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【完結済み】異世界転生うさぎ  作者: Usabean
第九章(最終章) 終わらない約束
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<月世界の仲間たち>

そして翌日。


スターグラス商業シティの高級ホテル。

ラウンジの窓から、月世界の街並みが見える。


ドームに覆われた都市。

空中を行き交う乗り物。

遠くには、モノレールが光の軌跡を描いて走っている。


昨日までなら、ただ美しいと思っていた光景だった。


けれど今は違う。

ここが、ぼくの生きる場所なのだ。


そう思うと、不思議なほど胸が温かくなった。



「本当に、うまくいってよかったの」


向かいに座る教授が、ほっとしたように笑った。


「おじいちゃん」


隣に座っているミアが、少し照れたように笑う。


昨日、ぼくがエターナル・メモリアルパークで倒れたあと。

ミアは、ぼくにすべてを話してくれた。


彼女が、地球で一緒に暮らしていたうさぎだったこと。

寿命を迎えたあと、月世界へ還ってきたこと。


そして。

いつかぼくが、この世界へ来ることをずっと信じていたこと。


「初めて会ったときから、あなたの魂だって分かったの」


ミアは、テーブルの上の紅茶を見つめながら言った。


「あなたの魂も、私を覚えているんだって感じていたの」


「だから、あんなに懐かしい感じがしたのか」


「うん」


ミアは微笑んだ。


「私も懐かしくて、嬉しくて…たまらなかった」


ぼくは思わず笑ってしまった。


「でも、どうして最初から教えてくれなかったんだ?」


「教えられなかったの」


ミアは真剣な表情になった。


「この世界の理なの。前世の記憶は、自分自身で取り戻さなければならないの」


「誰かに教えられた記憶じゃ、意味がないってことか」


「うん。無理に思い出させると、魂が不安定になってしまうの」


だから。

ミアは、ただ待っていた。


直接答えを教えるのではなく。

ぼくが、自分自身の力で過去へ辿り着けるように。


「じゃあ、あの『お母さん』は?」


「この世界での、ちゃんと、あなたのお母さんよ」


ミアが笑った。


「あなたが人間だったことも、月世界に転生してきたことも知っているわ」


「…なるほど」


「あなたがあまりにも何も覚えてないから、途中から本気で心配してたわ」


「…それは、申し訳ない」


思わず苦笑する。

教授も、髭を撫でながら笑った。


「わしも、なかなか興味深い経験をさせてもらったわい」


「教授まで?」


「君が何者なのか、わしも完全には分からなかったからの」


その言葉に、少し驚いた。


つまり。

あのときの教授も、すべてを知っていたわけではない。


ミアから頼まれたこと。

そして、古い記録に残されていたこと。


それらを頼りに、ぼくを導いてくれたのだ。


「…ありがとうございます」


ぼくが頭を下げると、教授は照れたように髭を撫でた。


「礼なら、わしではなく孫娘に言うんじゃな」


「おじいちゃん…」


ミアが恥ずかしそうに俯く。

その様子がおかしくて、ぼくは笑った。


すると。


「ぐすっ……うぅ……」


突然、向かいから妙な声が聞こえた。


見ると、編集部の特殊班に所属する同僚、シオンがハンカチを握りしめて泣いていた。


「…え、シオン? どうした?」


「だってよぉ…!」


彼は鼻をすすった。


「お前、そんな壮大な話を背負ってたのかよ…!」


「ぼくだって昨日まで知らなかったんだけど」


「俺はお前のこと、記憶喪失で右も左も分からない新人だと思ってたんだぞ!」


「実際、そうだったよ」


「それが、まさか前世が人間で、宇宙船事故で死んで、女神に選ばれて、月世界に転生して、しかも大切な相手まで見つけるって…!」


「た、大切な相手…?」


ミアが顔を赤くする。

ぼくも一瞬、言葉に詰まった。


前世では、家族だった。


けれど今は。


この世界で、ぼくのそばにいてくれる大切な存在だ。


「まあ、ゆっくり…でいいんじゃない?」


ミアが小さく笑った。


「うん」


その一言だけで。

胸が温かくなった。


窓の外を見る。

黒い空。

その中に浮かぶ青い地球。


人間だった頃のぼくは、もういない。


けれど。


獣医師として学んだこと。

記者として培ったもの。

宇宙を旅した経験。


そして、うさぎとしてこの月世界で過ごしてきた時間。

それらはすべて、今のぼくを作っている。


女神が言った。


――地球との縁を繋ぐ使命。


それが何なのか。

今なら、少しだけ分かる気がする。


地球と月。

人間とうさぎ。

過去と現在。

命と命。


その間には、目には見えない縁がある。

ぼくは、その縁を言葉にして残す。


記録する。


伝える。


それが、記者としての自分に与えられた、新しい役目なのだ。


そして――。

もう一つ。


ぼくには、守りたいものがある。

隣にいる彼女。

前世から続いていた、小さな約束。


今度こそ。

この約束を、途中で終わらせない。

このストーリーのショート動画も作成しています。

https://youtube.com/shorts/kRZB49PqqaI?feature=share

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