第十三章 目指すべきモノ 6
「さっさと先を急ぐぞ!!」
葛西が早川達の方に向かって大声で叫んだ。戦闘で気持ちが高ぶったのか、いつにも増して忙しなく前進し始めた。
早川達も慌ててそれに続く・・・。歩きながら早川は友香に話しかけた。
「この星に来た当初は、まさかタケルさんが裏切り者だなんて思っても見なかったし、とにかく地球とは遠く離れたこの星で俺達が本当に移住計画の為の調査が出来るのかと言う事だけが不安だったんだよな・・・。」
「そうね。私達の生まれた時代には到底想像も出来なかった異星への移住。そもそも地球外生命体の存在自体否定する人も少なくは無かったし、私だって広い宇宙だから、どこかには存在するとしても、私自身が地球を飛び出してその存在を目の当たりにするとは思っても見なかったわ。」
友香は早川とは違い、元々FTSプロジェクトに携わっていた訳では無い。ごく普通の女子大生だったのだ。すると真由が、
「私もそうよ。病気が回復して、無理矢理このプロジェクトに参加させて貰ったし、極秘プロジェクトだったからお兄ちゃんから一度だってプロジェクトの内容を聞かされた事無かったもの。」
友香以上に突然の参加だった真由に取っては、尚更驚きの連続だったに違いない。
「真由ちゃんには選択肢が無かったもんね。お気の毒だわ・・・。」
「そんな事無いわ。お兄ちゃんと二人あの時代で平穏に暮らす事だって出来たんだもの。私がそう言ったのならお兄ちゃんは、必ずそうしてくれたはずだしね。」
それを聞いていた安藤は照れ臭そうに頭を掻きむしりながら、
「そうだな。たった一人の妹であり肉親だからな。そう考えると俺達兄妹だけなんだよな。早川や友香ちゃんには肉親はすでに居ねぇんだし、なんだか申し訳ねぇな・・・。」
「そんな事はありませんよ!それに、俺達は自らの意思で契約書にサインした訳だし、覚悟の上ですよ。」
そうは言った早川だったが内心は今でも家族との別れは心苦しかった。それに早川にとっては、その別れから体感上一ヶ月も経っていないのだから尚更だった。
「私も家族との別れという点ではかなり悩んだわ。理屈では地球すべての人類、生物の為という大義名分があったとしても、やはり自分達の人生ですもの。果たして家族と永遠の別れをしてまでプロジェクトに参加すべきなのか・・・私じゃなくても他の誰かが・・・という思いがあった事は否定出来ないわ。」
友香もずっと葛藤していたんだと早川は実感した。誰だって突然今生きている世界を捨てるなんて決断を簡単には出来ないだろう。
百年先、二百年先なんて普通に生活を送っていても知り得ぬ世界。再び自分達の生まれ育った時代へ戻れるのであればともかく、二度と過去へは戻れない。
その時代から姿を消すという事は、ある意味死んだのと同じなのである。




