81ふたりより
水着を持っていない組でこの日はショッピングモールへと来ていた。
イヴ、千鶴、そして美里。
だが、美里はきてさっそく帰りたい気持ちに苛まれていた。
何故か。
それは美里に対し、残りの二人がオシャレすぎたからである。
Vネックのゆったりとした肩の見えるブラウス。
下はタイトなデニムというシンプルであるが、そのスタイルがいいせいでそれだけで十分すぎるほどに大人オシャレなイヴ。
手元には細めのブレスレットと耳元にピアスなんか光るせいで、余計に大人っぽく見えてしまう。
一方の千鶴。
ちょっぴりヴィンテージ感のあるレースの白いワンピース。
ワンピースに合わせてバッグも白いが、こちらはワンポイントでちょっぴり高級感のあるものだ。
服装に合わせたのか、いつもは結っているポニーテールをほどくとピンク色が白への差し色になっている。
「ふ、ふたりとも……ヵ、ヵわい……ぃ……ね」
「そうか? でも、ちーちゃんのこのワンピースもいいな。めっちゃ可愛い」
「ありがとう。イヴのブラウスもいいなー。肩出てるだけで印象違うね」
「はは……」
二人のやりとりを見ている美里のコーデ。
上!
しま〇らで適当にかったTシャツ(380円)とセール品コーナーにあったパーカー(580円)!!!!
下!!!!
下半身デブを隠すために買ったゆったりしたでっかいスカート!!!!
お値段780円!!!!!
である。
(ああああああああああ、やっぱ陰キャは外に出るべきじゃねぇんだよおおおおおおおおおお、か、帰りてぇええええええええ)
初めてみる二人の私服姿に、美里はもう滝のような汗を掻いている。
制服のときは気付かなかったが、私服だとここまで印象に差が出るものなのか。
ピンクと金髪は年相応、もしくはそれ以上のオシャレをしているのに対し、美里はオシャレカーストでも底辺のさらに底辺だと感じる。
一緒に並んで歩くのが恥ずかしくて、つい一歩下がって二人の後ろを歩いてしまう。
それだけでも目の前にオシャレの塊二つが歩いていると思うと、その足は自然と重くなってしまう。
「美里ー、店通り過ぎてるぞ」
「ぇ、ぁ、ご、ごめん……」
沈んだ気分が視線を床に落とすと、美里は一人店の前を通り過ぎようとしていた。
余計に気が滅入る。
イヴと千鶴はさっそく、『これかわいくない?』だとか『こっちのもかわいい』なんてやりとりをしている。
(全然可愛いと思えねええええええええええええええええ、ってか、あれ着る自分とか想像できねーよ!!!!)
「美里はどれにする?」
「ぇ、ぇっと……と、とりあえず……お肌があんまり……でない、のかな……はは……」
「せっかく水着着るんだから、肌は出るだろ」
「あ、でも、谷間が見えないのとか、Vラインが見えないやつはあるんじゃない?」
と千鶴。
(なんだよVラインとか!!! 変身でもすんのか? それともラインの上位互換か???)
「あ、これとかいんじゃね、下スカートだし、上もフリルで谷間隠せるよ」
勝手に水着をえらんで、勝手に美里にあてがうイヴ。
夏らしい爽やかな花柄、そして大きなフリルが可愛らしい。
しかし、美里はこんなもの着たことがないと赤い顔を下向かせるばかりだ。
「ちょっとこれ着て見たら?」
「ぇ、み、水着って試着……できるの?」
「たぶんできるんじゃね?」
「で、でも、そしたら……」
(更衣室で丸裸にならなきゃならねーだろうが!!!!!)
「店員さんに聞いてみるよ」
千鶴がさっそくレジに向かうと店員のおねーさんに声をかける。
試着は下は下着の上からならOKらしく、三人は試着室へと向かうと美里と水着を中へと放り込んだ。
「着たらみせろよー」
「ぁ、ぁぃ……」
シャっとカーテンが閉められて、更衣室に美里が一人。
大きな鏡の前に佇む美里はまるで老婆のように腰が曲がり、トマト色した顔を鏡に向けている。
(なんなんだよ、この羞恥プレイは!!!! くそくそくそくそ!!!! っていうか、なんで私の水着選びになってんだよ!!!!)
