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翌朝、エレナとサリーが泊まった宿に、ゾフィーからの使者が訪れた。使者は二人組の男女で、彼らの態度はエレナとサリーを歓迎しているとは言い難かった。


使者の男は無表情で事務的に言った。「ゾフィー王女様がお二人をお待ちです。時間がありませんので、急いでこちらに着替えてください。エレナ様には鎧と変装用マフラーを、サリー様には従者用衣装を用意しております」


エレナとサリーは昨夜からの疲れがまだ残る身体を懸命に動かしながら、手早く身支度を済ませた。使者の女はその間、口を開くことなく、遠巻きに二人の準備を傍観した。


宿を出たエレナとサリーは、先導する使者たちの後ろをついて歩いた。通りの両側には、朝の活気に満ちた店や市場が広がっていたが、彼らの素っ気ない態度に、これからの交渉の場が不安になってきた。


朝日が強く照りつける中、エレナは心配そうな表情を浮かべた。


「ちょっと……冷たい感じよね」とエレナは小声で、半笑いのような微妙な表情でサリーにだけ聞こえるように話しかけた。エレナの額には小さな汗が滴り落ち、緊張感が伝わってきた。


サリーは顔を上げて、エレナの表情につられるようにして、苦笑いをした。彼女の目にも不安が宿っていた。


「そうですね……。もしかしたら、ゾフィー様はすでにバナームの方針を変えることを従者たちに伝えているのかもしれません。そして彼らは、その元凶が我々だと解釈して……」


「まあ……はっきり言ってそれは否定できないわね。いちおう私たちはゾフィーを助けるために来てはいるんだけど……これから危ない橋を渡ることになるし、大丈夫かしら」とエレナは少し顔を曇らせた。


ベガ王国の城の外観は、大国の歴史を感じさせた。城門をくぐると、その壮麗さにエレナとサリーは息をのんだ。城の内部は高い天井が迫力を醸し出し、壁には荘厳な歴史を物語る絵画が飾られている。広間や廊下では王家の役人たちが忙しなく動き回っており、今回の交渉の重要性が伺えた。エレナとサリーは、城の案内係に連れて行かれながらゾフィーの待つ部屋へと向かった。


中庭に面した廊下を歩いている途中、エレナは前方に、見覚えのある男を見つけた。彼はこちらに向かって歩いており、エレナは逃げ場がないことに気づいた。急にエレナの胸に緊張が生まれた。


エレナは後方を歩いていたサリーを振り返りながら、小声で指示を出した。


「あの黒服の男は、チャールズ王子の側近、ポポよ。サリー、私の隣に来て、なるべく私を見えないようにして」


サリーはこくこくとうなずくと、ポポの動きを見ながら、自然にエレナがポポの死角となるよう身体を運んだ。エレナは変装用のマフラーがきちんと顔に巻かれているか確認した。


ポポがだんだんと近づいてきた。


エレナは心臓が飛び出そうな勢いで脈打つのを感じながら、彼と目が合わないように顔をそらした。ここで正体がバレるわけにはいかない。ぎゅっと握った手のひらに汗が滲んだ。


ポポは通りかかりながら、エレナたちの姿を一瞥した。


しかし、彼は特に立ち止まることなく通り過ぎていった。エレナは一度深呼吸して、安堵の表情を浮かべた。サリーも一緒にため息をついた。


「なんとか気づかれずに済んだわ。これからも慎重に行動しなきゃね」とエレナはサリーにささやくと、そのまま案内係に連れられ、ようやくゾフィーの待つ部屋に着いた。

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