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異世界のパチンコ店は一味違うようです  作者: ふぃず
大陸出店編
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第二十三話 利権をめぐる戦い【後編】

 ハデス開店時間から数分――差枚バトルが始まって直ぐ不敵に笑いながら言い放った魔王の言葉に、バトルスペースにいる全員、そして観客の誰もが注目していた。

 精霊に対抗する霊の力――なんだそれは、もしや悪霊なのか――。

 注目が魔王に集まる――が、何も起こらない。

 傍にいるアクドや清龍まで何も変化が無い事に不安そうな表情へと変わっていく。


「どうした魔王! 何も起こらないじゃないか! ハッタリだけでは勝たないぜ」


 言い放っただけで何も起こらない現状にしびれをきらせた勇者は言うが、魔王は表情を変えず自分の台に座りはじめる。


「なぁに、今にわかるさ――気付いた時には遅いがな」


 魔王が打ち始めたのを見て両陣営全員自分の台に着き回しはじめる。

 両陣営の上にはでかでかと差枚カウンターが表示され、お互いの陣営の差枚が今いくつなのか見てわかるようになっていた。

 今回時間制の差枚バトルだが正午過ぎに一時間の休憩時間が取られている。自由休憩ではなく完全に一度お互いに打つのを辞めて食事や作戦会議に使う時間だ。ハデスの開店は九時なので開始四時間で一度休憩が挟まれることになる。


 エイリア陣営では普通に台を打ち始めた魔王を警戒していた。以前番組に出演してまで勇者を煽っていた魔王がはったりだけで再戦になるとは思えないからである。


「なぁ……サム、ケンお前らは魔力を視覚でとらえられるか?」


「いや、俺らはそもそも魔法を使えないからな……そもそも魔力を見れるっていうのを今初めて聞いたぐらいだ」


 急に問いかけてきた勇者の言葉に台を打つ手を止め、サムが戸惑いながら返す。


「――それがどうかしたのか?」


 逆に勇者に問いかけると勇者の表情が曇る。


「あぁ――それがな、俺は魔力を視覚でとらえることが出来るんだが……差枚バトルが始まる前と今の魔王、魔力が半分ほど減っているんだよ」


 勇者が言った言葉にサムとケンが顔を見合わせる。

 減った魔力――言い放った言葉――既に魔王がこちらに仕掛けてきているかもしれない。

 だが、どうやって――。シスクの陣営を見ると魔王がこちらを見て笑っている。それがまたエイリアの陣営を困惑させていた。


 そんな中、精霊の加護のせいで運が跳ね上がったケンが差枚バトル初のボーナスを引き当てる。

 まだ目押しが苦手なケンは慎重に『777』と、ひとリールずつ揃えていく。

『77……7』と揃えた瞬間にそれは起こった、一番右のリールがいきなり再始動して『77BAR』に変化したのだ。


「……は?」


 打っていたケンと台を見ていたサムと勇者は三人して意味が解らないといった声を上げる。前回の勇者と魔王の戦いであったリールの格上現象、それと反対の事が目の前で起こったのだ。

 審判の方を見るとリオン王子、アルゼリオ店長ともども反則を取っていない。


 こうして差枚バトルが始まったのだ。




 シスク陣営では台に現れた効果を見て魔王が満足そうに頷いていた。

 魔王が保有する絶大的な魔力――その半分を捧げた価値はあったとほくそ笑む。

 始まって直ぐにこちらを勇者が鑑識眼で覗いていたことからこちらが何かを仕掛けたのは既にばれているだろうがそれでもかまわない。なぜならどの様な効果が現れるかは魔王もわかってないのだから――。


「えーと、魔王様? あれは何をしたのでしょう?」


 魔王がやったと思われるボーナスの格下げ現象。戸惑うエイリア陣営を見て清龍も戸惑っていた。元Aランク冒険者であり魔法を使う気配なら感知できる清龍でも魔王が魔法を使った様には見えなかったのだ。そもそも今回魔法の許可はされているが、台に直接作用する魔法は許可されていない。使用すればアルゼリオ店長がこちらの陣営を退場させに来るはずである。


