第十二章 メルビス地底 10
今の所、葛西たちは早川たちが歩く位置から見える位置を歩いていた。と、突然前の方を歩く葛西が電話のような危機を取り出して耳に当て、何かを離し始めた。
「・・・。そうか、わかった。よろしく頼む。」
話を終えると、足を止め振り返ると、早川達に向かって話し始めた。
「今、後続部隊がこの星に辿り着いたと連絡が入った。地球からの防衛軍は各チーム8人で構成され、順平君と共にやってきたチームを含めると6チームが派遣されてくる予定だったんだが、今着いた第二部隊からの報告だと、残りの部隊と連絡が取れなくなったという事だ。原因は調査中だが、ノレッセとかいう連中の後続部隊と接触し、撃墜された恐れが強い・・・。どうやらノレッセという集団を甘く見過ぎていたみてぇだな。」
葛西の表情から、悔しさが見て取れた。早川にはかける声さえ見当たらなかったが、ウォーレンが葛西に向かって問いかけた。
「その情報がたしかなら、ノレッセはまだこの星に後続部隊を送り続けているという事になるが・・・」
「ああ。その通りだ。しかしさっきも言ったように、近隣の星にも協力は要請している。それにあんたの星からの援軍も向かっているんだろ?」
「そのはずだが、残念ながらアポリスと連絡がつかない以上、今どうなっているのかはわからない。すでにこの星に降り立ったノレッセの連中だけでも手を焼いているというのに、これは厄介な事になりそうだ。」
珍しくウォーレンが弱気な発言をする。すると葛西は、
「ふん、たとえ後続部隊が何人来ようと、俺の部隊だけで殲滅させてやるから安心しろ!最初から援軍なんかをあてにしちゃいねぇし。」
その発言を聞いた林は、
「しかし、第三部隊は今四人しかいないんだよ?それも、お荷物を背負ってどう対処するんだい?」
「おまえら三人でこいつらを護衛すればいい事だ。俺一人で100人くらいなら相手してやるよ!」
「100人どころか、現実には4~5人を相手に同時に相手することだって難しいことくらい知ってるでしょ?強がるのもいいけど、ここはしっかり作戦を練らないと彼らを守る以前に私たちが全滅してしまうわよ。」
今度は後ろから寺田が、
「私もそう思います。指揮官、ここは作戦を練るべきかと・・・」
今にも怒り出しそうな葛西だったが、大きく深呼吸して冷静さを取り戻すと、
「お前たちがそこまで言うのなら仕方ねぇ。しかし、まずは地上へ抜ける事が先決。それまではなんとしても持ち堪えるんだ!そういう事だ。あんたたちもある程度は覚悟しておいてくれ。見た所、そこのウォーレンという男、そして、あの佐々木って男以外は、対して役に立ちそうもねぇがな。」
「佐々木さん?」
思わず、早川と友香は顔を見合わせた。これまで何度か戦闘になった事はあったが、これまで佐々木はそれほど戦闘にも参加していなかったし、言い方は悪いが早川自身も佐々木を戦力と考えた事は無かった。
「何言いますねん。俺は争い事は苦手ですねん。変な期待されても困りますわ。」
頭をかきながら佐々木がいつもの調子で言うと、葛西は、
「どんな事情があって身分を隠しているのかは知らんが、俺の目は誤魔化されねぇぜ。少なくとも、ここにいる連中の中では一番戦闘慣れしているようだし、かなり腕が立つだろう。まあ、この先何事も無く地球へ戻れたら問題は無いだろうが、それはどうやら無理のようだし、ここにいる連中が知らねぇんならそろそろ白状しといた方が今後のためにもいいんじゃねぇか?」
佐々木は、肩を震わせている。早川は一瞬佐々木が怒りに震えているのかと思ったが、小刻みに震える肩が大きくなるにつれ、笑い声が聞こえてきた。
「はっはっはっはっは!さすがですな!その通りや。俺はこのFTS計画には途中から参加したんやけど、護衛を兼ねての参加や。当時の政府がFTS計画は今後危険を伴う可能性があるから、戦力になる人材を参加させなあかんっちゅう事になって、選ばれたんが、俺とレイニーや。レイニーは初めからある程度武術なんかを習得してるっちゅうてもうたけど、まあ俺はいざという時までは、わざわざ身分を明かす必要もない思うて、今まで黙ってたんや。」
「そ、そうなんですか!?」
早川は驚きを隠せなかった。てっきり植物や生物を研究するために参加した、いわば研究要員だと思い込んでいたからだ。友香や安藤も戸惑いの表情を見せた。
「まあ、生物学を専攻しててそっちの調査も兼ねてるんはたしかやで。特に危険が無ければこの星の生物なんかをレポートして地球に帰還するのが目的でもあったんや。さすがに何度かやばそうな時はあったけど、なんとかウォーレンはんや他の人たちが頑張ってくれたお蔭で今まで出番はおまへんでしたけどな。」
「まあ、いい。そういう訳でウォーレンと佐々木の両名も戦力とみなしてこれからは行動するから頼んだぞ!地上まではそれほど遠くない。出来れば地上までは戦闘は避けたい所だが・・・」
早川達はまだ戸惑っていたが、葛西はそれだけ言うと、再び歩き始めた。
「意外だったわね。まさか佐々木さんが国からの護衛的役割を担って参加していたなんて。」
友香が耳元でささやく。
「俺だって、普段おちゃらけてる佐々木さんが戦闘のプロだったなんて信じられないよ。それにレイニーとは元から知り合いだったって事みたいだし・・・。」
「まあ、悪い人じゃないのはわかっているし、むしろ心強くて有難いわ。私も足を引っ張らないように頑張らなくちゃ!」
その後、葛西の先導で早川たちは歩き続けた。




