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異世界のパチンコ店は一味違うようです  作者: ふぃず
大陸出店編
22/40

第二十二話 利権をめぐる戦い【中編】

出張のため遅くなりました。後編もなるべく早く書き上げたいと思います。

 二つの町が広告を出して数日後、西の町『エイリア』の町役場には多くの人が訪れていた。

 そんな人々をエイリアの町長は集まった人の顔ぶれを二階から観察していた。

 集まった中には屈強な戦士、叡智を極めた魔法使い、駆け出しの冒険者、一般の町民と様々な人が入り乱れている。

 だが、今回エイリアが望んでいるのは圧倒的な力でも、魔物を打ち倒せる魔法でもない。

 欲しいのは回胴王(スロットマスター)を名乗れるだけの回胴式魔導遊技機(スロット)の知識がある者――。

 求めるは回胴王(スロットマスター)を名乗れるだけの運の持ち主――。

 (この中にそんな者がいるのだろうか……)

 不安になる気持ちを抑え、時間を見るとそろそろ締め切りの時間が迫っていた。もうかなりの人数が集まっている、そろそろもう新しい人はこないだろう。

 早めに締め切るか……と、そう思った時――木の軋む音と共に扉が開かれ、女神に祝福されたかのように後光がさした青年が一人入ってきたのだった。




 対する東の町『シスク』の町役場は静まり返っていた。職員以外一人も人がいないのだ。

 数日前から町の周りは魔力の霧で覆われていて人が寄り付かなくなっている。

 さらにはシスクの代表を決めるという今日に限り、町の中まで濃い霧で覆われ魔物の遠吠えだけが聞こえていた。一般の人が外を出歩ける状況とは程遠く、冒険者でさえ怯えて外に出ようとはしない。死の町と言っても過言ではないほどの雰囲気が漂っている。

 そんな中、シスクの町役場には漆黒の衣を纏った男が一人椅子に腰を掛けている。その後ろには従者の様に肌の青白く犬歯の尖った男が控えている。彼ら以外には人が来ることは無いだろう。

 募集をかけた時間を過ぎたころ座っていた男が立ち、静かに告げた。


「決まりの様だな――シスクの町長よ、貴様は本当に運が良い。この我がエイリアを勇者もろとも葬ってやろう」


 迸る闇の魔力にシスクの町長は怯えながらも男に返答する。


「こ、今回王都から出た勝負はチーム戦。一人足りないようですが……」


 町長の言葉に『ふむ……』と腕を組み少し考えると男――魔王ロゴスは控えていたアクドに声をかける。


「アクド、奴を――岡崎清龍を連れてこい」


「もういますよ?」


 アクドはそう返答すると足元に転がしてある棺桶を指さす。

 魔王が棺桶を開けるとそこにはガチガチに縛られ身動きのできなくなった清龍が閉じ込められていた。

 連れてこいとは言ったが拉致して来いとは言ってないのだが――そう思いながら魔力で編まれた縄をほどくと、ぐったりした清龍が体を起こして言う。


「もう何にでも付き合うから毎回拉致するのはやめてくれ……」


 いろいろあったがこれで三人――シスクの町代表が決定したのだった。




 対するエイリアでは応接室で町長と勇者が向かい合って困っていた。

 あの人数の中から勇者を代表に決めたのは良いが、残りの二人を決めなくてはならない。


「勇者様、誰かお仲間や知り合いはいないですかね……」


 その言葉に対し勇者はビクッと体を硬直させ視線を彷徨わせる。

 勇者クロス、精霊に祝福された魔を打ち滅ぼす者――だが、現在仲間はゼロ……。

 故郷から酒場で人を雇い、一緒に旅をしてここまで来たのだがその人たちはもういない。

 辿り着いた王都エルランジで勇者がハデスに通い詰めるようになってからというもの呆れて皆帰ってしまったのだ。

 それからというもの宿屋とハデスを行き来する生活しか送ってない勇者にとって仲間と呼べる者は皆無、知り合いでさえハデスの常連と店員ぐらいしかいなかった。

 一人で魔王を倒す孤高の勇者と言えば恰好がつくが、実態はボッチの引きこもりである。

 なので、町長から仲間や知り合いといった単語が出たとき過剰に反応してしまったのだ。

 町長と二人どうするか……と悩んでいると突然扉が大きな音と共に開かれる。


「はなしは聞かせてもらった!! 勇者、俺ら二人を入れてくれないか?」


 扉から入ってきたのは勇者も良く知るハデスの常連、ケンとサム。

 町長はこの二人は大丈夫なのかと勇者に尋ねるが、逆に勇者はこの二人となら行けるかもしれないと返答した。


「それじゃあケンとサム、よろしくな」


「こちらこそよろしく!」


 こうしてお互いの町の代表が決定し、決着の日を迎える――。




 決戦当日、魔導遊技機専門店『ハデス』店内――差枚バトル専用スペースお互いの陣営が向かい合い睨みあっている。主に視線を絡めているのは二人の町長と勇者と魔王だが……。

