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依代と神殺しの剣  作者: ありんこ
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相手がいなけりゃ独り言

 一人称視点の使い方がまだよくわかっておりません。西尾維新作品あたりを参考にすればいいのかな?なんかアドバイスあったらお願いします。

 誠一さんに勧められて、私は挨拶をして自分の病室に戻った。廊下は行き止まりになっているがやっぱり窓がない。その時気づいた。

 私が目覚めた病室にはプレートがかかっていない。

 誠一さんの言った通り、医師が何人かやってきた。何人かってレベルじゃない。こりゃもう大名行列だ。

 がちゃがちゃ機械を大量につけられる。おい、刺すなよ。消毒はどうしたよ。っていうか針が太すぎるだろうがよ。ふてえ野郎だ。などと文句を垂れてみたが完全無視だ。

 ぷしゅううううん、と駆動音がしてマシンが動き出す。動いているのだろう。私は機械に背を向けさせられているから、だろう、だ。

 何でも鑑定するテレビ番組の値段を表示するアレのSEに似てるなあ。

「適合率、1、10……」次は百。その次は千だな。予想は裏切られた。「20、30……40……50!50です!」

 パチものだった。わーいただで手に入れたけど辛い。

「すばらしい……出て30パーセントだぞ。確か弓削壮二は12だったな?」

 なんだ百分率か。だったら千とか万とか出たら怖いな。

 別々に呼ばれて、だから私は弓削の方はあずかり知らないが、多分同じような目に会ったのだろうと予想する。可哀想にな。

 それにしてもロボットアニメで聞きそうなセリフのオンパレードだ。SFじみていますな、最近の医学って奴ァ。おたくらが何を言ってるのか、私ァまったくわかりませんぜ。

「驚きですね。身体能力が高いほど適合するのでしょうか?」

「そうかもしれん。衣川依が男一人自転車の後ろに乗せてここまで来たと聞いたときはわが耳を疑ったがこいつならありうるな」

「言うに事欠いてこいつ呼ばわりか!ハゲ!ヅラ!ずれてて額が肌色メタルなのよ!」

 ここまで私はぶつぶつ言っていたのに初めて反応が得られた。医師が何人かぶふぉッと吹き出す。気づいていた人がいたのだろう。

 鑑定結果はなかなか良かったらしいけど、私の心証は限りなく悪いぞ。貴様ら、顔と名前は覚えたからな。

 今日から朝起きて重たい家具の角に足の小指をぶつけない日がないと思え。あとペットを飼ってるやつはひたすら無視されろ。電車内で本を読んだらページの角で指を切れ。

 葬式の席で唐突に思い出し笑いで吹き出せ。お前が触ったパチンコはどんなに出る台でも出るな。

 とにかく毎日小さな嫌なことが溢れ出せ!

 やがて医師たちは私から針を抜いて機械を回収し、出て行った。おう挨拶の一つもないんかい。ええ。よし、おいしい料理を食べていたら銀歯のかぶせがポロリするか舌を思いきり噛むがいい。

 私は後一両日ここに缶詰めになるらしい。業腹だがヅラのづれた院長先生が茹蛸みたいな色になっていたので従ってやる。隣には誠一さんもいることだし、話し相手くらいにはなってくれるだろう。

 あーあ、そう思っていた時代もございましたよ、ええ。認めますよ。誠一さんに頼りすぎでした。

 なんと、病室に外から鍵をつけられてしまったのだ。トイレは病室内にあるとはいえ……思い切ったことをする。そんなことより風呂入りたい。そうだ、蛇口はあるからタオルを濡らして体をふいておこう。

 さむーい。お湯出したよな?私今お湯出したよな?何一気に冷めてくれてるの。寒い!何が地球温暖化だ。何が暖冬だ。めちゃくちゃ寒いわい。

 でも始めたからにはやりきるんだぜ。やり切ったぜ。さっさと服を着るんだぜ。下着は臭くなりそうだが連続で着るしかない。だってノーパンは嫌じゃん。致し方ないが気になるものはなる。皮膚病になりそう。蕁麻疹が出そう。

 ヌーディストはいいなあ。洗濯しなくていいもんな。あ、でも寒いのか。それはやだなあ。関係のないことを考えながら特にすることもないのでスクワットを行う。汗が出る前に終了!休憩!こんなことに意味はあるのか?ない!

 気分が疲れたから寝る。起こすな。起こしたら蹴るぞ。むしろ蹴らせろ。そんなことを思いながら眠りに落ちる。夢は見なかった。ノンレム睡眠というやつだ。

 起きたらよだれが口元についていた。かぴかぴして不快なので洗い落とす。私に体液系の性癖はない。

 今、何時だろう。窓がないのはもちろんのこと、時計もないのだ。何にもない部屋で時間が分からないというのはある意味拷問かもしれない。

 真っ白な部屋でもあることだし、悪名高い無刺激拷問とか言うものの下位互換と言っても間違いあるまい。

 と、そんなことをくるくる考えていたら鍵の開く音がした。白衣の看護婦がパンの載ったお盆を手に入ってくる。

 声をかけたがお盆を置いてさっさと出て行ってしまわれた。動きが早すぎて顔もよく見ていない。人間の目はとりあえず顔に集中するって言ったの誰?

 搭載されていたのはアンパンと牛乳だった。張り込みをやれと言っているのだろうか。怪しいやつでもいたのだろうか。おまわりさんこいつです?それは巡査か。私は刑事じゃないのになあ。

 もふもふ。やわらかな小麦と卵とイーストと多分水で作られた網目を崩していく。唇で、そのあとは歯で。ぷちぷちと気泡がつぶれる音がする。

 臭気とでもいうべきものが鼻の中へ通常とは逆に抜けて、などしつこくねちっこく自分のしていることを認識し続ける。思考を無駄遣いして得られる、ああなんて至高の暇つぶし。あとアンパンうめえ。

 アンパンと牛乳を消費した後、私は張り込みなど再開しなかった。軽く運動して、もう一度ベッドに戻る。寝ていればいくらか早く時が過ぎるだろう。そう思ってのことだった。

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