15.気のせい
それからヴァニーユはサーシャに索敵魔術を説明する為、幻術で円形の画面を見せた。
そこに、赤い点を四つ、ヴァニーユ達のいる位置に合わせて置けば、準備完了である。
「おぉ!! これも、幻術なのか……?」
「そうですね。幻術と索敵魔術が使える者なら、こうして他人へ見せて情報共有することも可能です」
そうヴァニーユは説明し、赤い点が四つ集まっている場所を指さした。
「これは、私たち四人の配置です。オドのある生物ならばこのように感知できます」
「オドのある生物ならば……というと、オドを持たぬ者はわからぬということか?」
「そうですね。基本的に魔術を使えない方々には、索敵魔術は反応しません。空間干渉魔術ですので、自分のオドから空間のマナを借り、そのマナでオドを持つ生物を探し出すという流れになります」
ヴァニーユがそう説明すると、サーシャは顎に手を当て考える仕草をした。
索敵魔術は基本的にはオドを持つ者しか感知しない。
逆に言えば、オドを持たぬ者を集めてしまえば、索敵魔術に引っかからずに接近することが可能である。
「生物……というと、竜などは入るのか?」
「はい。竜や精霊も含まれます。ただ、魔力が桁違いなので、人間との区別は可能です」
「魔力を持たぬ者らが奇襲をして来た場合、対策などあるだろうか?」
「奇襲ですか……?」
ヴァニーユもサーシャと同じように頭を悩ませ、それから空を見上げる。
「事前に敵の襲撃を知ることが出来れば、結界を張ることで侵入者の感知は出来るでしょう。しかし、完全に不意打ちとなると……難しいでしょうね」
「……そうか」
「どのような魔術にも、向き不向きや弱点はあります。それを魔術師同士の知恵や策略で補っていくことで、ある程度カバーは出来ることでしょう」
そうは言うものの、ヴァニーユは自分のその発言をした後、自分の発言に全く説得力がないと感じていた。
『しまった、自分が全く出来ていないことを偉そうに語ってしまった……』
そう罪悪感に襲われるヴァニーユ自身、他人の目から逃げるあまりに他の英傑と手を組んだり一緒に戦ったりなどの経験がないのである。
あったとしても、師匠と何度か一緒に戦った程度だろう。
発言に後ろめたさを感じて視線を逸らしたヴァニーユの目と、後ろで今の話を聴いていたライラックの目が合うと、彼は生ぬるい視線でこちらを見ていた。
責めはしないが、「己の胸に手を当ててよく考えよ」との幻聴が聴こえて来そうな眼差しであった。
「ヴァニーユ」
「え、はい。なんでしょう」
自分の行いを反省していたところにサーシャから声をかけられたヴァニーユは、ビクッと肩を上げて彼の言葉を聞く。
「わたしはまだまだ知らないことばかりなのだと、この短期間で思い知ったのだ。一人の強さだけでなく、団結して戦うことも大事だということなのだな」
あまりにも真っ直ぐに受け止めたサーシャに、ヴァニーユの胸は罪悪感で押しつぶされそうになっていた。
自分が出来てないことを、想像だけで簡単に言うものではないのだ。反省している。
「そ、そうですね……。私もがんばります……」
「ヴァニーユはもう頑張っているであろう。数々の功績を聞いてきたぞ。戦闘スタイルはそれぞれ違うのだ、私も私に合うスタイルをこれから探していくつもりでいく」
そう言った彼は、いつもの無邪気な笑顔と違い、柔らかく穏やかな笑みにほんの少し切なさを含んだような笑みをヴァニーユに返した。
サーシャのその笑みが、なぜだか彼女の心の端に引っかかる。
「さて、話を脱線させてすまなかった。索敵魔術の話の続きを聞かせてはもらえぬだろうか」
次の瞬間には彼もう、いつもの魔術を楽むような笑いを見せていたので、先程の表情はきっと彼女の気のせいだったのだろう。