思いながら仕方なく服を脱ぐ。
脱がれていくしま〇らの服たちが、なんとも悲しく見えた。
「き、きがえたよ……」
「お、できたか」
「わー見たい見たい♪」
再びシャっとカーテンを開けると、そこには――水着姿だが、どこか不自然な美里の姿がある。
ギチィ――――。
「なッ!」
「え……」
イヴと千鶴の顔が驚きの表情へと変わる。
あの可愛かったフリルが――あの谷間隠しのための女の子らしいフリルが――。
真横に思い切り引っ張られると断末魔の悲鳴をあげている。
「は、はじゅか……ちぃ……」
そう、美里の恥ずかしい理由はそこにある。
何故夏でもおっきめのパーカーを着るのか。
何故制服の時はかならずシャツの上にかならずニットもしくはブレザーを羽織るのか。
何故――。
そう、美里の身体は――
美里のその上半身は――
美里のその女性である象徴は――
巨大すぎた。
ミチィ――……。
「ぁ、ぁにょ……」
「え、み、美里……お前そんなに乳でかかったっけ……?」
イヴはやっと口に出来たが、千鶴など口を押えたまま視線が胸にくぎ付けになっている。
「す、すこしだけ……」
「す、少しだけってお前乳なにカップだよ……」
「ぁ、ぁにょ……そにょ……ち、ちゃんとは……はかってなくて……」
「い、今つけてるブラは、なにカップなんだよ……」
いきなり始まる乳トークに美里の熱がぐんぐん急上昇していく。
「ぇ、ぇぃち……」
「H!?」
「ぁ、ぁんまりおっきな声で言わないで!!!」
確かに以前より胸が大きいなぁとは思っていたが、これほどまでとは思わなかった。
曝け出されたその数値は、イヴよりも、千鶴よりも、いつものメンバーの中で誰よりも大きい。
きっと綾香がこの場にいたなら、そのイニシャルを聞いただけで嫉妬死するであろうイニシャル。
「で、でも……水着可愛いな……似合ってるよ……」
イヴの顔が引きつる。
「ぁ、ぁり……がと……で、でもちょっと……」
「……」
「お、おっぱいが……き、きついかな……」
絶句した千鶴が両手を合わせて拝んでいる。
「と、とりあえじゅ……も、もう着替えていいかな……」
「お、おう……」
カーテンが閉められて、中からごそごそ音がする。
「ちーちゃん」
「なんでしょう……」
「やばいもん見ちまったな……」
「とても素晴らしいものでしたね……」
着替え終えると、顔を真っ赤にした美里が出てくる。
もうこれ以上の辱めはご勘弁と、今着たものよりも大きなサイズ(主にカップ)のものを選ぶと美里はさっさと水着を買ってしまう。
「ふ、ふたりは……み、水着なにに……するの?」
「えっと……あー」
「と、とりあえずてきとーに……」
「えぇ……」
◇ ◇ ◇
フードコートでお昼を食べていると、やたら二人の視線が刺さる気がしていた。
それも顔ではない。先ほど衝撃を受けた乳へである。
しかし、それも仕方がないことではあった。
その大きすぎる胸はテーブルに置かれると、ズシリと重たそうにしている。
「ぁ、ぁにょ……」
「え」
「なに?」
「ぁ、ぁの……あんまり……見られると……は、はじゅかしい……です……」
「あ、ごめん。つい、デカかったから」
「ごめんなさい、つい目がいってしまって」
「ぅぅ……」
「あのさ」
「ぁ、ぁい……」
「あれ、綾香にはカップ数絶対いうなよ……たぶん……」
「……?」
「死ぬから」
「ぇぇ……」
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