「クックック、清龍よ我は何もしていないぞ。強いて言うなら契約をしたぐらいだな」


「契約?」


「そうだ、詳しい事は決めなかったが勇者たちを邪魔するようにと言ってある。ここまでの効果が出るとは嬉しい誤算だったがな」


 そう言いつつ魔王は何もないはずの宙に目を向ける。そこには鑑識眼で見れば僅かだが魔力の揺らぎが見える。今回魔王が契約したのはハデスに遊びに来てオーナーに雇われている幽霊――レイコであった。

 幽霊であるがゆえに魔力で体を維持しているレイコだが、オーナーと契約してからというものハデスで遊んでばかりいた。本来なら街へ出て人を驚かし、怖がらせ、その隙に魔力を奪って体の維持に使うのだ。

 今回魔王がレイコと契約した条件は魔力を半分差し出す代わりに勇者達エイリア側のメンバーの邪魔をすることである。

 オーナーとの契約で日々ハデスの筐体に憑りついていろいろ試しているレイコにとっては魔王との契約は些細な事である。それで体の維持に必要な魔力が数十年分は手に入るのだ。

 本来なら『777』で入るはずのボーナスが次々と『77BAR』になっていく。エイリア側に不利な状況で差枚バトルは進んでいくのだった。


 リールが再始動するという現象が起きてから四時間が経過し、各陣営は昼の休憩時間に入っている。

 エイリア側のメンバーの表情は暗い。

 勇者だけは精霊の力で対抗し、レイコの力を抑え込んでいた。

 だが、自分の台だけで周りに気を配れていない。しかも、精霊の力を維持するだけで疲れきっていた。

 ケンの打っている『魔導少女サヤ』は連続で『77BAR』が入ると救済措置が入る台ではあるが、筐体の仕組みを理解しているレイコはそんなことはさせないとばかりに要所要所で『777』を混ぜてくるのだ。

 サムの『ハリケーン』は『77BAR』のオンパレードだ。直ぐ当たりが来ているはずなのにメダルが減っていく現象はどこぞのピエロに馬鹿にされている様であった。

 こうなったら勇者以外打たないという選択肢もあるのだが、そうするとチーム戦な意味が無くなってしまうとのことで打ってない時間をカウントし、その分差枚にマイナスのペナルティをつけるという事を王子に言われてしまいそれもできない。


「だが……」


 重々しくも勇者は口を開く、絶望的な状況ではあったが勇者は諦めていない。二つの要素によりまだ希望はあるのだ。


 一つ目は唯一対抗している勇者の台『ダンジョンマスター』が好調な事。まだ四時間だが始まってから直ぐ当たりを引き伸び続けている勇者の台は六千枚を叩きだしていた。

 二つ目は魔王達シスクの陣営の引きが不調な事。精霊の力で運を底上げした勇者達と違い持ち前の運と技術だけで勝負しているシスクはステータスの面で不利であった。唯一清龍だけは『ハリケーン』と目押しスキルがあるので安定してメダルを伸ばしている。アクドが選んだ『最終戦争(アルマゲドン)』は天井直前であった。魔王の『インペリアルブレイカー』は出ては飲まれを繰り返していた。


「まだ終わってはいない……!!」


 そう言いつつ勇者は両陣営の差枚カウンターに目を向ける。そこに表示されていた数字はエイリア陣営『+700枚』、シスク陣営『+2000枚』と表示されていた。思ったよりも差がついてない枚数である。




 ――同刻、この差枚カウンターを見ていた魔王は一つため息をついた。勇者と同じことを考えていたのだ。思ったよりも差がついていない。

 清龍は目押しスキルを酷使しすぎたのか目薬を使い、目を閉じて休ませている。

 アクドは申し訳なさそうに謝っていた。アクドが波の荒い台を選んだ結果がこの差枚に結びついているのは会場の誰もが知るところだった。

 そして魔王だが、良さそうな設定だとは感じているがいまいち乗り切れていない。強運吸収等を使えば直ぐにでも連荘が始まりそうだが、今回は使ったら反則に取られてしまう。

 どうしたものか……と考えていた魔王だったが、開始直前に王子が言った言葉を思い出す。

(魔法やスキルは台に直接作用しない、対戦相手に危険を与えないもののみ許可する……か)

