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異世界のパチンコ店は一味違うようです  作者: ふぃず
大陸出店編
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第二十一話 利権をめぐる戦い【前編】

 魔導遊技機専門店『ハデス』、そのフロア内に奇妙な空間が出来ていた。

 『バトルスペース』と名付けられたその場所は、フロアの中でも一段高い場所に作られており回胴式魔導遊技機(スロット)の筐体が数台設置されている。

 この場所は回胴式魔導遊技機(スロット)番組で何度もやっている『差枚バトル』専用スペースだ。番組が放送されてからというもの、自分たちもやりたいという意見が視聴者から寄せられそれを実現させたスペースである。

 予約が必要だが営業時間内なら誰でも使うことが出来る。

 もちろん筐体の設定はランダムで銀貨を使いメダルを借りて遊技する。

 ただ、筐体だけは好きな筐体の設置を頼むことが出来る。それもあり当日だと営業時間中は筐体を動かせない為に予約が必須なのだ。

 そんな新しく設置されたバトルスペースでは今日も差枚バトルが繰り広げられようとしていた。

 今日の差枚バトルはチーム戦、バトルスペースには六台の筐体が設置されている。

 そして壇上に向かい合う三人一組の二つのグループ。

 一方には『西の町エイリア代表』と書かれた旗が掲げられ、もう一方の旗には『東の町シスク代表』と書かれている。

 両陣営の間では闘気がぶつかっているがその性質は反対だ。

 エイリア側から放たれる闘気は聖属性、先頭に立つは勇者クロスである。シスク側を睨みつけ差枚バトルが始まるのを今か今かと待ち望んでいる。その姿は『今度も返り討ちにしてやる』と言わんばかりだ。

 もう片方の陣営、シスク側から放たれるのは闇属性の闘気――。その先頭に立つは南大陸を平定する魔王ロゴス。見た目以外は魔王とは思えないロゴスは回胴式魔導遊技機(スロット)をやっている常連達と仲が良く最近では回胴式魔導遊技機(スロット)番組にゲスト出演していた。

 ゲスト出演した回は非常に評判が良く、『勇者との再戦が近い』という話が王都エルランジの庶民の間では噂になっており注目の話題であった。

 そして今日――再戦が実現する。


「いったいどうしてこんな事に……」


 魔王の後ろでため息と共にそんな言葉が紡がれる。言葉を放ったのは岡崎清龍だ。魔王城に拉致されてからというもの何故か魔王と仲良くなり、勇者と戦うから力を貸してほしいと言われ連れて来られたのだ。

 清龍の横では吸血鬼のアクドが控えている。黙っていれば魔王の側近として様になっている、喋りだすと残念なのがこの側近の特徴だ。

 アクドから視線を外し、相手の陣営を見ると勇者の後ろに立っているのはサムとケン。清龍と仲の良いカジノ区画の警備兵二人組であった。二人は清龍に向けて軽く手をあげる。『よぅ!』と軽く挨拶してそうな感じだ。

 それを見て清龍はもう一度ため息をつき同じ言葉を自分の中で繰り返す。

(いったいどうしてこんな事に……)

 事態は数日前に遡る――。




 王都エルランジ南西に位置する町『エイリア』、南東に位置する町『シスク』、この二つの町はここ数年間王都南にある炭鉱の利権を争っていた。

 昔は二つの町で協力して炭鉱を掘っていたが、二つの町の丁度真ん中に魔石の鉱脈が発見されてからはお互いに権利を主張。新しく就任した町長同士が仲の悪い事もあり関係が悪化、小競り合いが毎日続いている。

 このままだと小競り合いが大規模な争いへ――町同士の戦争にまで発展しそうな勢いであった。

 戦争にまで発展すれば規模が同等であるお互いの町が滅ぶ可能性が高く、それを避けるため二つの町の町長は城へ行き、王に決着を委ねることにしたのだ。

 謁見の間――二つの町の町長が王の前に跪き王の判断を待っていた。

 王はこの問題に対し、非常に悩んでいた。どちらか一方を王が選べば選ばれなかった方の町は王への不信を抱くだろう。かといってお互いの町で協力して掘れと言ってもまた争いが始まるだろう。そしてこのまま戦争をさせるとお互いの町が滅ぶ可能性もある。

