第十三章 目指すべきモノ 3
ペースを上げる葛西たちに遅れを取る事なく進み続ける早川達だったが、ここに来て少し疲れが見え始めた。
「あいつら化け物か。全力疾走に近いんじゃねぇか?」
安藤がそう漏らすと、早川も、
「ホントですね・・・。いくら薬の効果があるからと言っても限度がありますし、逆にここまであまり疲労を感じなかった事に少し不安さえ感じます。」
「だよな。実は体はボロボロなんじゃねぇかと思っちまう。麻酔みたいなもので感覚だけ麻痺させてるんじゃねぇかってな・・・。」
すると、佐々木が横から、
「それは大丈夫ですわ。この手の薬、正確には薬とはちょっと違うんですけど、こいつはさっきも葛西さんが説明してたように、本来身につく筋力なんかを増幅及び時間を短縮しとるんですわ。せやから、この星での運動がそのまま無駄無く、短時間で備わったっちゅう事ですな。ようやく疲れが見え始めたんは、自分の能力以上に疲労し始めたっちゅう事ですわ。」
「たしかに、ここへ来てからは、休みなく歩き続けたし、体力も増幅されててもおかしくは無いわよね。」
友香も納得しながら答えた。
「それはわかるんだが、それでもペースが早過ぎるぞ。こんなペースじゃ、薬を飲む前に逆戻りしちまうじゃねぇか。」
「お兄ちゃん文句多過ぎだよ!皆、それでも頑張ってるじゃないの!」
「いや、それはそうだけど・・・。」
真由の一言に言葉を濁す安藤。と、その時だった。すでに少し距離の離れた場所を歩く葛西と林が歩みを止めた。すぐ後ろを歩いていたウォーレンも同じく止まる。
「何かあったんでしょうか?」
すぐ後ろにいた順平が声をあげる。
「俺達のボヤキが聞こえたんで、小休止でもするんじゃねぇか?」
しかし、安藤の期待とは裏腹に背後から大声が聞こえてきた。
「皆さん!生命体の反応が前方に複数感じられます!我々は前方に打って出ますので、皆さんは最悪、分散して退避出来るよう備えて下さい!佐々木さんは応戦に参加願います!」
「そう言う事なんで、俺は前方に向かいますわ。今聞いた通りもし俺達で食い止められんかった時は出来る限り四方に散らばって逃げて下さい。」
先に寺田と北川が、葛西たちの元へ駆け寄り、佐々木もそれだけ言い残すと前方の陣に加わった。
「四方に散らばって逃げろと言われても、どっちに逃げたらいいのかわからない・・・。それに、あの人達を置いて逃げるなんて無理だ。」
「そんな事を言った所でおまえさん達はあやつらが太刀打ち出来ん相手に勝てるとでも言うのか?」
サジの言う事はもっともだった。さらにサジが続けた。
「しかし、まだ相手がノレッセと決まった訳でもあるまい。それに、あやつらがやられると決まった訳でもない。今は相手が何者なのかを見極め、それに備えるのが先決じゃ。」
「そうですよね。ノレッセと決まった訳じゃない。それにさっきも葛西さん達あっという間に倒したみたいだし、佐々木さんやウォーレンもいるんだ。」
「きっと大丈夫よ。ただ、私も陸と同じよ。あの人たちを置いて逃げる事は出来ないわ。だから覚悟は決めないとね!」
「友香・・・有難う。」
「友香ちゃんだけじゃねぇぜ!俺だって役には立たねぇけど、奴らがやられて逃げ出すほど腐っちゃいねぇよ。心配すんな!」
「安藤さん・・・」
「何か見えます!1,2,3・・・10・・・いや、もっといる!人の形・・・ノレッセの可能性が高そうです!」
前方を注意深く見ていた順平が叫んだ。
「10人以上!?そんなにいるのか・・・」
「おまえさん達がどうしても逃げるのが嫌と言うんじゃったら、行くがええ。残念ながらワシにはお前さん達を救ってやれるだけの力を持ち合わせておらん。お前さん達が万が一やられた時がワシにとっても最期となるじゃろう。」
「サジさん・・・せめてサジさんだけでも逃げてください!」
早川がそう言うと、
「ふん。ワシも一度は救われた命じゃ。地球人には感謝しておる。それはホルキンス人全員同じ気持ちじゃ。さっさと行かんか!そうならんように頼んだぞ!」
「わ、わかりました!」
早川達も、出来る限り葛西たちの近くまで近づいた。それに気づいた北川が戻れというジェスチャーを取る。しかし、早川達はそれを無視して前進した。それを見て北川は諦めたのか、葛西の方に向かって何かを叫んだ。葛西も何かを言ったようだったが、早川達には聞き取れなかった。
やがて、前方にはっきりとその姿が見える距離まで何者かが接近した。その風貌から、明らかにノレッセだとわかった。




