぎない?」


「薬がすごかったんじゃね?」


「便利な屋敷だな、本当に」


 二人でまた笑う。


 朝の状態を考えれば、少なくとも昼の話し合いには普通に参加できそうだった。


「そういえば」


 高志が思い出したように聞いてくる。


「大野先輩どうなった?」


「まだ見つかってない」


「マジ?」


「ああ。松田先輩がまだ探してるんじゃないかな」


「どこ行ったんだろうな」


 高志が首を傾げる。


「神谷先輩は、絶対どっかで遊んでるだけだって言ってたけど」


「あの二人、大野先輩と付き合い長いんだろ?」


「そうみたい」


「だったら、まあ大丈夫なんじゃね?」


「俺もそう思うことにした」


 松田先輩が探しているし、神谷先輩もそこまで心配している様子ではなかった。


 だったら、俺たちまで慌てて探し回る必要はないだろう。


「で、お前は何してたの?」


 高志が今度は俺に聞いてきた。


「俺?」


「さっきまで」


「神谷先輩とビリヤード」


「いいな」


「何が?」


「俺もやりたい」


「嫌だよ」


「何でだよ」


「俺、もう結構やったから」


「わがままだな。付き合えよ」


「疲れた」


「薄情だな」


「そもそも俺、お前の様子見に来ただけだからな」


「もう大丈夫だって」


 高志はベッドから立ち上がった。


 確かに足元もしっかりしている。朝みたいな危なっかしさは、もうなかった。


「じゃあ、どっか行こうぜ」


「どっかって?」


「十二時まで暇なんだろ?」


「まあ」


 時計を見る。


 まだ昼までは時間がある。


「遊技室以外でな」


 俺が言うと、高志が不満そうな顔をした。


「何で?」


「さっきも言っただろ。俺が飽きたから」


「自分勝手だな」


「それはお前もだろ」


 二人で笑う。


「じゃあ……」


 少し考えて、朝の話を思い出した。


「外でも歩く?」


「外?」


「藤崎先輩が、朝ハイキングコース歩いたって言ってたじゃん」


「ああ」


「結構よかったって言ってたし」


 高志がすぐに乗ってきた。


「じゃあ行ってみる?」


「お前、本当に大丈夫?」


「大丈夫だって」


「途中で気持ち悪くなっても知らないぞ」


「そのときは戻る」


「ならいいけど」


 結局、俺たちは屋敷の外へ出てみることにした。



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