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幻術師ヴァニーユのアリア  作者: RIM


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23.成長

 本日の特訓は、魔石を持ったまま杖で魔術を使ってみようとのことだった。




「ではサーシャ様、まずはそのまま得意な結界術を使ってみてください」


「結界術でいいのか?」


「以前の平面結界で大丈夫です」




 サーシャは言われた通り、自分の足元を中心とした半径三メートルに結界術を展開した。




「平面結界、展開」




 この結界は硬い結界ではなく、空気のように透き通っている。


 それ故、足元に展開が可能となっているのだ。


 そして属性魔術と組み合わせることによって、その結界の質が変化するという特殊な魔術式が組み込まれている。


 トラップに近い使い方や、他の魔術師との相性も良い結界術といえる。




 魔石の光を揺らがせすぎずに結界術の展開が完了したサーシャは、その感覚に驚きの表情を見せていた。




「どうですか?」


「ぬるっと結界が展開したぞ!? なんだこれは!!」




 「ぬるっと?」と、思わずヴァニーユは口からサーシャの言葉が零れ落ちていた。




「……肩の力を抜いたまま結界が展開出来たからではないでしょうか? 抑え込もうとしていた分の余計な力が、魔石の方に移ったんですよ」


「……」




 サーシャはそのまま魔石を見下ろすと、その光は踊るように揺れ動いていた。


 感動が可視化出来てしまうのが、ヴァニーユにもわかりやすく見えてしまう。


 魔石の光は大きく揺れていたが、結界術には揺れが見えず、安定して魔力を流し込めていた。




「そのまま結界の範囲を広げてみてください」


「……なんだと!?」




 ヴァニーユからの無茶振りに、サーシャの持っている魔石の光が大きく揺らいだ。


 それでもなんとか結界術は壊れずにいる。




「濃度を意識しつつ、魔力を結界に流し込む量を徐々に増やしてみてください。そうですね……半径十メートル程度で大丈夫です」


「十メートルもか!?」


「魔石が余剰分を引き受けてくれるので、暴発はしないと思います。頑張ってください」




 サーシャは「無茶振りにも程があるぞヴァニーユ!!」と心の中で叫びつつも、結界へと送るオドの濃度を上げようとした。


 しかし、込める濃度を上げようとするも、そんなに簡単にはいかなかった。


 どんなに込めようとしても、結界はほとんど変化しなかったのである。




「ヴァニーユ、全然上手くいかないぞ!」


「……恐らくですが、魔石の方に流れて行ってしまっていますね」


「なんだと……!?」




 結界から意識を外して魔石を見ると、それは強く輝きを放っていた。


 どうしてこちらの方に流れてしまっているのだ! と、サーシャは少し腹立たしく思う。


 イメージしようとしても、体がついてこられていない、うまくいかない。




「サーシャ様、一度結界を解除して大丈夫です」


「わかった!!」




 サーシャは結界を消すと、息を切らして地面に倒れ込むようにして転がった。


 魔石にずっと魔力を送り続けていたのも含め、今の訓練で体力は既に限界だったのだ。




 一度に両手から魔力を放出したことなど、サーシャはこれまで経験したことがなかった。


 それどころか、右手と左手で別々の魔力の流れをつくるなど、本当に人間の出来る技なのだろうか? と、そこから疑心暗鬼になってくる。


 呼吸を荒げて体を休めている間も、手の中にある魔石は仄かな光を放つままだった。




 サーシャの瞼は少しずつ重くなり、今にも意識を失いそうになる。


 その姿を見て、ヴァニーユは「お疲れ様です」と声をかけながら、サーシャの近くまで寄ると、彼の前に座って様子を見た。




「魔力の量はどうですか? 底を尽きましたか?」


「いや、まだある」


「すごいですね。普通の人ならとっくに意識を失っていてもおかしくないですよ」




 なんということをさせられてるんだと文句の一つも言いたくなるが、実際魔力の底よりも疲労が先に来てしまっているのが現状である。


 しかし、自分がどこまで魔術を使い続けられるのかを知らなかったサーシャにとって、この経験は宝でもあった。


 高等部の教師からは絶対に教わることの出来ないような経験であることは間違いない。




「先に疲労が来たのは、今日までの疲労が溜まっているからかもしれませんね。今日はもう魔石へ魔力を送らなくて結構ですよ。よく頑張ってくださいました」




 魔石の光がほろりと消えると共に、サーシャの眠気が本格的に強くなってくる。


 張っていた気が緩まったからだろうか。


 眠過ぎるあまり、サーシャは朦朧としてきた頭の中で、心の中のもやを呟いていた。




「ヴァニーユ、俺はちゃんと、成長できているのだろうか……」




 それはここ最近ずっと、サーシャが不安で仕方なかったことだった。


 その言葉を聞いたヴァニーユは、自然と口角が上がる。


 こんなにも彼は真剣に取り組んで来ているのに、不安があるのだろうか。




 彼の瞼が降り、暗闇の中に落ちて行く感覚の中、あたたかな声だけが返ってきた。




「もちろん、成長しています。大丈夫ですよ」




 胸元にふわりと暖かさが広がると共に、深く深くまで意識が落ちていった。



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