 なら……魔王はニヤリと口元を歪める。

 魔力の半分は契約に使ったが、簡単な魔法なら半日は使い続けられる……少し攻撃を仕掛けるとしよう。


 そして差枚バトルは後半戦を迎える。




 後半戦最初の二時間は何事もなく差枚バトルは進んだ。エイリア側では勇者はいまだ出続けており、サムとケンは徐々に枚数が飲まれている程度で済んでいる。

 一方シスク側では清龍が疲れもあってか出玉が失速しはじめた。アクドはせっかく天井まで持って行ったが直ぐに当たりが終わり、数字が降ってくるのを見つめる作業に戻っている。魔王は少し出始めたが各陣営の差枚は徐々に縮まっていた。


 ――そして魔王が動く。


 変化はうっすらと出始めた、エイリア陣営に霧が立ち込めはじめたのだ。

 時間が経つにつれ霧は少しずつ濃くなっていく。

 今回魔王が使用した魔法は本来ならダンジョンで人を迷わせる為に使われる魔法『絡み付く(タングルミスト)』だ。

 一時間もしないうちに霧がエイリア側を覆いつくし視界を利かなくさせる。


「なんだこの霧は……魔王の仕業か!!汚いぞ、正々堂々と勝負しろ!!」


 目押しスキルが必須な台を打っていたサムは打つのを中断しており、声を荒げながら霧を振り払おうとスキルや魔法を試している。

 風の魔法を使い、霧を吹き飛ばそうとするが初級の魔法では一瞬だけ吹き飛ばせても直ぐに霧が視界を覆い尽くしてしまう。


「サムが厳しいか……なら上級風魔法で……」


 ケンが打てないのを見た勇者は上級の風魔法を使おうとする……が、精霊の力を解除して魔法を放とうとすると何者かがすかさず筐体に介入してこようとする。

 今は勇者の台が出続けているので差枚が開いていないがここで介入を受けたら終わってしまうだろう。


「サム……すまん。俺がお前の分まで出すから我慢してくれ……」


 勇者はそう苦々しく言葉を出すことが精一杯だった。


もう一人のメンバーであるケンは筐体に張り付くように顔を近づけ必死に打ち続けてはいるのだが……。


「サヤちゃん……!!サヤちゃんがこんなに近くに!!」


 ある意味末期な様であった。




 魔王はエイリア陣営の様子を見てほくそ笑む。

 勇者しか魔法を破れる者はいないが、今回は魔法を破ると同時にレイコが介入するであろう。勇者がどう行動するにしても封じられたと同じことだ。

 対するシスク陣営だが、魔王は徐々に出始め連荘しているし、清龍も一時期失速したがアクドが治癒魔法を使うことにより回復し、出玉を伸ばしている。

 アクドも二回目の天井から爆発的に出玉を伸ばし始めていた。


「決まったな」


 そう魔王が口にするとアクドも笑顔で頷く。


「今回は良いけど、次からはこんな手段使う場に呼ばないでくれよ。一応プロなんだからな……」


 清龍だけは少し疲れきったような、それでいてエイリア陣営を憐れむような顔をしていた。


 そしてハデスの閉店時間と共に王子から終了の声が掛かる。

 結果はエイリア陣営『+1500枚』、シスク陣営『+9000枚』と大差が開いた戦いであった。

 ちなみに勇者は一人で12000枚というメダルを獲得していた。


 こうして炭鉱の利権はシスクへと移り、シスクの街の中心には魔王像が奉られることになる。


 そして一勝一敗となった勇者と魔王の争いはまだ続くのであった。


かなり空いてしまいました、申し訳ありません。

更新できる環境になったのでまた少しずつ投稿していこうと思います。

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