 そんな中少しの間ぼやきながら呆けていた清龍が口を開く。


「っていうか、お前らなんで勇者と一緒にエイリアの代表になってるんだよ!」


 その言葉に問いかけられた二人の中の一人、サムは笑いながら返した。


「龍と一度でいいから差枚バトルをやってみたくてこっちについたのさ」


 その言葉を聞いて清龍は掌で目を覆う。サムは堅実に回胴式魔導遊技機(スロット)で勝つ確率と目押しのデジタル派だ。運や他のスキルを使う奴よりよっぽどやりにくいと清龍は感じていた。

 また、清龍と仲良くなってからは余計に目押しスキルの向上に貪欲だったり遊技機のこともかなり詳しくなっている。下手したら勇者よりも手ごわいかもしれない……。


 お互いの陣営に他愛ない言葉や野次の飛ばしあい等が飛び交うがリオン王子が登場したことにより場が静まった。


「これより、エイリア代表対シスク代表の差枚バトルをはじめる!! この戦いに勝利した側には二つの町中間にある炭鉱――その中にある魔石の鉱脈を掘る事が王から許可される。互いの町代表は今回使用する遊技機を決めてくれ」


 エイリア陣営の三機種は『ダンジョンマスター』、『魔導少女サヤ』、『ハリケーン』。

 前者二つは徐々にメダルが出るタイプ、後者はサムが選んだ目押しスキル必須な特殊機、目押しが出来れば確実に出玉を伸ばせるタイプである。


 対するシスク陣営三機種は『インペリアルブレイカー』、『最終戦争(アルマゲドン)』、『ハリケーン』だ。

 魔王は勇者に対抗するようにリベンジする台を選んだが、アクドが選んだのは天国か地獄しかない波の荒い台。清龍はサムと同じく得意なハリケーンを選んだ。


 お互いの陣営の打つ機種が決まると、ハデスの店員により三台の遊技機がバトルスペースに並べられた。中身の設定は全てランダムになっていて誰もわからない。一からExどれが入っている。


 現在の時刻はハデスが開店する数分前、リオン王子はお互いの陣営が用意できたのを見て頷くと口を開く。


「勝負の時間はハデス開店から閉店とする! 差枚バトルのスペースは特殊な結界を貼り外部のものは入れない様にした。なお、この対決は王国の番組で放送するものとする。 正々堂々と戦うように」


 そう言って王子は魔王の方を見る。魔王は以前客の運を吸うスキルを使用している為先に釘を刺したのだ。


「今回はハデスのルールから少し外させてもらう。魔法やスキルは台に直接作用しない、対戦相手に危険を与えないもののみ許可する! 両陣営準備はいいか?」


 王子の言葉に頷く両陣営、ハデスの開店時間が迫っていた。


「それでは、差枚バトル開始!!」


 ハデスの開店と同時に始まった差枚バトル――ハデス店内では遊技機を打つ人よりも多くの人が休憩コーナーにあつまっていた。リアルタイムでこの戦いを見るためである。

 始まった瞬間勇者が魔王に声をかける。


「今回は強運吸収(ラックアブソーブ)を使わせない。そして、今回も俺が勝たせてもらう!」


 勇者がそう言うと同時にエイリア陣営を強力な加護が包んでいく。


「精霊よ!! 俺たちに魔王を倒すための運を!!」


 エイリア陣営に以前より増した加護が付加され、ステータスが上がっていく。

 だが、それを見て魔王はほくそ笑む。


「また同じことを――同じ事が二度通じると思わぬことだな」


 大胆不敵な魔王の両脇では、強力な加護が相手陣営にかかり戸惑う清龍と、魔王ならなにか秘策があるだろうと考え狼狽えず傍に控えているアクドがいる。


「では、こちらも見せてやろう同じ霊の力を――な」


 ハデスで今、決戦が始まる――。

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