表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻術師ヴァニーユのアリア  作者: RIM


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/53

38.新たな目標

 電線が作れるようになったことを雷造の魔術師へと報告すると、彼は温かな目で嬉しそうに頷き、認めてくれた。


 ひとまずこの課題もクリアと見ていいようだ。




 それからライラックはサーシャと同じように片手で電線を作り、もう片方の指先をその電線の近くに当て、線を伸ばしたのだ。


 サーシャもヴァニーユも、それに釘付けになる。




「この電線を柔らかく使い、こうしてもう片方の手に引っ張っていくことは出来そうですかな?」


「それが、まだ魔石に置いている手を放し切るまでに至っていなくて、難しいのだ」


「そうですか、ならば片手で良いです。マナを使ってこう――」




 そこまで言ってからライラックは追加の詠唱をしてから、その電線の出来た指先をすぅっと横に引き、優雅に円を作った。




「シャボン玉のように丸を作れますかな?」




 何がどうなってそうなったのだ? と、サーシャは眉間いっぱいに皺を寄せてその魔術を見つめる。


 こんなに間近で見ているのに、理解が出来なかったのだ。




「……これはどうやって作っているのだろうか? なぜここまで柔らかく形を保てておるのだ? 詠唱を加えたということはマナを使ったのだろうか」




 頭の上に疑問符がたくさん付いたサーシャは、その円形の魔術をじっと観察しつつ、ライラックに尋ねる。




「えぇ、そうです。マナで形を整え、維持しております」




 ライラックはそのまま円形になったものの形を変えると、蛇を作り出した。




「……蛇、だと?」


「えぇ、蛇です」




 雷造の魔術師本人による雷での造形物、それを初めて間近で見たサーシャは、頭に雷が落ちたような衝撃を受けて鳥肌を立てていた。


 初めてこんなにも間近で、しかも不意打ちでこの魔術を見せてもらうことが出来るなど、思ってもみなかったのである。


 サーシャは顔を真っ赤にさせてその魔術に魅入っていた。




「ヴァニーユ、ヴァニーユ!! 凄いぞ!!! 蛇だ!!!」


「えぇ、そうですね」


「こんなに小さくも作れるのだな……凄いぞ……」


「よかったですね、念願の師匠の魔術を見ることが出来て」




 喜びを抑えることもできず、サーシャはその小さな蛇をしばらくまじまじと見つめていた。


 子どもの頃に読んだ絵本から本物が飛び出してきたようで、サーシャは夢が叶ったかのように心が満たされていた。




「マナで形を整えていると言ったな……。オドでは出来ぬのか?」


「それはちと、難易度が高いですな」


「形状をイメージ通りに柔らかく変化させるには、マナの力を借りた方が整えやすいんですよ。ここまでの形状変化は大学の範囲内ではないでしょうか」


「なるほど、それ程難しい技術なのだな」




 サーシャがここで学ぶ為に残された時間は、そう多くない。


 どこまで雷造の魔術師の技術を受け取ることが出来るかは、時間との勝負なのである。




「ここからは、どれだけ使いたい魔術のイメージを具現化出来るかという話になってきます。サーシャ様には何か、具体的なイメージがありますかな?」


「使いたい魔術のイメージ、か」




 サーシャは少し考え、すぐに顔を上げると、ヴァニーユとライラックを見て真剣に答えた。




「鎖を作ることはできるようになるだろうか?」


「鎖、ですかな?」


「あぁ。いざという時に敵を縛り付ける、鎖だ」




 そうサーシャが口にすると、ライラックは顔をほころばせて二度頷いた。




「貴方様ならば、それもすぐ身に着けることが出来ましょう」




 ライラックは長めの詠唱の後、手を木々の間へと向けた。


 青色の光が凄まじい速さでいくつかの木を引っ掛け、そしてもう片方の手へと戻ってくる。


 青白い光を放った雷の鎖が、しっかりと木々を縛り付けていた。




「雷属性魔術には、あまり重みがありませぬ。ですから、魔力の濃さで重みと強度をつけるのです」


「これが……雷の鎖か」


「このイメージをお忘れなきよう。ヴァニーユも覚えたかい?」


「はい、幻術で再現するには十分です」


「では、この後の訓練もヴァニーユに任せようか」




 この日、サーシャに具体的な目標が出来た。


 ライラックの見せてくれたこの雷の鎖を、己の手で作り出せるようになることだ。




 湯がふつふつと沸くように、サーシャの心は熱で満たされていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