第十二章 メルビス地底11
「ここは先ほどの分かれ道じゃな。」
サジが呟いた。方向的に考えて違う道を選んだのだが、どうやら葛西たちはこちらの方からやってきたようだった。
「さっきも言ったが、本来こっち側からすぐには地上に出られねぇ。その先がどうなっているのかも俺たちにはわからねぇ。ただちょっと風穴を開けさせてもらったんで無理矢理地上に出られるってわけだ。」
「なんと、穴を開けたというのか!」
驚いたようにも、怒ったようにも取れる口調でサジが声を上げた。
「なんだ?まずかったのか?後でちゃんと修復しておくから、それで勘弁してくれ。今は緊急時、固い事は言いっこ無しだ!」
「そうではない。見た所、ここいらの岩盤も簡単に穴を開けられるような鉱石ではあるまい。それを短時間の間に人が通れるほどの大きさの穴を開けたという事に驚いたんじゃ。と、同時にこれまで地底は固い岩盤に覆われて安全じゃと思っていたが、今後はその考えは捨てて、新たな防衛策を考える必要があると実感させられたわい。」
「そういうことか。たしかに地球では考えられん固さの岩だったが、ダイヤモンドでもそうだがある一点に力を加えればいとも簡単に崩れ去る。その一点を計測する装置を持ち込んでいたので、それほど苦労しなかったさ。ここを曲がれば、すぐに地上に出られる。とにかく急ぐんだ。」
葛西に続いて、分疑点を反対方向に進む。全員がそちら側の道に進み終えた時、最後尾にいる寺田が叫んだ。
「指揮官!ノレッセと思われる部隊が迫ってます!」
先頭にいた葛西とリンが急いで後方に回り込む。
「ちっ!間に合わなかったか!どのくらいの人数だ?」
「5人、いや、6人です。」
「なんだ、思ったより少ねぇじゃねぇか!」
寺田は取り出した端末を見ながら人数を確認しているようだった。それを見て安藤が早川に、
「おい、あんな小さな端末で生命反応でも感知できるっていうのか?」
「みたいですね・・・。驚きました。」
「そんな事より、戦闘になるわよ!油断しないで!」
友香と真由は麻酔銃を取り出して身構えた。すでにウォーレンは葛西たちの方へ移動して身構えていた。
「心配するな。6人ごとき俺一人でも十分だ。あんたたちは先に進んで地上に上がれ!この先すぐに簡易の梯子がある。そこから地上に出られる!」
「ここは言う通りにしといた方が良さそうですわ。俺たちは先に地上に出て待ってましょか。」
佐々木がそう言って、歩き出す。
「でも・・・大丈夫なんですか?」
「彼らは戦闘のプロ。任せて問題ないと思いますわ。それに、もし彼らがやられるほど相手が強かったとしたら、どっちにしても俺たちだけじゃどうしようもないんやし、それやったら少しでも早く地上に上がる方がええと思いまへんか?」
「佐々木さんの言う通りよ。私たちじゃ足手まといになるだけかもしれないわ。ここは葛西さん達に任せて、先を急いだ方がいいみたいだわ。」
「佐々木君はさすがだな。ただ、ウォーレンだけはいう事を聞かねぇって面構えだな。仕方ねぇ、ウォーレンは俺たちの援護を頼む。ここは五人で食い止める!残った者は出来るだけ急いで地上に上がるんだ!俺たちもさっさと片付けて合流するから問題ねぇ!」
それだけ言うと葛西たち五人はノレッセが居ると思われる方向へ駈け出した。
「行きましょう!」
友香の一言に、残った者たちは先を急いだ。5分も歩くと前方に簡易とは言ってもしっかりとした梯子がかけられていた。
「結構・・・っていうか、めちゃくちゃ高ぇじゃねぇか!これ登るだけでも相当体力が必要なんじゃねぇのか?教授たちもここから地上に上がったのか。」
「文句ばかり言ってないで、早く登ってよ!」
真由が急かすと、安藤が登り始めた。梯子自体はしっかりした素材で出来ているようで複数人同時に登っても問題なさそうだった。
「怖ぇ!下は見ない方が良さそうだな。救いは梯子自体がしっかりしていて揺れれねぇ事くらいか・・・」
先頭を登る安藤がブツブツと独り言のように呟く。それは恐怖心を誤魔化すかのようだった。
「葛西さん達大丈夫かな?」
梯子を登りながら、すぐ下にいる友香に早川は訪ねた。
「ここまで音は聞こえてこないわね。とにかく無事を祈るしかないわ。」
結局全員が地上に上がるまで30分近くかかった。地上に出ると、サジは周囲を見回しながら、
「なるほど、ここに出るのか。ここはトゥールカ台地の南西。正面に見えるのはエビカの森じゃ。あの森はそれほど広くはない。そこを抜けると岩山がある。そこはちょうどお前さん達の仲間の兵士が越えてきた山じゃ。」
と、周辺の地形などを説明してくれた。
「で、俺たちはここで待っていればいいのか?」
安藤が誰と言う訳でもなく問いかけた。するとその問いには順平が答えた。
「多分、ここで待っていれば大丈夫だと思いますよ。下手に動いてしまうと、また逸れてしまうかもしれませんからね。」
「しかし、葛西とかいう男は口では大きなこと言ってるが、本当に大丈夫なんだろうな?今頃やられちまって、そこからノレッセの連中が上がってきたらどうすんだ?」
と、穴の方を指さした。
「おいおい、誰がやられるって?」
すると。その穴から葛西が顔を覗かせた。
「うわっ!脅かすなよ!」
「言っただろ!6人程度は俺一人で十分だって。」
「あら、そう?たしか私に二回も助けられたんじゃなかった?」
「あれは、おまえにも手柄をとわざと助ける状況を作り出してやったんだ!そんな上官の心遣いにも気づかねぇとはまだまだだな。」
「どうかしら?まあいいわ。とにかくこっちは片付いたわ。とにかく移動手段は歩く以外に無いわ。急ぐわよ。」
葛西たち四人とウォーレンも見た所負傷している様子は無く元気そうだった。そして、休む事もなく再び洞窟と同じ陣形で歩き始めた。