 考え込む王、だがその思案は後ろで控えていた息子の言葉に寄ってかき消される。


「お話は聞かせていただきました。こちらでは一方を選ぶことは出来ませんし、二つの町で協力しろと言っても一度争いが始まってしまいましたし今更無理でしょう」


 リオン王子の言葉に二人の町長は何とも言えない表情をしながら小さく『はい……』と答える。


「では、最後まで戦いで決着させるのはどうでしょう。と、言っても戦争をしろっていうわけではないですよ。平和的に解決できる戦いというものが王都にはあるのです」


 その言葉を聞いた町長たちは顔をあげ、藁にもすがる思いでその方法が王子の口から出るのを待つ。


「勇者と魔王の戦いでさえ平和的に収めた戦い――。カジノ区画にある魔導遊技機専門店『ハデス』。方法は――そう、魔導遊技機による差枚バトルだ!」


 その言葉を聞いた町長たちは困惑した。争いが平和的に収まるならそれは良い。リオン王子が言うのだから本当のことなんだろう、勇者と魔王の戦いがカジノ区画に出来た店の中であったのは町長たちも知っていた。

 だが――町長たちは魔導遊技機なんて触ったことが無いのだ。

 もちろん町の若者の間では流行っているし、暇を持て余した老人も王都に旅行に行った時遊んでいる。町長たちも一度やってみたいとは思っていたが炭鉱のこともあり忙しくいまだに手を出していなかったのだ。


「王子――。その方法なら平和的に解決できるかもしれませんがワシらは魔導遊技機を触ったことすらないのですが……」


 その言葉に硬直した王子は少し思案する。町長をサポートする人でもつけるか、もしくは代理で違う人に打たせるか――。少しの間の後リオン王子は口を開く。


「では三対三のチーム戦にしよう。そして町長の代打ちも認めよう。いかに詳しい者を雇えるかもその町の立派な強さである! 王都でも募集をかけることを許可しよう」


 それなら――と町長たちは頷く。


「勝手に口を挟んで決めてしまいましたが父上もこれでよろしいでしょうか?」


「お前に任せるとしようリオン――」


 王の許可も得たことでこの戦いが承認される。

 不謹慎だがリオン王子は楽しみにしていた、ハデスでの差枚バトルはリオン王子の一番好きな回胴式魔導遊技機(スロット)番組である。今回はそれを見届け人という形で特等席で見れるのだ。お互いの陣営はどの様な人を連れてくるのかも楽しみである。

(さて、これから忙しくなるな。ハデスへも許可を取らねば――)

 こうして二つの町の参加者集めが始まるのだった。




 数日後――王都エルランジの城下町、そのいたるところに三種類の広告が貼られていた。

 一つは城下町にある広報屋から貼られた広告だ。

『西の町『エイリア』と東の町『シスク』長年に渡る争いについに決着か――!? リオン王子が発案した魔導遊技機専門店『ハデス』バトルスペースにての炭鉱の利権を巡る差枚バトル!! 三対三のチーム戦、参加者希望者は各町の町長まで』

 と書かれている。

 残りの二つは各町が出した広告だ。

『求む!! 我こそは回胴王(スロットマスター)と名乗る猛者!! エイリアの町を救う救世主!! 勝利報酬、参加報酬、その他条件等はエイリア町役場まで』

『来たれ!! エイリアを打ち滅ぼす強者!! シスクでは種族を問わず強き者を欲している!! 参加条件、報酬等はシスク町役場まで』

 お互い気合の入った力強い言葉が並べられていた。


 そしてエイリアの広告前で止まった若い青年が一人――。


「町を救う救世主――か。どっちが正義も悪も無いんだろうがそういう募集の掛け方嫌いじゃないぜ」


 広告を手に取った若い青年、勇者クロスはエイリア町役場に向かうのだった。


 そしてそれを見てもう片方の広告に手を伸ばす男――。


「種族を問わず募集、敵を打ち滅ぼす強者――か。面白い。勇者がエイリアにつくというのなら我はシスクにつこう」


 魔王ロゴスが参戦した瞬間であった。

 勇者と魔王、二人の戦いが魔導遊技機専門店『ハデス』で再度巻き起こる――。

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